皆様、アッサラーム(こんにちは)!エジプトと言えば、何を思い浮かべますか?有名なもので言うとピラミッド、ファラオ(王様)、ミイラ、遺跡、砂漠などでしょうか?ピラミッドをはじめ古代文明のイメージが強いミステリアスな国【エジプト】を様々な角度からご紹介するこの企画。(2021年12月22日更新)

第2回目はエジプト史と深く関わる「ナイル川」についてです!実はエジプトを語るには、切っても切れない結びつきがあるのがナイル川なのです。

ナイル川って、どこにあるの?

ナイル川は、アフリカ大陸を南北に流れる長さ約6,650キロメートルの世界最長の河川と言われています。その長さゆえに、様々な国を通り最終的にはエジプトを通過し地中海に注いでいます。
面している国の数は、なんと計10カ国!

①ブルンジ
②ルワンダ
③コンゴ民主共和国
④タンザニア
⑤ケニア
⑥ウガンダ
⑦エチオピア
⑧南スーダン
⑨スーダン
⑩エジプト

ナイル川は、青ナイルと白ナイルという2つの支流に分かれていて、青ナイルはエチオピアのタナ湖に源に発する川で、スーダンの首都であるハルツームで白ナイル川と合流します。白ナイルはウガンダ・スーダン・ブルンジ・タンザニア・ルワンダ・南スーダンを通っています。

地図上で見ると上流のブルンジから下流のエジプトまで南北に長く続いている様子が分かりますね。ナイル川の長さは6,650キロメートル、日本が南北で約3,000キロメートルなので、日本がすっぽり2つ入っても、まだそれ以上に長いということになります。さすが世界最長の河川ですね!

Google Earth

エジプトは、ナイルの賜物(たまもの)

皆様、一度は耳にしたことがある言葉では無いでしょうか?古代ギリシャの歴史家ヘロドトスが残したとされる言葉です。
古代より世界有数の大河であるナイル川の氾濫や洪水によって育まれた肥沃な土地によって、古代エジプトは高度な文明を形成することが出来たことを表していると言われる言葉です。(※諸説あります。)

古代では、雨季の時期に上流のエチオピア高原から流れ込んだ雨水が、中流、下流(エジプトなど)で増水し、自然堤防を越え、洪水になったと考えられています。

ハピ神©SPTツアー

ちょっぴり小ばなし

古代エジプトではナイル川の氾濫は、
ナイル川の神様ハピ神が起こしていたと思われていたようです。

水の流れる壺が描かれ、氾濫時には彼がナイル川に水を注ぎ、大地に恵みをもたらす神といわれていました。

姿に特徴があり、顎に髭を生やし、垂れた乳房を太った男の姿で表され、
女性の胸は、豊饒性を表しています。

その洪水により、肥沃な土壌が毎年供給されることになり、ほとんど雨の降らなかったであろうエジプトでも農耕や灌漑が可能になり、文明が発達したと言われています。現在、見つかっている遺跡などの多くはナイル川近くに見られます。

コムオンボ神殿(イメージ)

ナイル川のすぐ側にあるコムオンボ神殿では、ナイル川の増水を図る「ナイルメーター」をご覧いただけます。

ナイルメーター©ワールドコンパス

ナイルメーター内部©ワールドコンパス

現在のエジプトは、国土の約90%以上は砂漠地帯で、人々が暮らせる緑地帯(ナイル川沿い)はなんと日本の九州ほどの大きさしかなく、そこに人口の約95%の人々が暮らしているそうです。
今も、昔も、このナイル川沿いがエジプト人にとっての居住地になっているのですね!人も、土地もナイルの恵みを受けて、このエジプトが発展してきたといえるでしょう!

神秘のピラミッドとナイル川の関係性

紀元前2700年頃から作られたとされるピラミッドですが、現在発掘された数は130基以上にのぼります。そのほとんどに共通する点は、ナイル川の西側にあることです。
「いつ」「誰が」「何のために」「どのように」造ったのか解明されていないピラミッドですが、ナイル川の関係性について3つの説を紹介します。

①エジプト人の死生観

太陽を信仰していた古代エジプト人にとって、太陽が昇る東側は「現世」や「誕生」を意味し、日が沈む西側は「死者の国」や「冥界のへの入り口」を表すものと言われていました。
古代エジプト人にとってナイル川は生命線であり、あらゆることがナイル川を中心に考えられていました。古くから王墓は「死者の国」であるナイル川の西側に造られていました。それを踏襲する形でピラミッドもナイル川の西側に造られたという説です。

実際、ツアーで行く、ピラミッド時代以降に造られたファラオ達の墓がある「王家の谷」は確かにナイル川の西、ルクソール西岸にありましたね!ツタンカーメンの墓などもこのナイル川の西岸にありました!

