ウィーンが「音楽の都」と呼ばれる理由は、現在も楽友協会ホールやウィーン国立歌劇場で、世界最高水準の音楽を楽しめるからだけではありません。

モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ヨハン・シュトラウス、マーラーなど、音楽史に名を刻む多くの作曲家がこの街で活躍し、数々の名曲を生み出してきたからです。

世界遺産にも登録されているウィーンの歴史地区とその周辺には、作曲家たちの記念碑や銅像、かつて暮らした家の跡、名曲が生まれた場所などが数多く点在しています。

音楽鑑賞の旅「アンコール」でウィーン滞在中の常宿としているホテル「グランド」は、こうした音楽ゆかりの地を巡るのに便利なロケーション。コンサートやオペラを楽しむだけでなく、街を歩きながら作曲家たちの足跡をたどることも、ウィーン旅行の大きな魅力です。

今回は、ウィーン市内で訪れたい作曲家ゆかりのスポットをご紹介します。

ウィーンの街を彩る、作曲家6人の銅像

ウィーン散策でぜひ訪れたいのが、街のあちこちに建つ作曲家たちの銅像です。ホテル「グランド」から徒歩圏内には、モーツァルト、ヨハン・シュトラウス、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーの像があり、音楽の都らしい風景を楽しめます。

モーツァルト像|王宮庭園

ホテルからリング通りを国立歌劇場方面へ約10分歩くと、王宮庭園にモーツァルト像があります。

1896年、現在のアルベルティーナ広場で除幕されたこの像は、1945年の空襲で損傷。その後、1953年に修復され、現在の場所に移されました。

像の前には花で彩られたト音記号があり、記念撮影の定番スポットとなっています。

音楽好きなら、ぜひ像の台座にも注目してみてください。正面にはオペラ『ドン・ジョヴァンニ』の2つの場面、裏面には6歳のモーツァルトと父、姉の姿が描かれています。華やかな銅像の写真だけでなく、細部に込められた音楽史の物語も楽しめます。

モーツァルト像

モーツァルト像の台座表面

モーツァルト像の台座裏面

ヨハン・シュトラウス像|市立公園

ホテルからリング通りを国立歌劇場とは反対方向へ約10分。市立公園にあるのが、ワルツ王ヨハン・シュトラウスの黄金の像です。

ヴァイオリンを手に、まるで今にもワルツを奏で始めそうな姿は、ウィーンを代表する風景のひとつ。1921年の除幕式では、ウィーン・フィルによる演奏が行われました。

その後、金箔の損傷などを経て、1991年に修復。「黄金のシュトラウス像」として再び輝きを取り戻しました。像の前は季節の花々で飾られ、訪れる人々を楽しませています。

2026年2月 雪のヨハン・シュトラウス像

シューベルト像とブルックナー像|市立公園

市立公園には、ほかにも音楽史を彩る作曲家の像があります。

ひとつは、1872年に除幕された白い大理石のシューベルト像。もうひとつは、1899年に除幕されたブロンズ製のブルックナー像です。

緑豊かな公園を散策しながら、異なる時代を生きた作曲家たちの姿を見比べてみるのもよいでしょう。

シューベルト像

ブルックナー像

ベートーヴェン像|ベートーヴェン広場

コンツェルトハウスの向かい側にあるベートーヴェン広場には、1880年に除幕された巨大なブロンズ像が立っています。

当初はコンツェルトハウスに背を向けていましたが、1901年に向きが180度変更され、現在の姿になりました。

見どころは、堂々としたベートーヴェンの姿だけではありません。台座には、縛られたプロメテウスや月桂樹を掲げるニケ、そして交響曲第9番を寓意的に表現した9体のプット(幼児の姿をした像)が配されています。

作品の世界観を象徴する彫刻にも、ぜひ注目してみてください。

ベートーヴェン像

ブラームス像|カールス広場

ホテルからリング通りを渡り、楽友協会ホール方面へ約5分歩くと、カールス広場にブラームス像があります。

この大理石像は、ブラームスの75歳の誕生日にあたる1908年5月7日に除幕されました。

ほかの作曲家の像が比較的目立つ場所にあるのに対し、ブラームス像は木陰にひっそりとたたずんでいます。少し見つけにくいかもしれませんが、それもまた散策の楽しみです。

台座には、合唱曲も数多く手がけたブラームスにちなみ、合唱詩のミューズであるテルプシコーレが描かれています。

ブラームス像

街角に残る作曲家たちの記念銘板

ウィーンの音楽散策では、銅像だけでなく、建物の壁に取り付けられた記念銘板にも注目したいところです。

一見すると普通のホテルや大学、劇場であっても、そこには作曲家が滞在した、作品を生み出した、あるいは人生の節目を迎えたという歴史が刻まれています。

ホテル・インペリアルと楽友協会ホール周辺

ホテル「グランド」の斜め前にあるホテル・インペリアルは、現在も著名な音楽家が宿泊するホテルのひとつです。正面入口の右側の壁には、ワーグナーが2度滞在したことを伝える記念銘板があります。

