森と湖に囲まれたスイスで最も美しい街と称される湖畔のリゾート都市ルツェルンでは、毎夏国際的な音楽祭が開催されます。その音楽祭の歴史は1938年まで遡り、今年は創始80年になりますが、今では連日、世界トップクラスのオーケストラの競演が楽しめる最も人気の高い音楽祭に発展しました。

ルツェルン音楽祭創始80年

画像: 1938年8月25日に催された演奏会を記した記念碑

1938年8月25日に催された演奏会を記した記念碑

戦前ナチスの台頭によりオーストリアが併合されて緊迫度が増し、バイロイト音楽祭やザルツブルク音楽祭を追われたトスカニーニやヴァルターなどの指揮者、スイス・ロマンド管弦楽団やトーンハレ管弦楽団などから優秀な演奏家がルツェルンに集い、新たな音楽祭「ルツェルン国際音楽週間」を創始することになりました。その始まりが、1938年8月25日、ルツェルン郊外トリプシェンにあるワーグナーの別荘前で催された、トスカニーニ指揮のガラ・コンサートでした。

翌年はイエズス教会でヴェルディの「レクイエム」など、トスカニーニが6回演奏会を指揮し、ピアノのホロヴィッツやチェロのカザルスなどの巨匠たちも駆けつけ、「ルツェルン国際音楽週間」は大成功を収めて幕を閉じました。その直後に第2次世界大戦が勃発し、終戦を迎えるまで幾度も中断を余儀なくされましたが、1943年に「スイス祝祭管弦楽団」が設立され、1993年まで音楽祭の中心的な役割を担いました。

カラヤン生誕110年

1944年にはフルトヴェングラーが初めてスイス祝祭管弦楽団を指揮、1948年にはカラヤンとクーベリックが音楽祭デビューを果たし、その後常連指揮者として関わることになります。特にカラヤンは、1955年以降、ザルツブルク音楽祭やベルリン・フィル同様、亡くなったフルトヴェングラーの後継者としてルツェルンでも大きな役割を担いました。そのカラヤンも今年は生誕110年になります。

画像: ピラトゥス山とカルチャーコングレスセンター

ピラトゥス山とカルチャーコングレスセンター

その後音楽祭では世界中から著名な指揮者や演奏家が次々に音楽祭デビューを飾り、客演するオーケストラも定着していきます。例えば1957年からウィーン・フィル、1958年からベルリン・フィル、1965年からバイエルン放送交響楽団、1967年からクリーブランド管弦楽団、1968年からニューヨーク・フィル、1969年からチェコ・フィル、1972年からコンセルトヘボウ管弦楽団、1979年からシュターツカペレ・ドレスデン等々が客演しています。

画像: カルチャーコングレスセンターの大ホール © Lucerne Festival

カルチャーコングレスセンターの大ホール © Lucerne Festival

1988年には、50年前に回帰し、アバド指揮のヨーロッパ室内管弦楽団が、音楽祭の原点となったトスカニーニ指揮のガラ・コンサートで演奏された曲を再演、音楽祭創始60年の1998年8月19日には、待望のメイン・ホールとして完成したカルチャーコングレスセンターの大ホールで、アバド指揮のベルリン・フィルがこけら落とし公演を催しました。

ルツェルン祝祭管弦楽団

そして2001年に名称を「ルツェルン音楽祭」に変更した音楽祭は、2003年にルツェルン祝祭管弦楽団が設立されたことで大きな転機を迎えます。オープニングから約10日間は、祝祭管弦楽団とそのソリストたちによる室内楽演奏会が集中的に催され、その後は著名オーケストラが順次客演するというスケジュールが定着したのです。ルツェルン祝祭管弦楽団は、ベルリン・フィルの常任指揮者を退いたアバドを音楽監督に迎え、マーラー室内管弦楽団を母体とし、アバドを慕う世界的な名手たちが集結して結成されたオーケストラです。

画像: ルツェルン祝祭管弦楽団 © Peter Fischli

ルツェルン祝祭管弦楽団 © Peter Fischli

ワーグナーのゆかりの地

ワーグナーは、1859年にルツェルン逗留中に「トリスタンとイゾルデ」を完成させています。そして最初の妻の死後、1866年にリストの娘コジマとの新しい生活を始めるために選んだ地がルツェルンでした。現在記念館として公開されているトリプシェンの別荘では、6年間に「ニュルンベルクのマイスター」など数多くの作品を作曲していますが、特にコジマの誕生日プレゼントとして1870年に作曲した「ジークフリート牧歌」は、ワーグナーがチューリッヒから演奏者を招いて、コジマの寝室につながる階段で演奏させたという有名なエピソードも残しています。

画像: トリプシェンのワーグナー記念館

トリプシェンのワーグナー記念館

ルツェルン音楽祭へご案内するツアーでは、同時にザルツブルク音楽祭も訪れます。ルツェルンは世界遺産都市でもあるザルツブルクのような歴史の重みが感じられる街ではなく、いわゆる観光名所的な場所も多くはありませんが、スイスならではの自然の美しさが大きな魅力です。好きな音楽を楽しみながら休暇を過ごすには最適な街と言えるでしょう。

画像: ルツェルン旧市街

ルツェルン旧市街

クラブツーリズムでは、ザルツブルク音楽祭を訪れる複数のツアーをご用意していますので、後日ザルツブルクとザルツブルク音楽祭について詳細にご紹介します。

画像: 【クラブツーリズム 音楽の旅】 旅の文化カレッジ講師 山本 直幸 ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。 特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿。

【クラブツーリズム 音楽の旅】
旅の文化カレッジ講師 山本 直幸
ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿。

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