皆様、アッサラーム(こんにちは)!謎多きミステリアスな国、エジプトを様々な角度で紹介するこの企画。第4回目はラムセス2世(ラメセス2世)について!エジプト史上最も偉大な王と謳われたラムセス2世と彼の築いた神殿について見ていきましょう!(2021年12月22日更新)

ラムセス2世ってどんな王?

エジプトの方に「ラムセス2世はどんな王?」と聞くと、「エジプト史上最も偉大なファラオ(王)だ!」と答える人が多くいます。ラムセス2世は一体なぜ偉大なファラオと称されているのか?

ラムセス2世はエジプトを守り強国にしようと戦争に出かけ、征服王と呼ばれていました。また一方で巨大な神殿の建築を作ることに心血を注いだと言われています。
まずは、有名なカデシュの戦いについて見ていきましょう。

世界初がいっぱい!カデシュの戦い

ラムセス2世がエジプトのために繰り広げた戦争がいくつかあるが、その中でも「カデシュの戦い」は、詳細な戦闘過程が碑文に残されており、その意味で世界最古の“記録された戦争”としても有名な戦いです。

エジプト軍は約2万の軍を率いてヒッタイトへ向かい、ラムセス2世は捕虜の偽情報をつかまされてカデシュの北に進出しました。東側から現れたヒッタイト軍はエジプトの後続の軍を急襲、エジプト軍は混乱に陥りました。海岸部からの援軍が駆けつけ、危機を切り抜けたラムセス2世率いるエジプト軍はこの戦争に勝利します。

一時ヒッタイト軍が優勢であったが、ラムセス2世の勇戦によってエジプト軍が態勢を立て直し、最終的には決定的な勝敗は決せず終わりました。戦いの結果は、一般に引き分けに終わったとされています。

アブ・シンベル神殿内レリーフ

アブシンベル神殿の壁画には巨大なラムセス2世が敵を討つ姿が描かれています

エジプトとヒッタイト両国の間で、平和同盟条約が締結されました。互いの領地を侵略しない相互不可侵や国が危機に陥った際は援軍を出し助ける、などの内容が含まれたこの条約は現在知られている中で世界で最古の国際条約といわれています。

巨大神殿の建設

ラムセス2世の人生の後半は巨大な神殿づくりに時間を費やしました。カルナック神殿アブ・シンベル神殿といった現在も世界中から観光客が訪れる神殿を作り上げた人物がラムセス2世でした。

★アブ・シンベル神殿

エジプト南部に位置するヌビアと呼ばれる地域にあるアブシンベル神殿。ラムセス2世が建築した神殿の中で最も美しいと称されている神殿です。
日本から直行便では行けないため、首都カイロから乗継ぐか、アスワンからバスにて移動が必要です。ツアーだとアスワンからバスで移動することが多いです。

©Google map

アブシンベルに宿泊するツアーでは、神殿に映像を映しながらストーリーが流れる「音と光のショー」が楽しめます!昼間の観光とは一味違ったライトアップされた神殿も格別です!

アブシンベル神殿の音と光のショー(著者撮影/2019年5月)

翌朝は朝日鑑賞へご案内します!朝日が昇り、光に照らされる大神殿前の像が美しいです。

朝日に染まるアブシンベル大神殿(著者撮影/2019年5月)

アブシンベル大神殿内部

★カルナック神殿

134本の柱が並ぶ大列柱室や空高く建てられたオベリスクなど見ごたえたっぷりのカルナック神殿。
カルナック神殿はアモン神(空気の神)をまつった神殿で、東西540m、南北600mの周壁で囲まれた壮大な神殿で、世界最大の神殿建造物といわれています。

©Google map

カルナック神殿(著者撮影/2019年4月)

ユネスコを動かした!巨大遺跡の引っ越し大作戦

皆様はアブ・シンベル神殿がダムに沈んでしまう運命にあったことをご存知でしょうか。
今、私たちがアブ・シンベル神殿に訪れることができるのはユネスコと神殿を守ろうと奮闘した世界中の人たちがいたおかげなんです。

1952年、エジプト政府はナイル川の氾濫を防止するとともに安定した電力を供給するためにアスワン・ハイ・ダムの建設を計画していました。
計画が実行に移されると「アブ・シンベル神殿」や「フィラエのイシス神殿」などのヌビア地方の遺跡群がダム湖に水没してしまうため、当時のエジプト大統領より救済を依頼されたユネスコは、経済開発と遺産保護の両立という難題に取り組むべく立ち上がりました。
 遺跡救済キャンペーンは1960年に開始され、1964年には本格的な募金活動が始まり、当時の最新技術を駆使した工事は1968年に完了しました。

なんと、アブ・シンベル神殿を小さなブロックに切断、解体し、西へ210m、元あった場所から64m高い場所に移築してダムに沈むことを回避したのです!

このユネスコの遺跡救済キャンペーンでは、アブ・シンベル神殿が救済されただけでなく、一国の遺産の救済に約50ヵ国もの国々や民間団体、個人が協力したことで、「人類共通の遺産」という理念が生まれ、それが後の世界遺産条約の理念にもつながっていきました。アブ・シンベル神殿からフィラエまでのヌビア地方にある遺跡群の救済キャンペーンは、世界遺産条約の理念に大きな影響を与えたのです。

年に2回だけ「光の奇跡」

アブ・シンベル神殿に入って奥に進むと、至聖所(しせいじょ)に行きつきます。そこには4体の像が置かれている。4体の像は右からラー・ホルアクティ神、神となったラムセス2世、国家神アメン・ラー、商業の神であるプタハ神と並んでいる。

太陽の光がこの至聖所に入ってくるのは年にたった2回。
一般的にはラムセス2世の誕生日と彼が王に即位した日と言われていたが、最近は別の説もあるようです。
年に2回、太陽が至聖所を照らす時、最初に光を浴びるのはラムセス2世の像ということがわかり、ラムセス2世自身が神格化するための神殿であり、光の奇跡はラムセス2世が神になった日に計算されて作られたのではないかという説もある。
ちなみに太陽は徐々に移動していくが、ラムセス2世の像には最初から最後まで朝日の光が当たるようになっており、神殿自体がラムセス2世が神になるプロセスを表していたのではないかという考え方もあるようです。

ちなみに一番左側にあるプタハ神には光が当たらないんです!
これは当時プタハ神は闇の神または冥界の神と言われており、あえて光が当たらないように設計されたのではないかと言われています。

ちょっぴり小話&おわりに

最後にちょっぴり小話

古代エジプトにパスポートのようなものが存在していたという記録はないものの、
古代のミイラにパスポートが発行されたことがあるようです!

1974年、古代エジプトのファラオ(王)、ラムセス2世(紀元前1213年に死亡)のミイラが復元のためパリに運ばれる際、エジプト政府はパスポートを発行。
中にはちゃんとファラオの写真(ミイラの写真)が貼られ、
職業欄には「(故)王」と記載されたそうです!

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おわりに

「謎多きエジプト大解剖」第4回目はいかがでしたでしょうか。ラムセス2世が築いた神秘的なアブ・シンベル神殿やカルナック神殿は海外旅行が復活した際は実際に現地を訪れ、ご自身の目でご覧いただきたいと思います。

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