2022年は1年を通してヴァージンギャラクティック社(以下VG社)の宇宙船スペースシップ2(VSS Unity)はテスト飛行を1度も実施されることがなく、マザーシップ(母機)のホワイトナイト2とともにその改修作業のためにモハベ空港の子会社、スペースシップカンパニーの工場に入ったままの状態が続いてきた。

 これは、これから始まる継続的な商業飛行に備えた機体の耐久性や信頼性向上のために行われているもので、すべての詳細は明らかにされていないが、今回は特にマザーシップの方の改修に力点がおかれている。主なもののひとつが、パイロン(マザーシップの胴体の下に宇宙船を取り付ける装置)の強化との説明がされている。当初は10か月程度の予定と言われていたが、コロナによるサプライチェーンの分断や労働力不足も加わり、既に14か月以上が経つような状況である。現時点の予定では、2023年1月には終了するとされている。

 2022年は、そのような宇宙船の現状とは別に、将来の計画や投資がVG社により数多く発表された年でもあった。

 7月には、次世代のマザーシップ2機(年間200回の飛行能力)をボーイング社の子会社(オーロラフライトサイエンス社)に製造を委託すること、そして、次世代型の宇宙船(デルタクラスと呼んでいる)は6機を製造する工場をアリゾナ州フェニックスに設置し、2023年から製造を開始、2026年には初号機を飛ばしたいとの計画を発表した。8月にはさらに、ニューメキシコ州の宇宙港スペースポートアメリカに近い場所にトレーニングセンターや専用宿泊施設用の土地を確保したと発表した。又、11月には6機の次世代宇宙船の製造を委託する2社の社名も発表している。

画像2: ヴァージンギャラクティック宇宙船開発
2022年の振り返りと2023年以降の展望

 このような積極的な投資計画の最終ゴールは、「年間400フライト」の実現であることが既に発表されている。時期までは特定されていないが、毎日1便以上が運航され、6名乗りとすると年間2,400名の観光客が宇宙に行くという計算になる。投資計画と販売戦略の絶妙なバランスも求められていると言える。

 その販売面の方は、2022年、暫くストップしていた新規販売が復活し2月に一般向け座席発売が始まった。価格は、条件が少し異なり単純比較はできないが、2005年のスタート時は20万ドルであったが、現在は45万ドルという2倍以上の値上がりとなった。為替レートも加味すると3倍以上となり、他の物価と同様世界的なインフレの影響も受けている。

 本年11月末には、VG社はこの販売を世界的に一旦中止した。はっきりとした理由は示していないが、新規販売より現在の800名を超えた予約客の搭乗オペレーションに注力をする必要性があることは容易に想像できる。順調に運航が始まると、再度「年間400フライト」への拡大を目指して、販売も再スタートすると言われている。

 一方これに平行して11月末に、密かに「ファウンダー顧客」の座席番号の抽選会がロンドンで開催された。ファウンダー顧客とは「世界で最初に予約した100名の宇宙旅行者」のことだが、現在は約半分の人数になっている。最初に座席を買ったこのファンダーについては、何故か予約順位が決められておらず運航が近くなったら抽選で決めるとされていたが、それがいよいよ実行されたのだ。これはいよいよ運航開始が近づいていることを示していると言えそうだ。

 業界全体としても、2022年は宇宙旅行について派手な動きがない年であった。前年の2021年は世界合計で29名もの民間人が、ヴァージン(7名)、ブルーオリジン(14名)、スペースX(4名)、ソユーズ(4名)などに乗り宇宙に行き大きな話題となった。「宇宙旅行元年」と言われ所以だが、その反動か今年は静かな年になった。

テキスト ボックス: スペースシップ3 VG社のライバルであるブルーオリジン社は、2022年は3回(18名)の宇宙フライトを実施したが、4回目の9月は貨物だけの無人飛行であったが、打ち上げ後ロケットが爆発し墜落、今年はそれ以降打ち上げがない。スペースXは前半に4名、ソユーズでの民間人搭乗はなかったので、2022年は前年より宇宙に行った民間人は少ない年となった。

 しかし、来年以降月に人類が再び降り立つアルテミス計画がさらに本格的に進み、民間人の月周遊フライトの実現も期待されるので、VG社の動きも合わせて2023年は又にぎやかな年になりそうである。

画像3: ヴァージンギャラクティック宇宙船開発
2022年の振り返りと2023年以降の展望

VG社が現在発表している2023年の計画としては、1月にモハベの工場から宇宙船とマザーシップが出てきた後、グライダー飛行とロケット飛行のテストフライトが実施され、その後昨年予定されていたイタリア空軍による調査飛行を実施したのちに、初めての商業飛行に移りファウンダー顧客が先日決まった順番通りに搭乗していくというものである。その飛行のスタートは、2023年4~6月という以前の発表に今のところ変更はない。

スペースシップ2は1機に乗客が4名ずつ搭乗し、月に1回のフライトが予定されるが、2024年にはスペースシップ3(既に1機目の機体は完成済)が加わり、乗客数が拡大していく。これまで発表された予定を独自にまとめてみると以下のようになる。

画像4: ヴァージンギャラクティック宇宙船開発
2022年の振り返りと2023年以降の展望

 2023年からのVGの定期運航が始まり、誰もが宇宙に行ける時代がやっと始まろうとしている。しかしあらゆる宇宙開発は遅延する傾向が強いことも忘れないようにしておきたい。そして、なにより継続的な安全運航の実現が最重要で、それが関係者だけでなく宇宙に飛び立とうとする万人そして人類の節なる願いでもある。     
                  
                     (クラブツーリズム・スペースツアーズ社まとめ)

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