“おとぎの国”アルザス フランス東部の田舎を旅してみませんか

皆様こんにちは。フランス担当の荒木です。
今回は、フランスの東、ドイツとの国境沿いアルザス地方についてご紹介します。
私が訪れたのは昨年11月、ブドウ畑や森が黄金色に色づく季節です。町ではクリスマスの準備が少しずつ始まっていました。
それでは、色とりどりの木組みの家が建つ町々や、アルザスの味覚、お土産などをご案内してまいりましょう。

コルマール/2019年11月荒木撮影

アルザス地方ってどんなところ?

アルザス地方はフランスの北東部、ドイツと国境を接する場所にあります。
そのため、フランスとドイツが長らく領土権争いを繰り広げた歴史があり、現在もフランスとドイツの文化が入り混じった独特な町並みや雰囲気を楽しむことができます。

言語もそのひとつ。アルザス地方では、フランス語の他にドイツ語も話せる人も多く、年配者であれば、ドイツ語の方言のような「アルザス語」を理解できる人もめずらしくありません。
道路標識などもフランス語とアルザス語の併記を目にすることもできます。

木組みの家と運河が織りなす町コルマール

では、早速アルザス地方の町々を紹介していきましょう。

アルザス地方の南北に連なるヴォージュ山脈。その東斜面に続くブドウ畑の間をぬうように続くのがアルザス・ワイン街道です。街道の途中には小さな村やワイン生産で古くから栄えた町が点在しています。

ワイン街道の中でも最も人気な町のひとつが、コルマールです。
旧市街にはカラフルな木組みの家が建ち並び、出窓にはきれいな花が飾られています。カフェやレストラン、土産店、食料品店なども多く、店ごとに異なる飾り看板も、可愛らしいものばかりです。

コルマール旧市街の飾り看板(左)/2019年11月荒木撮影  プチット・ベニス(右)/ⒸIstock

旧市街を進むと、プチット・ベニスと呼ばれる運河沿いのエリアへ。メルヘンチックな木組みの家とのバランスは何とも絵になる風景!訪れた人々が写真撮影に夢中になるのもうなづけます。

アルザスは実はお菓子天国!

さて、アルザス地方に行ったらぜひ買っていただきたいお土産と言えば、“アルザスマカロン”です。
マカロンというと、カラフルでやわらかい、間にクリームが挟まったお菓子を思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、アルザスマカロンは全くの別物です。ココナッツを使ったクッキーのような、ザクザク食感の焼き菓子です。
実は、アルザスマカロンが原型となり、あのカラフルなメレンゲのマカロンができたとも言われていますので、マカロンの元祖とも言えますね。
私のお勧めは、「MAISON ALSACIENNE DE BISCUITERIE(メゾン アルザシェンヌ ドゥ ビスキュイテュリー)」というお菓子屋さんです。コルマールだけでなく、ストラスブールやオベルネなどの町にもありますので、是非見かけたら立ち寄ってみてください♪

コルマール「MAISON ALSACIENNE DE BISCUITERIE」のアルザスマカロン/2019年11月荒木撮影

ちなみに、アルザス地方は、パリに負けないくらいの「スイーツの聖地」と言えます。
実際、ピエールエルメをはじめとしてアルザス出身の有名パティシエは多く、日本からも数多のパティシエが修行に来ているスイーツの激戦地なのです。
ご紹介したマカロンの他にも、クグロフ、チーズタルト、パンデピスなど、アルザス名物のお菓子が買えるお菓子屋さんや、食べられるカフェも多いので、お気に入りを探してみてください。

"フランスの最も美しい村” ①エギスアイム

フランスには、1982年に設立された協会が、地方の村の保全と活性化を目指して審査し公認した150あまりの"フランスの美しい村”があります。アルザス地方には、5つの村が公認されています。
「人口が2000人未満」「建物の外観に調和」など、厳密な基準があり、村の入口には認定マークが印されています。

いくつかその村をご紹介します。まずはそのうちのひとつ、エギスアイムです。
エギスアイムは2006年に「ヨーロッパ花の町コンクール」で金賞となるなど、“花の村”としても人気です。村の中心の広場や家々の軒先にはゼラニウムやビオラなどが美しく咲き誇ります。私が訪れた11月でも花壇の花が美しく手入れされていて十分に楽しむことができましたが、春から秋にかけては豊かな緑の木々とともに、より一層美しさが増す季節です。

エギスアイム/2019年11月荒木撮影

村の旧市街は円状で、城壁の端から端までは400mくらい、歩いて5分程と、とてもコンパクトです。かつてエギスハイム城と聖レオン9世の噴水を中心に二重の城壁が建てられた歴史そのままに、壁に沿って建てられた木組みの家々がひしめき合っています。石畳の細い路地を散歩していると、絵になる風景ばかりで、ついついたくさん写真に収めてしまいました。

