通勤ライナーとしての有明号。この時間まで特急列車の運転があった。/ 弊社社員鈴木 悠斗撮影
2021年3月のダイヤ改正で廃止となる特急有明号に関する記事です。
国鉄→JR九州を代表する特急列車として1967年から鹿児島本線の門司港・博多~熊本・西鹿児島間などを長らく走ってきました。
1992年の特急つばめデビュー後は博多~熊本間を中心に都市間輸送にあたり、中でも非電化区間の水前寺駅にディーゼル機関車牽引で乗り入れる「水前寺有明」は鉄道ファンの注目を集めました。
車両も時代と共にキハ82系・485系・583系・783系・787系とバラエティーに富んだ有明号ですが、九州新幹線の開業などの影響を受け便数が徐々に減少・区間も徐々に短縮、ついに2021年3月ダイヤ改正での廃止が決定しました。
今注目!特急有明号について鉄道部員の視点でお伝えします。

特急有明号とは

1967年に福岡~熊本~鹿児島の都市間を輸送する気動車列車として運行を開始し、1970年の鹿児島本線の電化と共に車両が電車化、1975年の山陽新幹線博多駅乗り入れ開始を受け、本州からの乗客を九州南部へ輸送する重要な役割を果たしていました。
その名の通り博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)間を中心に有明海沿岸を走り、最大32往復を誇る九州のエース特急として長らく君臨していました。
1992年、特急つばめデビューに伴い有明号のうち西鹿児島駅発着便の名称をつばめ号に譲り、博多~熊本間を中心につばめ号を補完する役割へと変化しました。
その際熊本から豊肥本線に乗り入れ水前寺や光の森、武蔵塚、肥後大津へ乗り入れを開始しますが、乗り入れ開始当初は豊肥本線が電化されていなかったため、電車にもかかわらずディーゼル機関車に牽引されての入線となるなど日本国内では非常に珍しい運転形態にもなりました。
その後2011年の九州新幹線全通後、有明号の役割は都市間輸送から博多駅を中心とした通勤ライナーへと変わります。
2014年には熊本駅乗り入れを中止し、長洲駅(熊本県)までの運転に。
2016年の熊本地震の際には駅の電光掲示板表記こそ「臨時特急」でしたが、側面行き先表示には「特急有明」が表示され、不通となった九州新幹線を深夜に代替する救世主となりました。
2018年には上り1本のみ、区間も大牟田駅(福岡県)発に短縮され、2021年3月のダイヤ改正で廃止が決まりました。

787系特急型電車。特急つばめも787系が使われていたが、有明専用編成には「ありあけ」と赤いステッカーと「ARIAKE」ロゴが貼られた。/ 弊社社員鈴木 悠斗の関係者が撮影

使用車両

現在残るたった1本の特急有明には787系特急型車両が使われています。
かつての特急つばめ・有明として使われた車両でもあり、車内の座席部分には「TSUBAME」「ARIAKE」といったロゴも一部車両に残っています。
先頭車はグリーン車で、そのうち1部屋のみグリーン個室を備えており、かつて長距離特急列車で使われていたことがうかがえます。
かつてはキハ82系、481系・485系、581系・583系、783系「ハイパーサルーン」というバラエティーに富んだ車両が使われ、鹿児島本線を支えてきました。

座席のひじ掛け部分にTSUBAMEロゴが残る。/ 弊社社員鈴木 悠斗撮影

有明号の歴史:「機関車牽引運転」

1987年に熊本駅発着列車を豊肥本線水前寺駅まで延長する運行方法で乗り入れを開始しましたが、当時電化されていなかった豊肥本線に乗り入れるためにディーゼル機関車による牽引を行っていました。
この形態は1994年まで7年間も続き、鉄道ファンの間では「水前寺有明」と呼ばれていました。
一度は水前寺乗り入れを中止したものの、1999年の豊肥本線熊本~肥後大津間電化に伴い機関車牽引の必要がなくなったことから乗り入れを再開、武蔵塚・光の森・肥後大津まで乗り入れが延長されました。

現在も始発駅・終着駅における行き先表示器回転「幕回し」の際に見ることができる。/ 弊社社員鈴木 悠斗撮影

有明号の歴史:783系「ハイパーサルーン」の車内放送

特急有明号で使われた「ハイパーサルーン」こと783系では乗客への案内に自動放送が導入されました。
また、始発駅発車前と終着駅到着前には自動放送のBGMとしてJR九州の社歌「浪漫鉄道」が流れていました。
前奏の高まりとともに旅への高揚感を感じさせ自動放送に入る演出、自動放送終了後に曲のボリュームが上がり最後まで曲を聞かせる演出は今聞いても色あせることはありません。
いつしかこの演出がなくなってしまいましたが復活しないものかと願っています。

783系特急型電車。かつては浪漫鉄道の他に熊本の「おてもやん」・博多の「黒田節」といったご当地メロディーが流されていた。/ 弊社社員大塚 雅士撮影

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