音楽都市ドレスデンの起点は、世界最古のオーケストラといわれるシュターツカペレ・ドレスデンの前身、宮廷楽団で、その歴史は1548年にまで遡ります。

ゼンパー歌劇場

オペラの伝統

1627年にドイツ最初のオペラ作品「ダフネ」がドレスデンで初演されました。そして現在のゼンパー歌劇場の前身である最初の歌劇場ができたのは、1667年1月27日です。その後ドレスデンが大きな繁栄を遂げるフリードリヒ・アウグスト1世とその息子、フリードリヒ・アウグスト2世の治世(1694年~1763年)に、宮廷楽団は音楽的レベルを大幅に向上させ、1719年にはツヴィンガー宮殿内に完成した本格的な歌劇場で、イタリア・オペラが盛んに上演されるようになりました。

ウェーバー像

ドイツ・オペラへ

1817年~1826年、宮廷楽長を務めたウェーバーが「魔弾の射手」などドイツ語によるオペラを作曲し、上演するようになってから、オペラの伝統はイタリア・オペラからドイツ・オペラへと引き継がれます。ウェーバーの影響を受けたワーグナーは、1841年に完成したゼンパー歌劇場で、自作の「リエンツィ」を指揮して成功を収め、1843年に宮廷楽長として迎えられます。さらに初期の代表作「さまよえるオランダ人」(1843年)、「タンホイザー」(1845年)も自らの指揮で初演し、ドイツ・オペラを発展させます。

左/ワーグナーが「タンホイザー」を作曲した家跡 右/ワーグナーが「ローエングリン」を作曲した家跡

ドイツ・オペラの殿堂

ゼンパー歌劇場は、1869年に焼失後、1878年に再建され、100を超える作品の世界初演・ドイツ初演を手がけました。特にR.シュトラウスと親密な関係を築き、1901年から代表作「サロメ」、「エレクトラ」、「ばらの騎士」など9つのオペラ作品を初演しました。

シュターツカペレ・ドレスデン

音の響きの伝統

宮廷楽団は、1918年に「シュターツカペレ」に改名し、ドイツ・オペラだけでなく、イタリア・オペラや映画音楽の演奏にも関わり、幅広いレパートリーを持つ世界トップ・オーケストラとして名声を高めます。ゼンパー歌劇場は1945年2月13日の空爆で完全に破壊され、再建されたのは40年後です。シュターツカペレ・ドレスデンは、ゼンパー歌劇場でオペラ公演の演奏を担当するだけでなく、コンサートも催していますが、ウィーン国立歌劇場で演奏しているウィーン・フィルとよい意味で比較されるのは、共に今でもオペラ演奏に携わり、独自の環境で磨き上げた美しい「音の響き」の伝統を守り続けているからでしょう。

聖母教会

ティーレマンの活躍

470年の歴史のある楽団には、音楽史に名を残す作曲家や指揮者が関わっています。前述のウェーバー、ワーグナー、R.シュトラウス、そしてベーム、ブロムシュテット、シノーポリ、ハイティンクなど。そして2012年に首席指揮者に就いたティーレマンが、新たな時代を確実に築きつつあります。2012年にベルリン・フィルが離れたザルツブルク・イースター音楽祭の穴を、シュターツカペレ・ドレスデンがすぐに埋めることができたのも、2013年に音楽祭音楽監督に就任したティーレマンの高い人気と評価があってのことです。

聖母教会内ジルバーマン・オルガン

バッハとシューマン

オルガン奏者としてバッハが最初にドレスデンを訪れたのは1717年です。1736年にはドレスデンのシンボルである聖母教会に完成したジルバーマンの傑作オルガンの試奏に招かれ、その後も幾度となく名演奏を披露したという記録が残っています。宮廷楽長ワーグナーと同時期にドレスデンにいたシューマン(1844年~50年)は、ワーグナーとは疎遠の仲でした。ドレスデンで作曲した代表作ピアノ協奏曲はドレスデンで初演されましたが、交響曲第2番や唯一のオペラ作品「ゲノフェーファ」などはライプツィヒで初演されています。

ドレスデンは人口50万人ほどの都市ですが、ゼンパー歌劇場ではシーズン中(9月~7月初旬)に約280回のオペラ、バレエ、コンサート公演があります。2017/18年シーズンは、約29万人を動員し、座席占有率は93%でした。

クラブツーリズムでは、通年ドレスデンを訪れるツアーをご用意していますが、「山本講師同行ツアー」では、音楽家ゆかりのスポットへご案内しています。

ティーレマンがシュターツカペレ・ドレスデンで初めてシューベルト作品を指揮することで注目される演奏会で交響曲第8番「グレート」などを鑑賞します。

シュターツカペレ・ドレスデンが演奏を担当するゼンパー歌劇場公演「トスカ」を鑑賞します。

【クラブツーリズム 音楽の旅】
旅の文化カレッジ講師 山本 直幸
ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿。

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クラブツーリズム 海外音楽鑑賞の旅「アンコール」
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