ザルツブルクでは、1月にモーツァルトの生誕日に合わせた「モーツァルト週間」、3月または4月に「イースター音楽祭」、5月または6月に「聖霊降臨祭音楽祭」、そして夏に「ザルツブルク音楽祭」と言われる世界最大規模・最高水準の音楽祭が開催されています。
そんな「音楽の都・ザルツブルク」の音楽祭史と併せて、注目のオペラ公演詳細などをご紹介いたします♪

音楽祭史

▷激動の時代に生まれたザルツブルク音楽祭

ザルツブルク音楽祭は、1917年演出家マックス・ラインハルトの提唱で準備委員会であるザルツブルク祝祭劇場協会が発足し、作曲家リヒャルト・シュトラウス、指揮者フランツ・シャルク、劇作家フーゴー・フォン・ホーフマンスタール、舞台装置家アルフレート・ロラー等が芸術顧問になり、1920年8月22日大聖堂前広場でホーフマンスタール作の「イェーダーマン」(ラインハルト演出)が初演されて開幕しました。

1917年第一次世界大戦中の混乱期
1918年戦争終結と同時に、「ハプスブルク帝国」が崩壊し、
経済的にも疲弊した、極めて困難な状況下にあった。
ラインハルトは、このような激動の時期だからこそ、
困難を乗り越えるために精神的な基盤となる芸術祭が必要であると主張し、
そのための最適な場所としてザルツブルクを選んだ。
1921年音楽の演目が追加され、ウィーン国立歌劇場と
モーツァルテウムの管弦楽団による演奏会が行われた。
1922年オペラ公演も加わり、モーツァルトのダ・ポンテ三部作と
「後宮からの誘拐」が上演された(演奏はウィーン・フィルが担当)。
1925年祝祭劇場が落成(現在のモーツァルト劇場)、
ウィーン・フィルがオペラだけでなく、演奏会も催すようになった。
1927年開催期間が4週間になり、大指揮者トスカニーニの下で最初の黄金時代を迎えた。
1938年オーストリアはナチス・ドイツに併合され、
反ナチ(トスカニーニ)やユダヤ系(ラインハルトやワルター)の芸術家は一掃されてしまい、
代わってフルトヴェングラーやベームなどが加わり音楽祭を支えた。
1945年8月12日~9月1日終戦直後の混乱期でさえ、音楽祭は開催された。
1948年以降音楽祭デビューを果たしカラヤンが、1957年に芸術監督に就任し、
1960年には祝祭大劇場の完成により再び黄金時代を迎えることになる。

モーツァルト劇場内部

祝祭劇場メイン3会場前

祝祭大劇場内部

▷ベルリン・フィル

ベルリン・フィルは1957年に初めて音楽祭に招聘されましたが、ウィーン・フィルがオペラの演奏で忙しいこともあり、世界中から著名オーケストラを招聘するようになり、国際化が一層進みました。
コロナ前までは、約40日間の期間中に、演劇・オペラ・コンサートなど15以上の会場で約200公演、25~28万人の観客を動員し、海外からの訪問者は約80ヶ国、日本などヨーロッパ以外からは40ヶ国を数え、国際音楽祭と呼ぶに相応しい世界最大規模、そしてウィーン・フィルがホスト役を務めることで世界最高水準の音楽祭になりました。
ちなみに音楽祭常連のベルリン・フィルが8月末に演奏会を行うようになったのは、1973年以降で、さらに8月末にベルリン・フィルとウィーン・フィルの競演が実現するようになったのは、ベルリン・フィルをカラヤンが、ウィーン・フィルをバーンスタインが指揮した1975年以降です。

▷不屈の精神が支えた2020年ザルツブルク音楽祭

2020年は音楽祭創始100年のメモリアル・イヤーを盛大に祝うつもりでしたが、コロナ禍で開催が危ぶまれる事態に陥りました。春夏のほとんどすべての主要音楽祭が中止を余儀なくされる中、ザルツブルク音楽祭総裁ラブル・シュタドラーは、何が何でも開催すると公言し、開催の可能性を探り続けました。
結局オーストリア政府の新たな規制緩和の決定を受け、規模を縮小しての開催を決断したのです。メモリアル・イヤーに向けて44日間で200以上の公演を予定していましたが、期間を8月1日~30日の30日間に短縮し、会場を16から8に絞り、公演を110まで減らして開催しました。そのうち音楽関連の公演はオペラ2演目12公演、コンサート53公演でした。座席占有率は96%に達しましたが、39ヶ国からの訪問者で観客動員数は例年の1/3以下の76,500人にとどまりました。
しかし明確なガイドラインを定めた厳格なコロナ対策が功を奏して、約2ヶ月間の準備期間中も含め、1,400人の音楽祭従事者の感染者が1名だけだったこと、そして76,500人の訪問者の感染者がゼロだったことは、コロナ禍という危機下でも芸術・文化イベントの開催が可能であることが実証され、ザルツブルク音楽祭史上とても意義のある開催となりました。これもまた不屈の精神によるものと言えるでしょう。

