日本人がこよなく愛するリゾート・ハワイ。知っているようで知らないハワイの横顔や歴史に迫る本シリーズ。第1回目は、童謡や逸話でその名を知る人も多い「カメハメハ大王」と「ハワイ王国」に焦点を当ててご紹介いたします。
そこには以前、独立した国家「ハワイ王国」がありました。島々を統一し王国を樹立したカメハメハ。今では世界有数のリゾート・ハワイの王様ということでのんびりした印象が強いかもしれませんが、実際にはどうだったのか? 今日は古のハワイを旅していきましょう。(2021年12月23日更新)

エアポートから外に出た瞬間感じる南国の夏の香り、強烈な日差しと吹き抜けるさわやかな風。
「あぁ、ハワイに行きたい!」そんな気持ちが高まる今日この頃、皆様いかがお過ごしですか?

(撮影:YUKO)

夏が近づくと「旅に出たい!」そんな旅心がくすぐられて、そろそろ我慢も限界!そんな皆様に少しでも旅気分をお届けするのが「」です。
明けない夜はありません。ハワイの地元有力紙 Star-Advertiser によると、2021年6月26日現在、ハワイでは人口の57%の人が2回のワクチン接種を終えているとのことです。

きっともうすぐ、もうすぐそこに夜明けがあると思ってイメージトラベリングをして頑張りましょう!

ハワイブログの担当はハワイ大学卒業生・ハワイ大好き添乗員・YUKOです。
(イラストが美化されすぎだろ!というツッコミは華麗にスルーさせていただきます。)

今回は、皆様を太平洋のど真ん中にぽっかりと浮かぶ南の楽園ハワイの旅に誘います。

Traveling without moving!

この旅にはパスポートも、ESTAも、重たいスーツケースも、PCR検査陰性証明書も必要ありません。必要なのは皆様の想像力だけ。それでは出発しましょう!

日本人のハワイ愛が止まらない

Eggs 'n ThingsCafe KailaIsland Vintage CoffeeMorning Glass Coffee、果てはロコに人気のモダンベトナムレストランThe PIG & The LADYまでもが2019年末にハワイから日本上陸。
日本人のハワイ愛が止まりません!

コロナ前の2019年、ハワイを訪れた日本からの観光客の数は約150万人(HTA:ハワイ州政府観光局発表)。1日に換算すると約4,000人もの人が毎日、日本からハワイに上陸したことになります。

でもでも、どうしてこんなにハワイは日本人に愛されているのでしょう?ハワイ滞在経験のある私が分析すると、日本人が憧れる「理想の夏がそこにある」。これに尽きるんじゃないかと思います。

(撮影:YUKO)

日本の夏を悩ませるのはアジア特有の湿気を含んだ重たい夏の空気、サウナのような蒸し暑さと、耳元でブーンと嫌なモスキート音、安眠を妨げる恐怖の蚊の攻撃!

ところが、ハワイ、とりわけワイキキにはそれがない!

年間を通じて吹き付ける北東の風トレードウインド(貿易風)、なつかしい地理の時間で習ったあの風こそが、蒸し暑さや、蚊に刺されてかゆーい夏からハワイを守っているのです。
(蚊は強い風やドライな空気が大嫌い。4年半の滞在中、一度も蚊に刺されなかったのが私の自慢です!)

そんな南の楽園・ハワイ。日本人がこよなく愛するこのハワイが、実は日本とも関係の深い王国の島だったことは案外知らない方も多いのではないでしょうか?

戦国三英傑!カメハメハ大王

そこでハワイの歴史旅、リゾート地・ハワイと古のハワイ王国を結びつける今日のキーワードは「カメハメハ大王」です。

「うん?聞いたことあるぞ!」という方。そうです!子供の頃に誰でも一度は聞いたことがあろう、おなじみのあの童謡は、まさにハワイのカメハメハ大王がモデルなんです。

カメハメハ大王って南の島の王様でしょ?歌のイメージ通りの~んびりした感じの王様じゃないの?

いえいえ、実はカメハメハ大王は歌のイメージとは違って戦国武将のような王様だったんですよ。

鳴かぬなら殺してしまえホトトギス

南蛮渡来の鉄砲を戦にいち早く取り込んだ織田信長のように、キャプテン・クックの来訪以来、頻繁に来るようになった西欧人の近代兵器、大砲や帆船を戦いに取り入れて相手を圧倒!

鳴かぬなら鳴かせてみせよう ホトトギス

天下統一を果たした豊臣秀吉のようにハワイの島々をそれぞれ治めていたアリイ(Aliʻi:貴族)を倒してハワイを統一!

