12月は一年中で最も日が短くて寒い時期ですが、ヨーロッパはどこへ行っても街中イルミネーションで美しく飾られ、冬の風物詩ともいえるクリスマス市で賑わいます。そして音楽面では年末までとても魅力的な公演が多く催され、最も活気のある時期でもあります。
画像: ドレスデンのクリスマス市 シュトリーツェルマルクト

ドレスデンのクリスマス市 シュトリーツェルマルクト

キーワードは「クリスマス」と「世界2大オーケストラ」

世界最古のクリスマス市と言われるドレスデンの「シュトリーツェルマルクト」がハイライトになりますが、訪問都市ベルリン、プラハ、ウィーンでも大規模なクリスマス市で賑わい、クリスマスの独特の雰囲気を味わうことができます。会場はどこも所狭しと露店が軒を連ね、クリスマスならではの民芸品やお菓子などの店を見て回るだけでも楽しいでしょう。また寒い時期に好んで飲まれる名物のグリューワイン(香辛料と温めたホット・ワイン)を試してみるのもよいでしょう。

画像: ウィーン最大のクリスマス市 市庁舎前広場

ウィーン最大のクリスマス市 市庁舎前広場

ベルリン・フィルとウィーン・フィルの競演

音楽界に君臨する2大オーケストラと言えばベルリン・フィルとウィーン・フィルです。音楽鑑賞ツアーにとって、一度の旅行でこの2つの名門オーケストラの演奏を拠点ホールで鑑賞することは大きな魅力です。しかも指揮者は巨匠の二人、ゲルギエフとムーティです。

ゲルギエフは、ロシアを代表する指揮者で、1988年からサンクトペテルブルクのマリンスキー劇場音楽監督を務める傍ら、2007年~2015年、ロンドン交響楽団、2015年からミュンヘン・フィルの常任指揮者を兼務しています。ベルリン・フィルの演奏会直前、11月末にミュンヘン・フィルを率いて来日するので、日本でも話題になるでしょう。演奏曲目が、ゲルギエフが最も得意とするロシア作品というのも魅力的です。

画像: ベルリン・フィルの拠点ホール フィルハーモニーは「近代的」

ベルリン・フィルの拠点ホール フィルハーモニーは「近代的」

画像: ウィーン・フィルの拠点ホール 楽友協会ホールは「伝統的」

ウィーン・フィルの拠点ホール 楽友協会ホールは「伝統的」

ムーティは、2018年のニューイヤーコンサートを指揮して脚光を浴びましたが、1971年のザルツブルク音楽祭で初めて指揮して以来、約500回もウィーン・フィルを指揮し、2011年には名誉団員の称号も授与されるほど、長年親密な関係を維持しています。演奏曲目のモーツァルトのフルート協奏曲には、ウィーン・フィルの首席を務めるフルート奏者シュッツが出演しますが、ムーティとの息の合った素晴らしい演奏が期待できるでしょう。

キーワードは「ジルヴェスターコンサート」と「花火」

ドイツの多くの名門オーケストラは、大晦日(ジルヴェスター)に向けて特別演奏会を催す慣わしになっています。その代表格がベルリン・フィルとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のシルヴェスターコンサートです。

画像: ベルリン・フィルのジルヴェスターコンサート会場 フィルハーモニー

ベルリン・フィルのジルヴェスターコンサート会場 フィルハーモニー

ドイツ名門オーケストラの年末特別演奏会

1882年創始のベルリン・フィルは、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートに対抗して、カラヤンが年末の特別演奏会として、1977年にジルヴェスターコンサートを始めました。伝統に縛られたニューイヤーコンサートとの違いを明確化させるために、毎年テーマ性のある演奏曲目を厳選し、スター演奏家を招いた「お祭り」に相応しいパフォーマンスが大きな魅力です。今年はピアニストとしても絶大な人気を誇るバレンボイムが指揮しますが、弾き振りで演奏されるモーツァルトの「ピアノ協奏曲第26番」が一番の注目です。最後に取り上げられる曲目がラヴェルの「ボレロ」なので、大きな盛り上がりも期待できるでしょう。

画像: ゲヴァントハウス管弦楽団のジルヴェスターコンサート会場 ゲヴァントハウス

ゲヴァントハウス管弦楽団のジルヴェスターコンサート会場 ゲヴァントハウス

1743年創始のゲヴァントハウス管弦楽団は、1824年5月7日にウィーンで初演された「第九(交響曲第9番)」を、1826年3月6日に演奏しています。そして第一次世界大戦が終結した1918年から年末に演奏するようになりました。音楽監督ニキシュの指揮で12月31日、23時過ぎに始まり、新年へ向けて「人類すべてが兄弟になる」という平和の願いを込めて、「歓喜に寄す」が歌われたのです。その後フルトヴェングラーなど歴代の音楽監督が伝統として引き継ぎ、ジルヴェスターコンサートの定番曲として今日に至っています。今年は音楽監督に就任したばかりのネルソンス(ボストン交響楽団音楽監督兼務)が指揮台に立ちます。

画像: ゲヴァントハウス 音楽監督ネルソンス

ゲヴァントハウス 音楽監督ネルソンス

ドレスデンならではの年越し

今年のドレスデンの大晦日は、スター歌手を招いたオペラ「椿姫」が特別公演として上演されます。その公演が終わるタイミングで、市民がエルベ川沿いに集まり始め、午前0時のカウントダウンに合わせて一斉に花火を打ち上げます。その瞬間、新年の夜空が赤く染まり、エルベ川沿いの美しいバロックの街並みが、さらに美しく姿を変えます。翌日の移動先プラハでは、ブルタヴァ川沿いで花火が打ち上げられて新年を盛大に祝います。花火に彩られる魅惑の古都ドレスデンとプラハで、特別な年末年始を過ごされてはいかがでしょう。

画像: ゼンパー歌劇場前広場で打ち上げられる花火

ゼンパー歌劇場前広場で打ち上げられる花火

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画像: 【クラブツーリズム 音楽の旅】 旅の文化カレッジ講師 山本 直幸 ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。 特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿。

【クラブツーリズム 音楽の旅】
旅の文化カレッジ講師 山本 直幸
ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
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