ツタンカーメンの墓内部(弊社スタッフ撮影/2019年10月)

②地理的要因 氾濫期を活かした建造方法?

ギザの3大ピラミッドを例にあげると、東側の土地は、ナイル川の水面より高い位置にあります。一方の西側は、氾濫期には、周囲が冠水する可能性がありました。「えっ?じゃあ、東側で造れば良いんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、ピラミッドを造る際、切り出した重い石材を船で運搬する必要があり、川が氾濫し建造場所まで水際が迫っていることが求められていたと考えられています。

クフ王のピラミッドの石材一つの重さは約2.5トンと言われていて、総数300万個の石材を使っていたと言われています。これが、事実であれば、人で運びきることは到底考えられないので、ナイル川の氾濫を活かした可能性もありそうですね!

実際に、現在のピラミッドでは、周囲に水は見られませんが、過去の写真には、ピラミッド近くまで水が迫っていた写真もあります。また、あるピラミッドの近くでは波止場跡も見つかっています。

ギザの洪水の様子©SPTツアー

©SPTツアー

③ナイル川の東側が資源の宝庫

ナイル川の東側は、ピラミッドの外壁によく使われていた石灰岩をはじめ、砂岩、花崗岩、閃緑岩といった高品質な石材が産出されていたそうです。一方で西側は資源が乏しく、固い岩盤が広がる土地であったため、ピラミッド建造地としてナイル川の西側が選ばれたという説があります。

いずれも、真実は分かりませんが、古代のピラミッド文化と、ナイル川は切っても切れない結び付きがあるようですね!

近代エジプトとナイル川

アスワン・ハイ・ダム

近代に入りエジプトは、ナイル川の氾濫防止と灌漑用水の確保のため、1902年、1970年にアスワン・ハイ・ダムの建設をしました。結果的にエジプトでは、毎年起こっていたナイル川の氾濫を防止し、水力発電装置によって多くの電力供給が可能になりました。
さらには、巨大ダムによる、観光誘致の成功や、ダム建設によって出現したナセル湖の漁業が活発になり、豊富な水産物を得ることができるようになりました。

国として、経済的に成功をおさめたように思われた一方、上流側の広大な土地が水没したり、海岸の浸食や、一部で塩害が起きている事実もあります。成功の裏で、それによる影響が出て来ている悲しい事実もあるようです。

アブ・シンベル神殿もダム建設で影響を受けたものの1つ。ダム建設による水没の危機を、ユネスコの協力を得て上部へ移転修築し、世界遺産に認定されました。世界が協力して守った神殿のすごさは是非、実際に行って見ていただきたいです!

アブシンベル大神殿(企画担当者撮影/2019年5月)

アブシンベル大神殿のライトアップ(イメージ)

エチオピアのアフリカ最大規模のダム建設によるエジプトへの影響

ナイル川上流のエチオピアでは、まもなく建設中の巨大ダムが完成し、エチオピアの数千万人の国民を貧困から解放すると期待されています。一方でエジプトは、ナイル川の下流ということあり、エジプト側に流れ込むほぼすべての水の供給が止められると懸念する声を上げ、今もなお、国際協議をしている状況です。

日本でも大阪が滋賀県の悪口を言うと、「琵琶湖の水を止めるよ!」という冗談がありますが、エジプトにとっては、「エジプトはナイルの賜物」の言葉通り、笑いごとでは済まされない深刻な問題になっています。

いずれにしても、エジプトという国は、ピラミッド時代から含め約4,500年の間ナイル川の恵みを受け続け、切っても切れない関係性にあるんですね。

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おわりに

皆様、「謎多きエジプト大解剖!」第2回目はいかがでしたでしょうか。ピラミッドや、遺跡にも浪漫がありますが、その側で一緒に居続けたナイル川にも浪漫を感じずにはいられませんね。

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