「花カレンダー2021」、3月の2回目です。今回は春の花々が咲き誇る中国・揚州の風景をお届けします。

はじめに

皆様 こんにちは! クラブツーリズムの海外担当です。
『花咲くワールド』というテーマで、その月に見頃を迎える海外のお花や、開催される花フェスティバルなどをご紹介する「花カレンダー2021」をお届けいたします。
当ブログをご覧いただき、「旬」に囲まれるひと時をお過ごしいただければ幸いでございます。どうぞ、お付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。

「煙花三月 楊州に下る」とは?

さて、3月2回目の花風景の舞台は中国の揚州(ようしゅう)です。
まずブログのタイトルにある「煙花(えんか) 三月 揚州 (ようしゅう)に下る」ですが、これは中国唐の時代(日本の奈良時代)の詩人・李白(りはく)が書いた漢詩の一句です。「煙」とは春霞のこと、つまり、「春霞がかかり、花が美しい三月に揚州に下っていく」と言う意味になります。せっかくなので、まず李白のこの漢詩をご紹介いたしましょう。

中国語の全文は以下です
『黄鶴楼送孟浩然之広陵』
故人西辞黄鶴楼、
煙花三月下揚州。
孤帆遠影碧空尽、
惟見長江天際流。

日本語訳はこちら
『黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る』
故人西のかた黄鶴楼を辞し、
煙花三月 揚州に下る。
孤帆(こはん)の遠影 碧空(へきくう)に尽き、
唯だ見る長江の天際(てんさい)に流るるを。

黄鶴楼は三国時代の呉の国が建てた見張り台で中国の四大名楼の一つ。孟浩然(もうこうぜん)は李白の詩人友達。長江は中国の西から東を流れる一番長い川。
孟浩然が花が咲く三月に揚州へ旅行に行く際、李白は黄鶴楼で彼を見送りました。段々と遠くなっていく孟浩然の乗る船も空に飲み込まれ、長江が天の果てまで流れていくだけが見えると、李白は、三月の美しい揚州の旅行ができる孟浩然を羨ましく思ってこの詩を書いたと言われています。
さて、李白も一生各地を旅する詩人として知られていますね。しかし、揚州の一番美しい季節に旅行に行く孟浩然を「旅行通」の李白までも羨ましくなったくらい、相当揚州の3月は綺麗だと想像してしまいますね。前置きが長くなりましたが、ここからは、漢詩の詩聖と称される李白も行きたがる3月の揚州をご案内します。
※詩に書いた3月は中国の旧暦で現在の4月に当たりますが、地球温暖化の影響で開花が早まっており、三月中旬から揚州はもう花の見ごろを迎えます

揚州(弊社スタッフ3月撮影 イメージ)

揚州ってどんな町?

揚州は上海の北約250km、長江の北側の岸に位置する町で、人口は約450万、約2500年の歴史を誇る古都でもあります。季節は日本の関東圏に近い、年平均気温が約15度で冬でも温かくて過ごしやすい。揚州の町を二本の河が流れており、一本は南の杭州(こうしゅう)から北の北京へと人工で開いた世界遺産の京杭大運河、もう一本は東西を流れる中国二番目に長い大河の長江です。この二本の河がここ揚州で交わっています。

長江デルタ地域マップ(イメージ)

豪商の邸宅の一部だった個園。名産の太湖石で作られた立派な築山(弊社スタッフ撮影 イメージ)

揚州は肥沃な長江デルタ流域に位置しているため、古くからお茶や水稲などの農業とシルク産業が発達していました。また、海に近いという好条件も活かし、唐の時代(日本の奈良時代)から揚州は既に長江と大運河の重要な港町となり、「海のシルクロード」の最初の出発点でした。そして、明の時代(日本の室町時代)になると、塩の集積地として町は飛躍的に発展を遂げ多くの富豪が誕生しました。更に、清の康熙帝と乾隆帝は揚州が大好きで数度も訪れたことがありました。皇帝の君臨に備えて揚州の豪商たちが争って贅を尽くした庭園を造りました。今の揚州には美しい庭園や大富豪の邸宅が多く残っており、観光名所ともなっています。

何園(中国国家観光局・大阪 イメージ)

個園(中国国家観光局・大阪 イメージ)

清の乾隆帝もこよなく愛した名所・痩西湖(せきせいこ)

観光名所の多い揚州ですが、その中、「痩西湖」(せきせいこ)は代表的な観光地です。痩西湖の景色は世界遺産に登録された杭州(こうしゅう)の西湖に劣らず、湖の形は細長いため、「痩せた西湖」と言う意味で名前が付けられたそうです。痩西湖は一周の長さが約4.3km、東京ドーム28個分の約134万㎡の広さもあります。湖畔や中洲に建てられ、優雅な弧線を描き出す中国伝統様式の橋、亭、楼閣が湖と一緒に、繊細で絵のように美しい江南の美景を創り出しています。また、「借景」(しゃっけい※)という造園手法が随所使われているので、建物と湖、木々がお互いの背景にもなっており、数歩を歩けばまた違う景色が目の前に現れてきます。
※借景:ほかの景色を自分の一部であるかのように利用すること。
風光明媚な痩西湖はどの季節に行っても楽しめますが、せっかくなら私のおススメはやはり春です。毎年3月中旬から4月まで、眩い新緑に染められた湖畔の垂れ柳の枝が春風に合わせてしなやかに揺れ踊り、黄色いレンギョウ、ピンクの梅と桃、白いモクレン、濃いピンクや白のツツジ、そして桜、色とりどりの花々も咲き競います。

