モーツァルトは、35年10ヶ月と9日生きた人生の中、10年2ヶ月と8日、つまり3720日旅をしました。実に人生の3分の1を旅したことになり、モーツァルトの人生が旅そのものだったと言えるでしょう。25歳の時にウィーンに移り住み、亡くなるまでの約10年間に6度旅に出ていますが、14度引っ越しもしています。モーツァルトにとっては引っ越しも旅の一部だったのでしょう。モーツァルトの旅の足跡は、ウィーンだけでもたどることができるのです。

聖マルクス墓地 モーツァルト記念碑

モーツァルト最後の旅

ウィーンでのモーツァルトの足跡はすでにご紹介しましたが、モーツァルトはウィーンで最後の旅をします。1791年12月5日、午前0時55分に息を引き取ったモーツァルトの遺体は、シュテファン大聖堂へ運ばれ、大作曲家にふさわしいとは思えない粗末な葬儀が執り行われました。そして遺体が埋葬された聖マルクス墓地への最後の旅をしますが、悪天候の中、見送った者もごくわずかで、誰一人付き添う者もいない淋しいものだったのです。

モーツァルトのいない墓地

3等級の埋葬方法とは、遺体を麻袋に入れて、大きな墓穴に他の複数の遺体と一緒に投げ込み、上から石灰をかけて土をかけ、数年後再びそこに別の遺体を投げ込むというものです。つまりモーツァルトの遺体は棺ではなく、麻袋に入れ墓穴に投げ込まれてだけ、しかも誰一人立ち会わなかっため、未だにモーツァルトの存在は確認できていません。当時はモーツァルトのために十字架さえ立てられませんでしたが、1859年にようやくモーツァルトが埋葬されたと思われる場所に記念碑が立てられました。

折れた柱、頭を抱える天使が象徴的な記念誌

2つの記念碑

現在、中央墓地の楽聖たちが眠る場所にある記念碑は、モーツァルト没後100年の1891年に聖マルクス墓地から移されました。そして聖マルクス墓地には、1899年に新たに記念碑が建立され、1950年に修復されて現在に至っています。折れたようになっている柱は、まるで志半ばで力尽きて早世してしまったことを象徴しているように見えます。右手で頭を抱えてうつむいている天使像も意味ありげです。見た目には少し悲しげな記念碑ですが、モーツァルトを愛する者がその前に立てば、モーツァルトの旅は永遠に続いていることに気づくでしょう。何故ならモーツァルトが遺した音楽は、時代、世代を超えて生き続けているからです。

中央墓地 モーツァルト記念碑

楽聖たちが眠る中央墓地

1874年にヨーロッパで最大級といわれる巨大な「中央墓地」が完成し、その一角に名誉区が儲けられ、さらに「32A」にはお馴染みの作曲家たちの墓が集められました。訪れる人が絶えないベートーヴェンとシューベルトの墓も、棺が埋葬されたヴェーリング墓地から移されました。その2つの墓の前に、モーツァルトの記念碑があります。他にブラームス、ヨハン・シュトラウス・ファミリー、ランナー、ズッペ、グルック、ヴォルフなどの墓があり、少し離れた場所にシェーンブルクの墓もあります。やはり音楽好きなら、足を運ばなければいけない重要なスポットといえるでしょう。

ベートーヴェンとシューベルトの墓

ヨハン・シュトラウスとブラームスの墓

シェーンベルクの墓

クラブツーリズムでは、通年ウィーンを訪れるツアーをご用意していますが、「山本講師同行ツアー」では、自由時間を利用してご希望の方々を、講師がリング内、周辺の音楽家ゆかりのスポットへ徒歩にてご案内しています。

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【クラブツーリズム 音楽の旅】
旅の文化カレッジ講師 山本 直幸
ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿。

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