14世紀~16世紀に美術・音楽・文学・哲学の分野において興った文化運動。この激動の時代を「ルネサンス期」と呼び、イタリアを発端にヨーロッパ各地に広がったこの活動の中で、後世に語り継がれる世界的な偉人や美術作品が生まれていきました。本シリーズではルネサンス期を代表するイタリアの芸術家「レオナルド・ダ・ヴィンチ」「ミケランジェロ」「ラファエロ」を中心にイタリア芸術について紐解いていきたいと思います。

第5回目は、ルネサンスの三大巨匠ミケランジェロをご紹介。レオナルド・ダヴィンチ同様に‟万能の天才”と呼ばれるほど、彫刻、絵画、建築と多才ならではの功績を残していますが、若くして彫刻家としての才能を花開かせます。(2021年12月27日更新)

画像1: イタリア芸術 三大巨匠が交わる奇跡の世界線 <第5回>『生まれながらの彫刻家ミケランジェロ、運命の出会いとピエタ像』 【好奇心で旅する海外】<芸術百華>

第5回から第7回まで、ミケランジェロについて紹介していきます!

‟神のごとき”巨匠の運命は、少年時代にもう決まっていた?!

のちの大芸術家ミケランジェロ・ブオナローティは、ダヴィンチの生誕から23年後の1475年に、カプレーゼというフィレンツェから東に60kmほどの小さな村で生まれました。
生後程なくして、フィレンツェに移り住み、父が営む大理石採石場で石工の家族と暮らします。

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この時に金づちやノミなどに触れ、彫刻に親しんだことが、‟天才彫刻家ミケランジェロ”の第一歩となりました。

芸術に惹かれたミケランジェロは13歳の時に、父の反対を押し切り、当時の人気画家ギルランダイオの弟子となり修行に励むのですが、しばらくしてメディチ家の当主にしてフィレンツェ共和国の事実上の統治者ロレンツォに見出されます。これが彼の芸術家としての運命も決定づけた、最初の出会いといえます。

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‟最初の”と書きましたが、ミケランジェロの芸術家人生は、まさに「時の権力者たち」との出会い、良くも悪くも密接な関わり合いに大きく影響されたものでした。一言で「パトロン=庇護者」と片付けることのできない数奇な出会いとともに、ミケランジェロが残した名作について、ご紹介していきたいと思います。

運命の出会い① まるで親代わり? ロレンツォ・デ・メディチ

ロレンツォは豪華王と呼ばれ、メディチ家が隆盛を極めた時の当主でした。学問や芸術にも深い理解があり、彼の協力なしにルネサンス文化がここまで花開くことはなかったとも言われています。
特にミケランジェロの才能には早くから惚れ込み、自分の子供たちとともに一時期一緒に住まわせたほどでした。ロレンツォの庇護のもと、学問や芸術も広く吸収することができたのです。

画像: ロレンツォ豪華王

ロレンツォ豪華王

しかし、ミケランジェロが17歳の時、ロレンツォが亡くなると状況は一変します。
フィレンツェの政情不安も続き、ミケランジェロも居を転々としますが、21歳の時にローマに移ります。これもある人物から‟招聘”されての出来事でした。

運命の出会い② ‟ニセモノ”を見抜いたローマ枢機卿

ある時ミケランジェロは、メディチ家傍流の男に持ち掛けられ、自ら創作したキューピット像を加工し、ローマ時代のものと偽ってローマの枢機卿に売りつけようとします。
枢機卿はニセモノと気づき怒りますが、その出来映えに関心して、ミケランジェロをローマに招くのです。

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人をだますのは良くないですが、こんなことがきっかけで腕が認められるなんて、ミケランジェロもなかなか‟持ってた”んですね。

そして、ローマに来た翌年、ローマに派遣されていた教皇庁のフランス大使から、ある彫刻制作の依頼を受けます。ミケランジェロ22歳の時でした。

聖母の美しさと、構図の完璧さ。ミケランジェロの真骨頂ここにあり!

それがミケランジェロの代表作のひとつ、「ピエタ像」です。
この作品で、若くして天才彫刻家としての名声を得ることになりました。

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ではここで問題です。実はミケランジェロは生涯のうち、何度かピエタ像を制作しています。さて、いくつでしょうか?

