廃止が発表された快速ムーンライトながら号の方向幕(弊社スタッフ鈴木 悠斗撮影)
クラブツーリズム鉄道部のツアー内や動画によく登場する「幕回し」に関する記事です。
幕回しとは列車の行き先表示「幕」を終着駅等で「回し」て変更させることを指します。
首都圏では上野駅の特急草津号・特急あかぎ号、東京駅の特急踊り子号(2021年3月ダイヤ改正前まで)などで見ることができます。
普段は使わない行き先表示が登場したり、遠くの行き先に想いを馳せるなど、現在主流となったLEDでは味わえない魅力を鉄道部員の視点でお届けします。
クラブツーリズム鉄道部でも貸切列車ツアーで行う演出「幕回し」の動画を公開中!
ぜひご覧ください。

幕回しとは?

ブログをご覧になっているみなさまは「幕回し」と聞いてその画が浮かんできましたか?
もしかしたら「幕」とは何か、しかもそれを回すとは何か全くわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
簡単に説明すると、列車の行き先表示器を変える作業のことを指します。
車両にはこの列車の行き先がどこかを示す行き先表示器が設置されています。
現在こそLEDによる行き先表示器が主流ですが、1990年代までに製造された車両を中心に行き先が書かれた(丈夫な)紙を使用していました。
行き先は当然1つとは限らない(例えば、東海道線であれば東京・品川・小田原・熱海など多くの行き先がある)ため、1枚の長い紙(これを「幕」と呼ぶ)に行き先を羅列していました。
列車が終着駅等で回送列車になる際や折り返しをする際、この幕を回して行き先表示を変更する作業のことを「幕回し」と呼びます。

中央線で活躍した201系の幕。中央線では各駅停車の運用がなくなってしまったため、貴重な記録である。(弊社スタッフ小笠 祐史撮影)

幕回しの何がおもしろいのか?①

1つ目の魅力は、普段は使われない行き先が見られることです。
例えば、東海道線の「横浜行」を見たことはありますか?東京行や熱海行はよく見かけますが、横浜行は通常表示されることはありません。
では、なぜ横浜行の表示が搭載されているかという話になりますが、突然のダイヤ乱れや線路が不通になったときにターミナル駅の横浜駅で折り返しをしなくてはいけないことがあります。
その際に乗客に向けて「緊急用」として表示できるようにしなくてはいけないためです(例外的に搭載していない行き先が発生してしまった際は「普通」「臨時」といった幕で代替しますが、乗客からすれば一目で行き先を判別できない不便さを感じさせてしまいます)。
現在東海道線の普通列車で幕を搭載した列車自体がなくなってしまったため横浜行の幕を見ることはできませんが、かつては東京駅などで行き先変更をする際に見ることができました。
また、特急列車に使われる車両などではすでに廃止になってしまった列車の行き先表示が出ることがあり、鉄道ファンは一瞬表示される珍しい幕を撮影しようとカメラやビデオを向けるのです。

中央本線の特急スーパーあずさとして活躍したE351系の方向幕(全車引退済み)。甲府行のあずさは基本的に設定がなかったため貴重な表示である。(弊社スタッフ小笠 祐史撮影)

東武鉄道350型電車の幕。特急しもつけ号はすでに廃止されている。(弊社スタッフ小笠 祐史撮影)

幕回しの何がおもしろいのか?②

2つ目の魅力は、遠くの行き先に想いを馳せることができることです。
例えば、名古屋駅では特急列車の幕回しで「金沢」「富山」「高山」「紀伊勝浦」といった表示を見ることができます。
「この車両はあんな遠くの地まで走っているのか、いつかいってみたい」などと遠くの地を想起させ、見る者をワクワクさせる効果があると考えられます。
車両によっては「青森」から「西鹿児島(現・鹿児島中央)」までの表示を搭載している車両もあり、幕回しだけで日本一周旅行ができてしまいます。
とりわけ日本全国の幕を持っている車両は国鉄時代からの古い車両が多く、見られる機会が激減しています。

通常名古屋・大阪~富山を岐阜経由で結ぶ特急ひだ号の幕。金沢行は通常存在しない行き先だが、名古屋駅でこの幕を見かけたら驚いてしまうかもしれない。(弊社スタッフ大塚 雅士社員撮影)

2021年現在幕回しが見られる場所はどこか?

ここまでで幕回しに少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
幕を搭載している車両はどんどん数を減らしていますが、2021年現在でも見られる箇所は存在しています。
首都圏では絶滅寸前ながら上野駅で特急草津号・あかぎ号で使用される651系が頻繁に幕を回します。
2021年3月のダイヤ改正で定期運行から退く特急踊り子号などで使用される185系も東京駅などで幕回しを行います。
また、高崎地区(群馬県)や中央本線立川以西で活躍する211系、東武鉄道や西武鉄道など新旧様々な車両を使用している鉄道会社でも幕回しを見ることができます。
関西のJRのように幕からLEDに改造され見られることが難しくなっていても、近鉄・阪急電車など私鉄では幕が健在といった例もあります。
そのほかのエリアでは終着駅を中心にまだ見ることはできるものの、そう遠くない未来見られなくなることも考えられるので、見かけたら記録をしておくことをオススメします。

211系の幕の一例。これ以外にも上野・大宮・前橋・通勤快速前橋など多種多様な種別・行き先の組み合わせが搭載されている。(弊社スタッフ鈴木 悠斗撮影)

クラブツーリズム鉄道部のツアーでも幕回しが見られる!

クラブツーリズム鉄道部で貸切列車のツアーを行う際、乗務員の方にお願いをして許可が下りれば長時間停車の間などに幕を回してお客様に喜んでいただく演出をしています。
※列車運行や安全の都合上必ず行うわけではありません。あらかじめご了承ください。
その際のポイントは「珍しい幕をご覧いただく」「時間の許す限り全部回していただく」ことです。
今後クラブツーリズム鉄道部のYouTubeでも少しずつ幕回しの映像を公開していきます。
クラブツーリズム鉄道部のYouTubeで現状公開されている動画のリンクを貼っておりますので、ぜひ一度ご覧ください。

今注目の185系前面・側面幕回し2021年3月定期運行引退 ホームライナーにおはようライナーも!【貨物線ツアープレイバック①】

www.youtube.com

【幕回し】定期列車としては存在しない行き先も!キハ85系側面幕回し

www.youtube.com

【幕回し】8000系前面・側面幕回し 定期列車としては存在しない行き先も!

www.youtube.com

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