近くの楽友協会ホールは、世界的に知られるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの会場としても有名です。

その向かい側にはブラームス像があり、周辺を歩くだけでもウィーンの豊かな音楽文化を感じられます。

カールス教会とヴィヴァルディの記念銘板

カールス広場の一角にあるカールス教会も、音楽史にゆかりの深い場所です。

1896年10月14日にはブルックナーの葬儀が、1902年2月9日にはマーラーの結婚式が行われました。

教会に隣接するウィーン工科大学の建物には、ヴィヴァルディがウィーンで亡くなり、この地に埋葬されたことを伝える記念銘板があります。現在、ヴィヴァルディの墓所は残っていませんが、かつてこの周辺が墓地だったことを知ると、街の風景が少し違って見えるかもしれません。

また、同じ建物にはヨハン・シュトラウスとヨーゼフ・シュトラウスの兄弟が工科大学で学んだことを伝える銘板もあります。カールス通り側には、ブラームスの最期の住居があったことを示す銘板も残されています。


ブラームス最期の家跡銘板

分離派会館とアン・デア・ウィーン劇場

カールス広場の北側には、ウィーンのユーゲントシュティール建築を代表する美しい地下鉄駅があります。その近くに見える、金色の月桂樹を冠した球形の装飾が印象的な建物が、分離派会館です。

館内では、グスタフ・クリムトがベートーヴェンの交響曲第9番をイメージして制作した壁画『ベートーヴェン・フリーズ』を鑑賞できます。音楽を絵画で表現した作品としても見逃せません。

さらに徒歩約1分の場所には、アン・デア・ウィーン劇場があります。ここには、ベートーヴェンが暮らし、交響曲第3番などを作曲したことや、オペラ『フィデリオ』などが初演されたことを伝える記念銘板があります。

音楽と建築、絵画が交差するこのエリアは、芸術好きには特におすすめの散策コースです。

シューベルト最期の家

シューベルトに関心がある方は、少し足を延ばして最期の家を訪れてみてはいかがでしょうか。

分離派会館付近から徒歩約15分、Kettenbrückengasse 6にあるこの建物は、兄フェルディナントの住居でした。シューベルトは1828年11月19日にここで亡くなりました。

また、この家は、のちにロベルト・シューマンが訪れた際、忘れられていた交響曲第9番ハ長調『ザ・グレート』の楽譜が発見された場所としても知られています。

現在は記念館として公開されており、外壁にはシューベルトが亡くなった日を記す銘板があります。短い生涯の中で数多くの名曲を生み出した作曲家に思いをはせながら訪れたい場所です。

シューベルト最期の家銘板

ベートーヴェンの足跡をたどる

ベートーヴェンゆかりの地をさらに深く巡るなら、リング通りの北側にあるショッテン・トア周辺がおすすめです。ホテルからは少し距離がありますが、路面電車や地下鉄を利用すればアクセスできます。

このエリアには、ベートーヴェンが暮らした場所や葬儀が行われた教会、代表作を生み出した住居などが残されています。

ベートーヴェン最期の家

ショッテン・トアから北へ延びるヴェーリンガー通りを歩き、シュヴァルツシュパーニアー通りを左折して進むと、15番の建物にベートーヴェンの最期の家を示すレリーフがあります。

現在の街並みの中に、作曲家が人生の最後を過ごした場所が残されていることに、歴史の重みを感じます。

アルサー教会|ベートーヴェンの葬儀が行われた場所

最期の家から徒歩約5分のアルサー通り17番には、アルサー教会(三位一体教会)があります。

1827年3月29日、ベートーヴェンの葬儀が行われた場所です。教会正面の右側にはベートーヴェンについて、左側には葬儀に参列したシューベルトについて記した銘板があります。

偉大な作曲家を見送った場所であり、同時代を生きた音楽家同士のつながりを感じられるスポットでもあります。

アルサー教会

パスクアラティ・ハウス|名曲が生まれた住居

ショッテン・トアに戻り、ウィーン大学方面へ向かうと、大学の建物の向かい側、高台のメルカー・バスタイ8番にパスクアラティ・ハウスがあります。

ベートーヴェンはこの家に約10年間暮らし、交響曲第4番、第5番、第7番などの代表作を生み出しました。

現在、建物の5階はベートーヴェン記念館として公開されています。作曲家が日々の生活を送りながら、後世に残る名曲を生み出した場所を訪れることができるのは、音楽好きにとって特別な体験です。