鳴かぬなら鳴くまでまとう ホトトギス

長く続いた戦乱の世を終わらせて江戸幕府を開いた徳川家康のように、ハワイ王国を建国し、法の整備や各島には知事を置くなどの統治システムを確立!

つまりカメハメハ大王は日本の戦国時代の三英傑を足して3で割ったような有能な武将だったんですね。

ハワイ統一を予言!カメハメハ誕生

カメハメハが生まれたのはハワイ諸島の中でもひときわ大きな島(面積は東京都の約5倍)、地元の人々からBig Islandの愛称で呼ばれるハワイ島

1750年頃と言われていますが、正確なことはわかっていません。この頃のハワイの人々は他のポリネシアの地域と同じように文字を持っていなかったため、口伝やペトログリフと呼ばれる古代象形文字が歴史の唯一の手掛かり。

(撮影:YUKO)

そのペトログリフは度重なる火山の溶岩によって、口伝は後に起こるハワイの歴史の流れの中で多くが失われてしまいました。

ただ、カメハメハ大王が生まれる前夜、ココイキという鳥のように羽が生えた輝く星が現れたのを見たカフナ(古代ハワイの司祭)が、「すべてのライバルを打ち負かし、すべての島を支配する偉大なリーダーが生まれようとしている」と告げたと伝えられています。

これが1758年に観測されたハレー彗星ではないかと推測され、カメハメハはこの年に誕生したという説が有力視されているんです。

でも、この話どこかで聞いたような・・・

そうです!キリストが生まれた時に輝いたベツレヘムの星も、実はハレー彗星だったのではないかと言われていますね。ハレー彗星は75.32年周期で地球に接近する氷や塵などでできた太陽系小天体で、箒のように尾を引く姿が幻想的な星。

昔の人々にとっては神からの啓示のように思えたんでしょうね。

孤独の人 カ・メハメハ

ところで、将来ライバルを打ち負かし、ハワイ王国を統一する偉大な王になると予言されたカメハメハを、現王アラパイ(Alapa‘i)が放っておくはずはありません。アラパイはカメハメハの母親ケクアポイワ(Keku'iapoiwa)の叔父にあたりますが、生まれてくる子供を殺すように兵士に命じます。

(撮影:YUKO)

母親のケクアポイワは捕らえられてしまいますが、当時コハラの首長であったネオーレ(Nae'ole)が監視の目を盗み、家に穴をあけ、生まれ落ちたカメハメハをタパ(樹皮から作られた不織布)に包んで救い出し、カメハメハが五歳になるまでコハラの山々を転々としながら秘密裏に育てたんです。

実は、カメハメハという名前は、この出来事に由来します。

Ka は ハワイ語で 

mehameha は 「孤独」もしくは「隔離された」 という単語で 

つまり「カ・メハメハ」はその楽しそうな語感とは裏腹に、「孤独の人」という意味だったんですね。 

どうですか?南の島ののんびりした王様とは大分イメージが違ってきたのではないでしょうか?

ちなみにカメハメハの幼少名は「硬い殼の蟹」(Hard-Shelled Crab)の意味を持つパイエア(Paiea)といいます。強い男になることをイメージされていたようです。

カメハメハ豪傑伝説 ナハストーンをひっくり返した男

強いといえばカメハメハの豪傑な伝説がもうひとつ!

ハワイ島のツアーに行くと、日系人が多く住むヒロの町を訪れることが多いのですが、この町の公共図書館前にはナハストーンと呼ばれる火山岩の大きな石があります。

ナハは、カウアイ島のアリィ(貴族)の血統で、この石はナハの正しい血統を調べるためにカウアイ島のワイアレア山からダブルカヌーで運ばれた3.5トンもの平たい石。ナハストーンを動かせたものはハワイを統一できるという言い伝えがあり、14歳の青年に成長したカメハメハが挑戦し、見事ひっくり返したという逸話が残っているんです。

ギネスの重量挙げの世界記録が520Kgだから、7倍の重さのものを一人でひっくり返したって凄いよね!

ちなみにカメハメハは、サモア諸島からハワイ島に渡ってきたピリ族の血統です。

神をも味方に付ける強運の持ち主・カメハメハ

カメハメハは強いだけでなく、もの凄い強運の持ち主でもあったようです。

カメハメハが20歳になった頃にあの有名なジェームズ・クック船長が、三度目の航海で1779年ハワイ島を訪れます。それ以来西洋諸国との接触が盛んになり、カメハメハは西洋の武器をいち早く取り入れて優位に戦うのですが、相手の軍が突然の火山の噴火に飲み込まれたり強敵のライバル王が戦いの直前に亡くなったりと、まさに天がカメハメハをハワイ統一に導いているような出来事が起こります。

