旅の文化研究所研究員、一般社団法人日本旅行作家協会会員の黒田尚嗣(くろだなおつぐ)が「歴旅の演出家、旅する世界遺産の語り部」として旅について熱く語ります。
第1回は世界遺産条約のきっかけともなった「アブ・シンベル神殿」をめぐるストーリーをお届けします。

黒田尚嗣(くろだなおつぐ)
慶應義塾大学経済学部卒。現在、クラブツーリズム㈱テーマ旅行部顧問として旅の文化カレッジ「世界遺産講座」を担当し、テーマ旅行の企画をしながら「歴旅の演出家、旅する世界遺産の語り部」として旅について熱く語る。近畿日本ツーリスト時代より海外旅行の企画に携わり、世界各地の文化遺産や自然遺産を多数訪れている。旅の文化研究所研究員、一般社団法人日本旅行作家協会会員

私は現在、クラブツーリズムの「旅の文化カレッジ」が主催する『世界遺産講座』を担当しつつ、年に数回は世界遺産をテーマとした旅行でお客様とご一緒させていただいております。
最近はユネスコの世界遺産だけでなく、国内のストーリーをテーマとした文化庁登録の「日本遺産」ツアーも企画しています。

私の旅行人生を振り返ると人類共通の宝物である文化遺産との出会いも感動的でしたが、国内海外を問わず、その土地に生きる人々との出会いと交流は、それ以上に感銘を受け、素敵な思い出として心に残っています。

私にとって人生は出会いの歴史であり、旅行はその出会いを劇的に演出してくれる場でした。
そこで、私はお客様とご一緒に旅行する際には、旅の出会いを通じてお客様の感動を呼び起こし、興味や関心の幅を広げるきっかけ作りをしてさしあげたい、言い換えればお客様の心に灯を点けたいと思うのです。

そこで私は世界遺産を巡るツアーにおいてもその現場にご案内するだけでなく、その世界遺産が登録されるに至った歴史的背景を解説、その地に生きる人たちとの交流を通じてこれらの貴重な遺産や文化財を「繋ぐ、伝える」という意義についても一緒に考えていただいています。

「世界遺産」という概念の興りとアブ・シンベル神殿

世界遺産は皆さんもご存じの通り、地球の成り立ちと人類の歴史によって生み出された全人類が共有すべき宝物ですが、この世界遺産の概念は、アブ・シンベル神殿で代表されるエジプトのヌビア遺跡群をアスワン・ハイダム建設による水没から救ったことで生まれました。

そのアブ・シンベル神殿は古代エジプト新王国第19王朝のラムセス2世が建設した岩窟神殿で大神殿と小神殿からなります。

大神殿は太陽神ラーを祭神としており、一番奥の至聖所には右からラー・ハルアクティ神、神格化されたラムセス2世、アモン・ラー神、プタハ神の坐像が並んでいます。

そしてラムセス2世の誕生日(2月22日)と王に即位した日(10月22日)の2回、この至聖所にある4体の像のうち、冥界神のプタハ神を除く3体を日の光が照らすように設計されていました。
(※現在は移設されたため、日がずれています)

アブ・シンベル大神殿

エジプトの世界遺産といえば 謎に包まれたピラミッド

しかし、エジプトの世界遺産となればやはり謎の多いエジプトのピラミッドが一番です。

ピラミッドのような巨大建造物の建設は、現代では想像し難いほど長い期間をかけて完成されたものと思われますが、実際どのように建築されたかについては今日でも謎です。

クフ、カフラー、メンカウラーの三大ピラミッドの立っている位置は、エジプト神話で再生の神「オシリス」が宿るオリオン座ベルトの三ツ星と同じ位置関係にあり、三つのピラミッドの四側面はすべて正確に東西南北を指していることも驚きです。

また、これらは王墓と言われていますが、実際に王のミイラは見つかっておらず、今日では墓ではなく儀式の場または神の磐座という説があります。

私も「未完の地下室」が故意に造られたとするならば、「王妃の間」「王の間」「地下の間」との関係はエジプト神話のオシリス神復活の儀式に関係するのではないかと想像します。

そこで私は「なぜクフ王のピラミッドの地下の間が未完成のまま残されているか」を推理すべく、「ピラミッドを極めるエジプト古代遺跡5日間」というツアーでエジプトを訪ねることにしました。

このツアーは2月、3月も予定しており、通常は入れない「王妃の間」と「未完の地下室」も特別入場します。

ギザのピラミッド

クラブツーリズム スタッフより

実は、私たちスタッフと一緒に講座やツアーの企画をしてくださっている黒田氏。
黒田氏が同行するツアーや登壇する講座では、何の事前準備もせずに有名な観光地に行くだけの旅行とは比べ物にならないたくさんの「学び」があります。

せっかく旅に出るなら実りの多い旅にしたいもの。今回黒田氏がおすすめするツアーと加えて、黒田氏が登壇する世界遺産講座をご用意しましたので、ぜひこちらもご参加ください!