早朝の痩西湖 長堤の先に立つ亭。四面にある丸い門から、丸い縁の景色写真が撮れます(イメージ)

中国・揚州の痩西湖(イメージ) 五亭橋は痩西湖のシンボル

痩西湖・石造りの虹橋(弊社スタッフ3月撮影 イメージ)

続きまして、痩西湖のベストな観光方法をご紹介します。
おススメ① 下記写真に写っている船に乗って遊覧。清の乾隆帝が乗っていた船を模して造られた遊覧船なので、皇帝気分で痩西湖の景色を歩かず楽しめます。
おススメ② 湖畔と堤防をぶらぶら散策。痩西湖の湖畔に垂れ柳の木が多く植えられているので、風に吹かれ軽やかに揺れる柳の枝越しで見る風景はまさに絵に出るような風景です。お花を間近に観賞できるのも散策ならではですね。

痩西湖の遊覧船 屋根付き(弊社スタッフ3月撮影 イメージ)

長堤が湖の奥まで伸びているため、その先に建てられた亭から五亭橋と白塔などが見られます。(弊社スタッフ3月撮影 イメージ)

日中友好の先駆者~鑑真和上と大明寺

実は揚州は日本との関係も深いです。揚州は、かつて遣唐使が中国に上陸/帰国する際に滞在していた町の一つで、奈良にある世界遺産唐招提寺で眠る鑑真和上の故郷でもあります。鑑真和上が日本へ布教を志して渡海しようと試みたが、5回失敗して6回目にやっと成功しました。日本に着いた鑑真和上が聖武天皇の命をうけ、奈良の東大寺をはじめ、仏教の戒律を授けていました。渡海まで鑑真和上がここ大明寺の住職を務めていました。そして、今大明寺に鎮座する鑑真和上像は奈良の唐招提寺の座像を模して造られたものです。

鑑真和上ゆかりの大明寺(イメージ)

今の大明寺には、仏教を教える鑑真学院が設置されており、日本から贈られてきた桜も多く植えております。ちなみに、日中友好平和条約締結40周年の記念企画として、2018年の3月に、クラブツーリズムはイベントツアーを実施し、参加されたお客様がここ大明寺で「世界平和」を祈願し、記念に桜も植樹しました。

揚州で食べたいもの

さて、江南の豊な物産を北京へ運送するため、隋の時代に人工で大運河が開かれました。大運河の重要な港として栄えた揚州は、北方の北京料理や魯菜(山東料理)、南の上海料理の良いところを取って独自の「淮揚(わいよう)料理」を創り出しました。季節の野菜、河や海の幸など、長江デルタの豊富な食材のそれぞれの個性を活かした辛すぎず甘すぎない、脂っこくないマイルドな味付け、繊細な盛り付けが「淮揚料理」特徴です。また、揚州はお米だけでなく麺料理の種類も豊富です。揚州の代表料理として、柔らかいジューシーな「獅子頭」(肉団子)や、金華ハムにエビなど色も味も申し分無しの「楊州炒飯」(チャーハン)が有名です。この地方の紹興酒と併せてぜひ味わっていただきたいです。

獅子頭(肉団子)(イメージ)

見た目とは違いさっぱりした麺料理(イメージ)

揚州周辺の花の名所

さて、3月の揚州は李白の詩に詠われるくらい美しいですが、実は揚州周辺の町もこの季節に訪れるのがおススメです。揚州から高速道路で約2時間の無錫は桜の観賞名所として人気が高いです。そして、無錫から1時間の蘇州は「東方のベニス」とマルコボーロに呼ばれており、世界遺産の庭園も多く、その中の留園(りゅうえん)のツツジがとてもきれいです。せっかくの旅なら、ぜひ一緒に観ていただきたいです。
また、長江を挟んで、揚州の向かい側に位置する鎮江(ちんこう)という町は黒酢の名産地として知られている他、三国志ゆかりの町でもあります。劉備玄徳と孫権の妹が見合いした場所の甘露寺(かんろじ)が残る北固山(ほっこざん)公園では、長江を眺められるほか、遣唐使の阿倍仲麻呂の詩碑も残っております。そして『白蛇伝』に登場する金山もこの町にあります。勿論、揚州近くにあるこじんまりながら美しい江南の水郷古鎮もぜひ行ってみたいですね。花と新緑に囲まれて、美味しい江南の銘茶でもゆっくり味わえればきっと忘れられない旅になると思います。

無錫の桜(イメージ)

無錫の桜(イメージ)

無錫の桜(イメージ)

世界遺産・蘇州の留園(3月撮影 イメージ)

世界遺産・蘇州の留園(3月撮影 イメージ)

世界遺産・蘇州の留園(3月撮影 イメージ)

鎮江・北固山公園 康熙帝の真筆(イメージ)

鎮江・三国志ゆかりの古津渡(イメージ)

北固山公園・阿倍仲麻呂詩碑(イメージ)

江南の水郷古鎮(弊社スタッフ3月撮影 イメージ)

江南の水郷古鎮(弊社スタッフ3月撮影 イメージ)

終わりに

いかがでしたか。今回のブログは一つのお花に焦点を当てるのではなく、百花繚乱の揚州をご紹介いたしました。昨年、上海~揚州間の高速鉄道(中国版新幹線)も開通しましたので、上海虹橋駅から僅か1時間ほどで揚州に到着できます。既に上海・蘇州・無錫という定番の江南ツアーに行ったことのある方は、ぜひ次回は揚州、そして3月の揚州へ行ってみたらいかがでしょうか。
では、次回はカナダの花風景をお届けします。お楽しみに。

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