サン・ピエトロのピエタ

正解は・・・4つです

中でも最も有名なのは、先ほど触れた、フランス大使からの依頼で制作した「サン・ピエトロのピエタ」で、4つの中で最初に作られ、唯一完成を見た作品です。
完成当初より‟奇跡”と称され、ミケランジェロの彫刻家としての名声は確実なものになったと言われています。

そもそも‟ピエタ”とは、キリスト教において、聖母マリアが、十字架に磔られ死んだキリストの体を抱いている場面を表す言葉です。
ミケランジェロが生んだサン・ピエトロのピエタ像をじっくり観察すると、聖母マリアはとても美しいだけでなく、キリストの母としては若すぎるようにも見えます。
これについては、聖母マリアの不滅の純潔を表しているとのミケランジェロの言葉があったそうですが、6歳で母をなくしたミケランジェロにとって、若々しい母の面影を聖母マリアに重ねたのではとも言われています。

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ところで、このピエタ像には、何とも言えない安定感がありませんか?

理由としては・・・
まず、ダヴィンチのモナ・リザに代表される、ルネサンス芸術の特徴‟三角構図”が、取り入れられていること。

ダヴィンチ「モナ・リザ」

ミケランジェロ「サン・ピエトロのピエタ」

また、服のひだからキリストの血管まで、大理石とは思えないほど細部まで、やわらかな質感が表現されていること。
鑑賞する者が感じる安心感は、ミケランジェロの圧倒的な技術によって生み出されているのです。

実は残りの3つのピエタ像は、すべてミケランジェロが70歳を超えてから制作されました。
「フィレンツェのピエタ」 「パレストリーナのピエタ(諸説あり)」 「ロンダニーニのピエタ」、いずれも残念ながら未完のままです。
瑞々しい「サン・ピエトロのピエタ」と対照的に、人生の悲哀にあふれる作品になっているとも言われていますが、実際にいかがですか?

画像: 「フィレンツェのピエタ」     「パレストリーナのピエタ」    「ロンダニーニのピエタ」

「フィレンツェのピエタ」     「パレストリーナのピエタ」    「ロンダニーニのピエタ」

‟彫刻家ミケランジェロ”としてのプライド

このように、ミケランジェロの半生、芸術家としての出発点を見てみても、彼の創作活動の軸は「彫刻」であり、ミケランジェロ本人も自らを彫刻家と自任しています。
人生の後半には、システィーナ礼拝堂のフレスコ画制作により、ルネサンスの最高芸術とも言われる傑作を生みだし、画家としても名声を得ることになりますが・・・・そのことについては、追ってまたご紹介することにしましょう。

おわりに

ここでは、ルネサンスの巨匠となったミケランジェロが、彫刻家としての才能を開花させるまでを、‟運命の出会い”とともにご紹介しました。

人生の中盤以降も、ミケランジェロにはまだまだ多くの‟運命の出会い”が待っています。詳細は第7回目までのお楽しみに・・・

次回はミケランジェロのもう少し私的な部分、性格や他の芸術家との付き合い、なども含めて触れていきます。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました!次からさらにミケランジェロについて深掘りしていきます!次回シリーズも是非ご覧ください!

シリーズ全10回好評公開中!
1回目「ダ・ヴィンチだけじゃない!ルネサンスって何?」
2回目「世界に轟く天才の名、レオナルド・ダ・ヴィンチとは!?」
3回目「意外と知らないダ・ヴィンチ真作の秘密」
4回目「失われた絵画!?ダ・ヴィンチ VS ミケランジェロ?」
5回目「生まれながらの彫刻家ミケランジェロ、運命の出会いとピエタ像」
6回目「孤高の職人ミケランジェロ ~偏屈キャラって本当?」
7回目「画家ミケランジェロ ~後半生をかけた魂のフレスコ画~」
8回目「“聖母のラファエロ” ダヴィンチからの影響と美へのこだわり」
9回目「天才ラファエロはルネサンス時代の有能なプロジェクトリーダーだった」
10回目「ルネサンスの天才が残したもの、私たちが出会うもの」

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