パスクアラティ・ハウス

マーラーゆかりの地を訪ねて

マーラーもまた、ウィーンの音楽文化を語るうえで欠かせない作曲家です。

ホテルから徒歩圏内には、マーラーが10年近く暮らした家の跡があり、記念銘板でその歴史を確認できます。

さらに、マーラーにとって重要だった場所が、楽友協会ホールとウィーン国立歌劇場です。マーラーはウィーン・フィルの指揮者を務め、ウィーン国立歌劇場では総監督として活躍しました。音楽活動の中心となったこの2つの場所には、シーズン中、日々のように通っていたことでしょう。

マーラーの作品を鑑賞する機会があれば、市内観光で墓所や最期の住居跡も訪れることで、作品への理解がさらに深まるはずです。

ウィーン旧市街に点在する作曲家ゆかりの地

ウィーンの歴史地区には、ここまで紹介した場所のほかにも、作曲家たちの暮らしや創作活動を伝えるスポットが数多く残されています。

国立歌劇場、ケルントナー通り、シュテファン大聖堂を目印に旧市街を歩くと、銘板をたどりながら音楽史を巡る散策が楽しめます。

リング通りの西側エリア

  • シューベルト:作品が初めて演奏された家の跡(Renngasse 1)
  • モーツァルト:3度目のウィーン滞在時に宿泊したホテルの跡(Tiefer Graben 18)
  • モーツァルト:ウィーンで初めて演奏会を開いた家の跡(Am Hof 13)
  • モーツァルト:かつての住居跡(Judenplatz 3)
  • モーツァルト:オペラ『後宮からの誘拐』を作曲した家の跡(Milchgasse 1)
  • アルバン・ベルク:生家の跡(Tuchlauben 8)
  • ショパン:滞在した家の跡(Kohlmarkt 9)
  • ハイドン:住居の跡(Kohlmarkt 11)
  • ハイドン:『皇帝賛歌』を作曲した家の跡(Neuer Markt 2)
  • シューベルト:交響曲第7番ロ短調『未完成』を作曲した家の跡(Spiegelgasse 9)

リング通りの東側エリア

  • モーツァルト:葬儀が行われた場所(シュテファン大聖堂裏手のカタコンベ出口付近、Stephansplatz)
  • モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』を作曲した家、モーツァルトハウス(Domgasse 5)
  • モーツァルト:大司教と決別した家の跡(Singerstrasse 7)
  • モーツァルト:最期の家の跡(Rauhensteingasse 8)
  • モーツァルト:最後に演奏した家の跡(Himmelpfortgasse 6)
  • シューベルト:寄宿生活を送った家の跡(Dr.-Ignaz-Seipel-Platz)
  • シューマン:住居の跡(Schonlaterngasse 7a)
  • ヨハン・シュトラウス1世:最期の家の跡(Kumpfgasse 11)

こうして一覧にしてみると、ウィーンの旧市街そのものが、音楽史をたどる大きな博物館のように感じられます。

銅像の前で記念写真を撮るだけでなく、建物の壁に残された小さな銘板を探してみる。そんな楽しみ方をすれば、いつもの街歩きが、作曲家たちの人生を追体験する旅へと変わるでしょう。

音楽を聴くだけではない、ウィーンならではの楽しみ方

ウィーンには、現在も世界中の音楽ファンを魅了するコンサートホールや歌劇場があります。しかし、この街の魅力は、舞台の上で奏でられる音楽だけにとどまりません。

作曲家たちが暮らした家、名曲を生み出した住居、葬儀が行われた教会、そして街の風景に溶け込む銅像。そうした場所をひとつずつ訪ねていくことで、音楽が生まれた時代や作曲家の人生を、より身近に感じられるようになります。

コンサートの前後に少し時間をつくり、お気に入りの作曲家ゆかりの場所を歩いてみる。そんな過ごし方も、ウィーンならではの贅沢です。

音楽を聴く旅に、街を歩いて歴史を感じる楽しみを加えてみませんか。きっと、耳にした名曲が、これまでとは少し違った響きを持って心に残ることでしょう。

\催行決定!/2月ツアー詳細はこちら

同行講師のご紹介

講師:山本 直幸氏

ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄。

<音楽鑑賞の旅>特集もご覧ください♪

クラブツーリズムから旅に関する最新の情報をお届け!

クラブツーリズムからメールマガジンをお届けしています。
1万件以上あるツアーの中から厳選した、人気のツアーや限定ツアーの情報をご希望の方はメルマガ会員への登録をお願いします。

◎クラブツーリズムのWEB会員でない方はこちらから
◎クラブツーリズムのWEB会員だけれどもメルマガは受信していない方はこちらから
※既にインターネット会員の方も、配信設定を変更することでメールマガジンをお受け取りいただけます。ログイン後、メールマガジンの設定を変更ください。

SNSでも最新の情報をお届けしています。旅に関する最新の情報を共有しましょう!
・インスタグラム
・facebook
・youtube
・LINE