始まりは、当時のハワイ島の王、カラニオプウ(Kalaniʻōpuʻu)が1782年に亡くなったこと。

生前の遺言で、息子のキワラオ(Kīwalaʻō)に王位を、甥のカメハメハを闘いの神クーカーイリモク(Kūkāʻilimoku)の守護者に指名していました。カラニオプウはとてもカメハメハを可愛がっていたそうです。

キワラオはカメハメハが重要な宗教的地位にいることが面白くありません。緊張が高まる中、ついにモクオハイの戦いで二人は衝突。

カメハメハが勝利し、まずはコナ・コハラ・ハマクアを手に入れます。

今やハワイ有数の高級リゾート地となったコハラコースト (撮影:YUKO)

ハマクアにあるハワイ諸島 最高峰マウナケアの山頂 雲海に沈む夕日と星空を楽しむツアーが人気
(撮影:YUKO)

ただハワイ島には、他にモクオハイの戦いで負けてカウに逃げたキワラオの異母兄弟ケオウア(Keōua)と、ヒロに逃げたキワラオの叔父のケオウマウヒリ(Keawemauhili)がいます。

ところが、ケオウマウヒリはカメハメハに寝返ったとの疑惑を持たれ、カメハメハとの闘いの最中にも係わらず、ケオウアに襲われ殺されてしまいます。

残ったケオウアも、キラウエアの突然の噴火で自身の軍の三分の二が溶岩に飲み込まれるという痛手を負った上、闘いの神クー(クーカーイリモク)を祭ったプウコホラ・ヘイアウで行われた和平交渉の場でカメハメハに騙され、クーの生贄として捧げられてしまいます。

キラウエアの溶岩の上に、今でも残されている幾つもの「はだしの足跡(1790Footprints)」は、火山に飲み込まれたケオウアの兵士たちのものだと言われています。

この出来事で、カメハメハは気性の激しい火山の女神 ペレさえも味方につけたと噂になりました。

ちなみに古代ハワイの宗教・アウマクアも日本と同じ自然崇拝。八百万の神を持つ日本に対して、ハワイでは約4万もの神や精霊を崇拝しています。

ツアーで訪れるプナルウ黒砂海岸にいるHONU(ハワイアオウミガメ)も幸運をもたらす守護精霊の一つです

(撮影:YUKO)

その中で4大神と呼ばれるのはカーネ、カナロア、クー、ロノというポリネシアンの神々。クーはカメハメハが守護者となった闘いの神。

ロノは豊穣の神で、マカヒキと呼ばれる白い布でロノの神を祭る時期に、白い帆をはためかせてやってきたキャプテン・クックはロノの神と間違えられ、手厚くもてなされますが、嵐に合ってハワイに戻ってきた彼らは神でないことがバレてしまい、ハワイの人々との諍いにより殺されてしまうんです。

世界史にも出てくるあの有名なキャプテン・クックの最期がハワイ島だとは知らなかった

シドニー・ダーリングハーバーに浮かぶキャプテンクックのエンデバー号のレプリカ

ハワイへの航海時クックが乗っていたのはレゾリューション号です (撮影:YUKO)

ハワイ島のケアラケクア湾がその地。クックが亡くなったと思われる地に記念碑が立てられていますが、船かカヤック、もしくは往復約2時間のトレイルをひたすら歩くなどアクセスはなかなか困難な場所です。

さて、約10年もの戦いの末、ようやくハワイ島を支配したカメハメハ。

次の目標は、ハワイ諸島統一ですが、カメハメハ最大のライバルがその行く手を阻みます。その最大のライバルとは、なんとカメハメハの本当の父親だったとも言われている人物なんです。

おぉ!なんか韓流ドラマのような展開!

次回「南の楽園ハワイの戦国武将!?カメハメハ大王とハワイ王国・後編」では、ライバルとの闘いとカメハメハ大王像の秘密に迫ります。お楽しみに!

ところで今回お話したカメハメハは、カメハメハ1世のこと。実はカメハメハは5世までいるんですね。

じゃあ、童謡の歌詞にある「♪南の島の大王はこどもの名前もハメハメハ」っていうのと同じなんだ。

生まれた時の名前はそれぞれ違うのですが、王位を継承した時にカメハメハを名乗っています。ヨーロッパの王家にも多いですよね。ルイは18世までいるそうですから。

ちなみにこの曲の作詞家の方は、もう一つハワイに関係の深い曲を作詞されているんです。

それがこれ!

(撮影:YUKO)

この大きな木の映像とともにおなじみのCMソングです。クラブツーリズムでも多くのツアーでこのモンキーポッドの樹があるモアナルアガーデンを訪れます。

それでは、次回後編でお会いしましょう!ALOHA!

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