旅の文化研究所研究員、一般社団法人日本旅行作家協会会員の黒田尚嗣(くろだなおつぐ)が「歴旅の演出家、旅する世界遺産の語り部」として旅について熱く語ります。
今回は「オーストリア・シェーンブルン宮殿とザルツブルク」をめぐるストーリーをお届けします。

シェーンブルンとオーストリアの世界遺産

クラブツーリズムでは毎年、海外における貸切イベントを企画しており、一昨年はバティカンのシスティーナ礼拝堂、昨年はスペインのアルハンブラ宮殿、そして今年はオーストリアのシェーンブルン宮殿です。

本来ならばシェーンブルン宮殿を好んだマリア・テレジア生誕300周年を迎えた2017年に行くべきところですが、さすがに昨年はマリア・テラジア関連の記念行事が多く、今年の6月3日にようやく「シェーンブルン宮殿閉館後貸切見学&宮殿内の生演奏付晩餐会」なる企画が可能となり、私も本ツアーに同行しますので、今回はシェーンブルン宮殿を中心にオーストリアの世界遺産についてご紹介します。

マリア・テレジア・イエローのシェーンブルン宮殿

ハプスブルク家の栄華の象徴たるマリア・テレジアは、オーストリアの女帝と呼ばれるもフランス革命で処刑されたマリー・アントワネットの母であり、対外戦争を巧みな政治手腕で乗り切って領土を守り、小学校の建設、義務教育化など近代オーストリアの基礎を築いたことから“国母”として慕われています。
また、ハプスブルク家と言えば政略結婚が常識ですが、彼女自身は理想的な恋愛結婚で夫フランツ1世とのおしどり夫婦ぶりでも有名でした。

シェーンブルン宮殿の一帯は、16世紀には「ウィーンの森」に続くカッターブルクと呼ばれる森林地帯で鹿や猪などの猟場でした。
そして皇帝マティアスがそこに狩の館を建て、狩の途中で発見した泉をシェーナー・ブルンネン(美しい泉)と名付けたのがシェーンブルンという名のおこりです。
しかし、1683年のトルコ軍によるウィーンン包囲でこの館は略奪破壊され、後に皇帝レオポルト1世が夏の離宮として新築、当初は簡素な建物でしたが、それをマリア・テレジアが内外ともに今日ある壮麗なバロックとロココ式の優美な姿に仕立て上げたのです。
中でもナポレオン帝国崩壊後のウィーン会議の大広間や6歳のモーツァルトが御前演奏を行った「鏡の間」は必見です。

夏の離宮と呼ばれていますが、実際にはマリア・テレジアは夫フランツ1世や家族と共にしばしば滞在しており、世界最古といわれる「動物園」も敷地内にあって、外国からの珍しい動物を家族で眺めていたのではないかと推察されます。
シェーンブルン宮殿の魅力は、当時の貴族社会では珍しい恋愛結婚で素敵な家庭を築いた女帝の暮らしぶりを追体験できることかと思います。

モーツァルトの出生地としても名高いザルツブルク

サウンド・オブ・ミュージックの世界、モーツァルトの出生地としても名高いザルツブルク。

ザルツブルクと言えば、毎年夏に開かれる音楽祭が有名ですが、これはモーツァルトを記念して開かれるようになったもので、ウィーン・フィルを始め、世界に名だたるオーケストラや歌劇団、指揮者等が集い、会場の祝祭大劇場は映画「サウンド・オブ・ミュージック」の最期のクライマックスで登場し、トラップファミリーがコンテストで歌う名場面ですが、消え行くオーストリアを偲び、ナチスに抵抗する歌「エーデルワイス」は心に残る名曲です。

ザルツブルクとは「塩の城」という意味で、ザルツカンマーグートの「世界で最も美しい湖畔の町」ハルシュタット同様に岩塩の交易によって栄えてきた街です。

世界で最も美しい湖畔の町ハルシュタット

しかし9世紀に司教座が置かれてからは司教都市となり、13世紀後半には大司教の支配する一侯国となりました。
その象徴がメンヒスベルク山に聳えるホーエンザルツブルク城です。
15世紀までは大司教の住居、それ以後は牢獄または兵舎として利用されましたが、外敵に占領されたことは一度もなく、ヨーロッパ中世の城としては完璧に保存された貴重な遺産の一つです。

背景はホーエンザルツブルク城 黒田尚嗣

音楽の神童ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが生まれた家は、ゲトライデ通り9番地にありますが、彼は21歳でザルツブルクでの宮廷作曲家の職を辞してこの地を去っています。
その理由は当時の「大司教の街」には音楽をたしなむ有力者が少なかったからだと言われています。しかし、今や世界中の音楽ファンがここザルツブルクに集い、その音楽祭で彼の曲を聴くと「モーツァルトが戻って来た」ように感じます。
私はザルツブルクの本当の世界遺産は、大司教の残した建造物ではなく、モーツァルトの残した永遠不滅の音楽だと思います。

                                クラブツーリズム株式会社
                               テーマ旅行部顧問 黒田尚嗣

ザルツブルクのモーツァルト生家

クラブツーリズム スタッフより

5月30日(木) コース番号:C5450-026 シェーンブルン宮殿貸切晩餐会

ハプスブルク家の栄華をたどる自然豊かなチロルから栄光のウィーン オーストリア 8日間

本ツアーでは「シェーンブルン宮殿閉館後の特別見学と宮殿内の大ギャラリーでのクラブツーリズム特別貸切晩餐会」をお楽しみいただきます。
また、世界遺産の語り部である黒田ナビゲーターがハプスブルク家の栄華をたどりながら、
自然豊かなチロル地方のインスブルク、モーツァルトの故郷ザルツブルク、
風光明媚なザルツカンマーグートのハルシュタット、
美しいドナウ川のヴァッハウ渓谷にあるメルク修道院、
そしてウィーンの歴史地区などオーストリアの世界遺産を分かりやすく解説します。