“フランスの最も美しい村” ②リクヴィル

続いての村は、リクヴィルです。こちらも人口1000人あまりの小さな村ですが、最近では年間100万人近くの観光客が訪れるそうで、アルザスにある“フランスの最も美しい村”の中では一番有名な村と言えるかもしれません。リクヴィルは、周囲をブドウ畑に囲まれたワイン造りの村ですが、村役場から鐘楼を結ぶジェネラル・ド・ゴール通りを中心に、色鮮やかなアルザス風の伝統的な家々が建ち並び、その景観の美しさから「アルザスの真珠」とも呼ばれています。

旅の楽しみといえば 郷土料理とアルザスワイン

ここではアルザスの2つを代表する2つの味覚をご紹介します。
アルザスの名物料理タルトフランベと、アルザスワインです!
タルトフランベは、薄いパイ生地にチーズなどを塗って玉ねぎやベーコンなどの具材をのせ、サクっと焼き上げたものです。ピザに似ていますが、とても薄く食感もので、食事のメインとしてもお酒のおつまみとしても楽しめます。
アルザス地方の多くのレストランやカフェで食べることができます。

リクヴィル(左)とアルザス名物タルトフランベ(右)/2019年11月荒木撮影

そして、これをなくしてアルザスを語れない、とも言うべきものがワインです。私自身、
ワイン通とはいい難いので、ここではあくまで素人目線になりますが、アルザスワインについてお話させていただきたいと思います。

アルザスではなぜ美味しいワインができるのでしょうか?
それには、冒頭でも触れた南北に連なるヴォージュ山脈が関係しています。この山脈によって西から吹く冷たい偏西風が遮られ、緯度のわりには温暖な気候が生まれているのです。降雨量も少なく、日照時間が長いことに加え、標高が高く寒暖の差が大きいことや肥沃な土壌も、優れたブドウが育つ条件を満たしています。アルザスワインを生むブドウ畑は、この山脈の東側の斜面に連なっています。

アルザスの歴史もドイツと深く関わりがあるように、ワインづくりにおいてもドイツの影響を色濃く受けています。ドイツのワイン法が由来となり、主に単一品種でつくられていることも特徴です。
アルザスワインにとって、“どのブドウ品種で作られているか”はワインの個性を表す上でとても重要なポイントなのです。その証拠に、アルザスワインのラベルにはブドウ品種が表記されています。
これは実はフランスワインの中でもとても珍しいことで、他の地域ではほとんど記載はありません。

アルザスでは90%以上が白ワインの生産ですが、主な品種は6種類です。
リースリング/ゲヴュルツトラミネール/ピノグリ/ピノブラン/ミュスカ/シルヴァネール
ブドウ品種によってまったく個性の異なりますので、飲み比べてお気に入りを見つけてください!

ちなみに、私のお気に入りはゲヴュルツトラミネールです。ドイツ語で「香辛料」という意味があり、スパイシー、とかライチなどフルーツの香りと表現されるそうです。味や香りをうまく表現することはできないのですが、梅酒や果実酒が好きな人にもおすすめというのを聞き、納得したのを覚えています。ぜひ一度お試しください!

さまざまな品種のアルザスワイン(左)とゲヴュルツトラミネール(右)/2019年11月荒木撮影

世界遺産ストラスブール旧市街 アルザス地方最大の街

最後にアルザス地方の中心地ストラスブールをご案内します。パリから高速鉄道TGVで直通なら約2時間少々と、アルザス方面への玄関口ともいえる街です。
見どころはイル川に囲まれた旧市街に集中しており、徒歩で観光が楽しめます。

ストラスブールのシンボル 大聖堂

ストラスブール旧市街のほぼ真ん中にそびえ立つのが、巨大な大聖堂。高さ142メートルの大聖堂の外壁には、圧巻の繊細な彫刻が施されています。聖堂前の広場に立つと、その迫力に圧倒されます。全景写真を写真を撮るのも一苦労!しゃがんで下から上に見上げるように撮影してみてください。

お土産や雑貨などショッピングも楽しみ

ストラスブールは比較的大きい街なので、ツアーでも連泊することが多く、自由時間が含まれることも珍しくありません。旧市街をぶらぶら散策しながら、買い物を楽しんでいただくのも良いでしょう。
アルザスのお土産といえば、すでにご紹介したワインやマカロンなどのお菓子が定番ですが、小さな村々で作られている陶器やテーブルクロス、アルザスを象徴するコウノトリのグッズ、アルザスの田舎風景を描いた絵本作家アンシのグッズなども人気です。ぜひお気に入りを探してみてください!

左からコウノトリのチョコレート、テーブルクロス、絵本作家アンシの雑貨/2019年11月荒木撮影

アルザスの街や村はいかがでしたか?
フランスと一口に言っても、各地方ごとに文化や風土、気候などがまるで異なります。
フランス未踏の方も、過去にパリだけ訪問された方も、地方へ既に足を延ばしている方も、是非一度アルザスの風を感じていただきたいと思います。

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