ザルツブルク生まれの音楽家といえばすぐにモーツァルトが思い浮かびますが、もう一人現代の音楽史上にその名を刻んだ音楽家がいます。指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンです。
本記事では、偉大な指揮者カラヤンを輩出し、"音楽の街"としても人気なザルツブルクについてご紹介いたします。

指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン

1908年、病院長の次男としてザルツブルクで生まれたカラヤンは、1929年、現在もザルツブルク音楽祭の主要会場の1つになっているモーツァルテウム大ホールで指揮者としてデビューを飾り、偉大な指揮者への道を歩み始めました。
カラヤンがベルリン・フィルを初めて指揮したのは、オーストリアがナチス・ドイツに併合された1938年で、反ナチやユダヤ系の音楽家たちが活動できなくなるような多難の時期でした。大戦中も開催されていたザルツブルク音楽祭は、街が空爆で破壊されていたにもかかわらず、終戦直後の1945年も開催されましたが、カラヤンは1948年にその音楽祭でのデビューを果たし、指揮者としての地位と名声を確実なものにしていきます。
そしてついに1955年にはベルリン・フィルの首席指揮者、1957年にはザルツブルク音楽祭の芸術監督のポストに就き、1989年に亡くなるまでザルツブルクに多大な功績を残しました。

ザルツブルク近郊アニフにあるカラヤンの墓所

カラヤンの生家跡銘板

カラヤンが指揮者デビューしたモーツァルテウム大ホール

もう一つの国際音楽祭を創始

1882年創始されたベルリン・フィルは、ウィーン・フィルやドレスデン・シュターツカペレなどのように宮廷歌劇場管弦楽団が前身ではなく、オペラを演奏するオーケストラではありません。
カラヤンは、ベルリン・フィルやザルツブルク音楽祭だけでなく、ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座などでも音楽監督を務め、音楽界の「帝王」と呼ばれて君臨していました。
そんなカラヤンでも、ザルツブルク音楽祭でホスト役としてオペラの演奏を担当しているウィーン・フィルを差し置いて、ベルリン・フィルにオペラを演奏させることはできなかったのです。
そこでオペラの演奏機会を与えるために、1967年、ザルツブルクでベルリン・フィルのための新しい音楽祭「ザルツブルク・イースター音楽祭」を創始しました。
この音楽祭はイースターの時期に、10日間の日程で開催されます。「オペラ1回、演奏会2回、合唱付演奏会1回」が4日間の連続演奏会となっており、2日間あいだを取ります。それを二度繰り返し、全8公演の演奏をベルリン・フィルが担当します。

カラヤンの時代に建てられた祝祭大劇場

祝祭大劇場内部

イースター音楽祭の危機

1989年、イースター音楽祭に大きな影響力のあったカラヤンが亡くなったことで、音楽祭の継続が危ぶまれました。
実際1990年には、ベルリン・フィルに代わって、ゲヴァントハウス管弦楽団とウィーン・フィルが招聘され、前者はオペラ公演「フィデリオ」と合唱付演奏会「マタイ受難曲」を、後者は演奏会2プログラムを担当しました。
1991年に再びベルリン・フィルは復帰しましたが、芸術監督は不在のままで、ハイティンクとバレンボイムが指揮しています。
そして1992年1993年はショルティが芸術監督を務め、オペラ公演と演奏会1プログラムを、アバドが合唱付と演奏会1プログラムを指揮しました。
カラヤンの後継者としてベルリン・フィルの首席指揮者になったアバドが、1994年にようやく音楽祭の芸術監督を兼務することになり、オペラ公演を継続して指揮することになりました。
そして2003年からはアバドの後任ラトルが、その任に就きました。

二度の大きな転機

ベルリン・フィルは長年、音楽祭主催側にオペラを演奏する機会を増やして欲しいという希望を伝えていましたが、オペラの上演には何より費用と時間がかかることもあり、最終的に受け入れを拒まれました。そこで楽団員の総意で、より多くのオペラ演奏機会と新たな可能性を求めて新天地バーデン=バーデンへ移ることを決断しました。
2012年、ベルリン・フィルのザルツブルク・イースター音楽祭は、45年の歴史に幕を閉じたのです。
2013年から音楽祭が開催されたバーデン=バーデンでは、ベルリン・フィルの希望通りにオペラを演奏する機会が倍に増えましたが、やはりオペラには費用と時間がかかるためでしょう、次第に上演回数が減るようになったこともあり、結局2026年から元のザルツブルクに戻ることになりました。偉大なカラヤンの遺産を再びザルツブルクで継ぐことになったのです。

バーデン=バーデン祝祭劇場

祝祭劇場内部

※画像は全て山本直幸講師提供

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音楽鑑賞の旅「アンコール」は、コロナ後も継続してバーデン=バーデン・イースター音楽祭ツアーを催行しました。
バーデン=バーデンでは2025年からベルリン・フィルに代わって、日本でも大きな注目を浴びているクラウス・マケラ率いるコンセルトヘボウ管弦楽団がホスト役を務めることになりました。
来年のツアーは鑑賞可能なプログラムがとても魅力的なのを考慮して、敢えて新旧2つのイースター音楽祭を訪れ、4夜連続でコンセルトヘボウ管弦楽団とベルリン・フィルの競演をお楽しみいただく内容にしています。
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同行講師のご紹介

講師:山本 直幸氏

ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿

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