世界の屋根と称されるチベット高原の中心地に位置するラサは、日本人をはじめ外国人にとっては憧れの秘境の一つ。そのラサへの旅を満喫するには、青海省の西寧とラサを結ぶ全長1956キロにも及ぶ青蔵鉄道の旅がおすすめ。世界中の鉄道ファンが憧れる青蔵鉄道とチベット仏教の聖地ラサを、企画担当者の高田が2019年11月に訪れた際に撮影した写真(掲載写真は全て高田撮影)とともにレポートします。

いざ青蔵鉄道の始発駅西寧へ!

中部国際空港を夕方に離陸し、中国東方航空利用で上海へ。上海で乗継をして、甘粛省の蘭州に到着。標高約1500メートルの高原の街蘭州に初日は宿泊。翌日は高速鉄道で蘭州から標高約2300メートル、青蔵鉄道の始発駅西寧へ。少しずつ高度を上げ、高地順応を促しながら向かいます。この日は中国に強烈な寒気が流れ込んだ影響で、朝蘭州を出発する際はまさかの氷点下。粉雪がちらつく寒さに睡眠不足の筆者の眠気も一発で吹き飛びました。

チベット鉄道乗車までの時間を利用して西寧の市内観光。青海省最大のイスラム教寺院の東関清真大寺。町中では頭に白い帽子をかぶった回族をよく目にする。

西寧の人気店「蘭亭安泊」で名物蘭州ラーメンの昼食。絶品です!

見ているだけでわくわくする全長1956㎞チベット鉄道路線図

憧れの青蔵鉄道 西寧駅到着から出発まで

西寧の簡単な市内観光を終え、いよいよ青蔵鉄道に乗車。中国での列車への乗車の流れは飛行機に搭乗する際とほぼ同等の安全検査とパスポートチェックがあるため、余裕を見て出発1時間半前に西寧駅にスタンバイ。発車の約30分前に改札がスタート、プラットホームに移動し、切符に記載された車両に乗り込みます。車両の乗降口でも乗務員による切符とパスポートの確認があるためすぐ取り出せるように準備しておきましょう。駅構内やホームへはエスカレーターが設置されているためスーツケースも問題なく運べます。

西寧駅。入口で荷物のX線検査を受けます。

巨大な電工掲示板。筆者はZ917便でラサへ。

西寧駅の広大な待合室。両サイドには改札と土産物店があります。チベット土産もここで買えます、種類も豊富。約21時間の列車旅に備え、水や食料品を十分に買っておきましょう。

ホームに降りるとすでに青蔵鉄道が停車中。

青蔵鉄道の切符。ツアーと同じ軟臥(4名1室コンパートメント)に乗車。

青蔵鉄道の内部を公開!

いよいよ乗り込んだ青蔵鉄道。列車番号Z917便、始発の西寧を14:01に出発、翌日11:14にラサに到着する約21時間の寝台列車の旅の始まり。全16両の内、真ん中の8号車の食堂車と軟臥(1等寝台車・4名1室コンパートメント)、硬臥、硬座の3種類の客室で構成されています。1等寝台車は上下の2段ベットが2つと備え付けの机とポットがあるコンパートメント。スーツケース収納スペース、網棚、ハンガー、読書灯が装備され狭い空間ではありますが快適に過ごすことができます。居合わせた中国人旅行者の青年とも交流が弾みました。

乗降口付近。赤い絨毯が敷かれた高級感のある軟臥の車両

2段ベットが机を挟んで2つ設置。筆者の座席は上段でした。ツアーでは上下段の指定はできません。

スーツケースもらくらく収納。枕と布団があらかじめ用意してあります。

隣の客室から子どもがこんにちは。車内の交流もお楽しみ。筆者はHUAWEIのスマホ利用のため、充電器貸してと言われました。

寝台列車の旅の華・食堂車。各テーブルに花も生けられ清潔です。

洗面スペース。各車両に一つ設置。

給湯口も各車両に1つ設置。中国語で「開水」は熱湯の意味。お湯がでます。

トイレが各車両に2つ設置。和式の方が数が多い。トイレットペーパーは携帯必須です。

天空の旅人となり聖地ラサへ!

ラサ駅を予定通り14:01に出発、標高約2830メートルのゴルムド駅に20:48に到着、30分ほど牽引車両の交換のために停車し、夜間に鉄道世界最高地点5072メートルのタンラ峠を通過する。翌朝標高約4500メートルのナクチュ駅に停車、終点標高約3640メートルのラサへは11:14に到着するルート。世界最高地点の通過が真夜中であるのが多少残念ではあるが、ゴルムド駅以降は標高3000メートル以上を走り、各段に標高上げていくため体への負担が大きく、就寝して体を休めていた方が高山病になるリスクが少ないと言われる。車窓に広がる青海湖や崑崙山脈、タングラ山脈などチベットならではの雄大な景色が楽しめるのはこの上ない青蔵鉄道の魅力だ。

発車後しばらくすると車掌が切符と預かり証の交換に来る。この際、中国語で書かれた健康登録カードが配られるのでサインしておこう。ラサ到着1時間ほど前に車掌が切符と再度交換に来る。

出発して間もなく見えてくる中国最大の塩湖・青海湖

荒涼とした高原と山々の景色が永遠と続く。中国の広大さ、魅力の深さを改めて感じる。

空いた食堂車にて青椒肉絲とごはんの夕食。左上の青島啤酒(ビール)はこの後筆者を苦しめることになる

夜間に30分間停車するゴルムド駅。ホームにも降りることができるが、お店などはない。

車内に飛び込んでくる神々しいチベットの朝日

広大なタングラ山脈の雪山の景色が続く。朝日が照りかえり、神秘的な一瞬を迎える。

ダムシュン駅通過後しばらくすると、徐々に道路や人家、放牧された羊やヤクが姿を現す。ラサまであと少し。

ラサ駅。外国人はラサ駅到着後、駅横の事務所でチベット入境許可書とパスポートの確認がある。入境許可書はツアー団体で1枚、現地ガイドが所持している。

青蔵鉄道の注意点~健康管理について~

青蔵鉄道で何よりも注意しなければならないのは自身の健康管理だ。標高3000メートル以上を走る青蔵鉄道では高山病対策をしっかりと行う必要がある。旅行開始前から風邪をひいたり、睡眠不足にならないよう注意しよう。また旅行開始後は暴飲暴食を避け、喫煙、飲酒は控え、十分に水分補給を行っていきたい。車内は極度に乾燥しているため何もしていなくても体から水分が失われる、意識して水分を補給しよう。水や飲料水は食堂車で随時購入できる。万が一高山病の症状である頭痛、吐き気が発生した際は、我慢せずに早めに添乗員に相談しよう。ゴルムド駅以降は客室の酸素供給口が稼働し吸引が可能になり、必要な乗客には車掌が酸素チューブを持ってきてくれる。筆者は夕食時にお付き合い程度に口をつけたビールが原因なのか、疲労と合い重なり翌朝高山病を発症。激しい頭痛に襲われたが酸素を吸引するととたんに収まった。

鼻から吸引する方式の酸素チューブ。高山病の症状が和らぐ。

後編に続く

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