来夏のザルツブルク音楽祭

期間は7月17日~8月30日で、オペラは演奏会形式も含め9作品が取り上げられます。
新演出はビゼーの「カルメン」(テオドール・クルレンツィス指揮)、R.シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」(マンフレート・ホーネック指揮)、メシアンの「アッシジの聖フランチェスコ」(マキシム・パスカル指揮)、再演はコロナ禍に上演され高い評価を得たモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」(ヨアナ・マルヴィッツ指揮)、聖霊降臨祭音楽祭で上演されたロッシーニの「ランスへの旅」(チェチーリア・バルトリ主演)、そして演奏会形式はデュサパンの「パッション」(フランク・オルー指揮)、マスネーの「ウエルテル」(アラン・アルティノグリュ指揮)、モーツァルトの「ルーチョ・シッラ」(アダム・フィッシャー指揮)、ヘンツェの「ホンブルクの公子」(インゴ・メッツマッハー指揮)が上演されます。ホスト役のウィーン・フィルは、「ナクソス島のアリアドネ」、「アッシジの聖フランチェスコ」、「コジ・ファン・トゥッテ」の演奏を担当します。

ウィーン・フィル演奏会は、グスターボ・ドゥダメル(マーラーの交響曲第2番)、トゥガン・ソヒエフ(プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」)、リッカルド・ムーティ(ヴェルディの「レクイエム」)、クリスティアン・ティーレマン(ブラームスの交響曲第1番)、アンドリス・ネルソンス(R.シュトラウスの「ドン・ファン」)の5人の指揮者で、合計11回催されます。客演オーケストラは、ベルリン・フィル(キリル・ペトレンコ指揮)、ユートピア管弦楽団(テオドール・クルレンツィス指挥)、ブダペスト祝祭管弦楽団(イヴァン・フィッシャー指揮)、グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団(フィリップ・ジョルダン指揮)、ピッツバーグ交響楽団(マンフレート・ホーネック指揮)、モーツァルト作品が演奏されることで人気のモーツァルテウム管弦楽団による「モーツァルト・マチネー」は、アンドレーア・マルコン、ロベルト・ゴンサレス=モンハス、ペトル・ポペルカ、ジョヴァンニ・アントニーニが指揮します。そしてリサイタルは、グリゴリー・ソコロフ、エフゲニー・キーシン、アルカーディ・ヴォロドス、アンドラーシュ・シフ、ユジャ・ワン、マルタ・アルゲリッチ+ルノー・カプソンなど豪華な顔ぶれです。

注目のオペラ公演詳細

*ビゼー/歌劇「カルメン」(7月26日初日、8公演) 
指揮:テオドール・クルレンツィス
演出・振付:ガブリエラ・カリーソ 
出演:アスミク・グリゴリアン、クリスティーナ・ムヒタリアン、ジョナサン・テテルマン、ダヴィデ・ルチアーノ
演奏:ユートピア管弦楽団  会場:祝祭大劇場

*R.シュトラウス/歌劇「ナクソス島のアリアドネ」(8月2日初日、6公演)
指揮:マンフレート・ホーネック 演出:エルザン・モンターク 
出演:ケイト・リンゼー、エリーナ・ガランチャ、ジーイー・ダイ、エリック・カトラー、ヨハンネス・ジルバーシュナイダー、クリストフ・ポール 
演奏:ウィーン・フィル 会場:モーツァルト劇場

*モーツァルト/歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」(8月6日初日、6公演)
指揮:ヨアナ・マルヴィッツ 演出:クリストフ・ロイ 
出演:エルザ・ドライジグ。ヴィクトリア・カルカチェヴァ、レア・デサンドレ、アンドレ・シュエン、ボグダン・ヴォルコフ、ヨハネス・マルティン・クレンツレ
演奏:ウィーン・フィル 会場:祝祭大劇場

海外音楽鑑賞の旅「アンコール」は、企業維持会員としてチケットを確実に手配してツアーを造成し、「ザルツブルク音楽祭ハイライト」へご案内しています。
ツアーの発売は2月に予定しています。ご期待ください。

※画像は全て山本直幸講師提供

ザルツブルク・イースター音楽祭を訪れるツアーはこちら♪

すでに \催行決定/ し、残席がわずかとなっています。
ご検討中の方は、是非、お早めにお申し込みください。

同行講師のご紹介

講師:山本 直幸氏

ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿。

次回のブログ更新のお知らせ

\音楽の旅情報ブログ、次回の更新日は1月16日(金)を予定しております!/

関連記事のご紹介

<音楽鑑賞の旅>特集もご覧ください♪

お電話でのお問い合わせ

クラブツーリズム株式会社 カルチャ―旅行センター
<東京>TEL:03-4335-6239
【営業時間】月曜~土曜 9:15~17:30 日曜・祝日 お休みとなります

クラブツーリズムから旅に関する最新の情報をお届け!

クラブツーリズムからメールマガジンをお届けしています。
1万件以上あるツアーの中から厳選した、人気のツアーや限定ツアーの情報をご希望の方はメルマガ会員への登録をお願いします。

◎クラブツーリズムのWEB会員でない方はこちらから
◎クラブツーリズムのWEB会員だけれどもメルマガは受信していない方はこちらから
※既にインターネット会員の方も、配信設定を変更することでメールマガジンをお受け取りいただけます。ログイン後、メールマガジンの設定を変更ください。

SNSでも最新の情報をお届けしています。旅に関する最新の情報を共有しましょう!
インスタグラム
facebook
youtube
LINE