「花の宝庫」東北で出会う、特別な山の風景
東北の山々は、雪解けとともに一斉に花が咲きはじめる、まさに「花の宝庫」。長い冬を越えたからこそ出会える、可憐で力強い高山植物の姿は、訪れる人の心を静かに魅了します。
今回は、そんな東北ならではの美しい花々と出会える山々の魅力をご紹介します!
花の百名山とは
花の百名山とは、登山家で随筆家の田中澄江が選定した、美しい高山植物が見られる日本の山100座のことです。1970〜80年代に発表され、著書『花の百名山』によって広く知られるようになりました。
特徴としては、単に標高や知名度ではなく、「花の種類の豊富さ」「固有種や希少な植物の存在」「季節ごとの花の美しさ」といった花の魅力を基準に選ばれている点です。いわば「花を楽しむための名山リスト」で、登山者だけでなく、自然や植物を愛する人にも人気のある指標です。
ハクサンイチゲと鳥海山
ニッコウキスゲ咲く雄国沼
秋田駒ヶ岳(1,637m)│入門~初級レベル
秋田県と岩手県の県境に位置する秋田駒ヶ岳は、標高 1,637m(男女岳)と比較的登りやすい高さでありながら、数百種類もの高山植物が咲き誇る「花の山」として知られています。コマクサやチングルマ、ニッコウキスゲなど、可憐で個性豊かな花々が次々と現れ、歩くたびに表情が変わるのも魅力です。
チングルマ ※花の見頃:6月下旬~7月上旬
「雲上の花畑」の主役といえば、このチングルマ。特にムーミン谷を埋め尽くす大群生は圧巻の一言で、日本最大級の規模を誇ります。青い空、緑の山、真っ白なチングルマのコントラストは、ムーミン谷までの道のりの疲れを吹き飛ばしてくれます。
コマクサ ※例年の見頃:6月下旬~8月中旬
岩場に群生する淡いピンクの姿が魅力的な花。高山の厳しい環境に咲く可憐な姿は「高山植物の女王」とも呼ばれるほどです。その姿はコマクサコースで多くを見られます。秋田駒ヶ岳の火山らしい茶褐色の地面に、淡いピンクが驚くほど映えます。
八幡平(1,613m)│入門~初級レベル│花の百名山
なだらかな地形の中に広大な湿原や湖沼を有する八幡平では、アオモリトドマツの原生林に囲まれた神秘的な景観を楽しむことができます。春の雪解けとともに咲くミズバショウを皮切りに、ワタスゲ、ニッコウキスゲへと季節ごとに彩りを変える高山植物の宝庫です。起伏が少なく整備された木道で歩きやすいため、のんびり花を観察したいという方にもぴったりの場所です。
ミズバショウ ※例年の見頃:4月中旬〜5月上旬
八幡平の春の訪れを告げる花といえば、ミズバショウ。雪解け後の湿地に咲く代表的な植物で、清らかな水辺や湿原を好みます。八幡平では黒谷地湿原や八幡沼の周辺、田代平湿原などで見ることができます。
コバイケイソウ ※花の見頃:7月上旬~下旬
小さな白い花が密集して穂のように咲くコバイケイソウ。1メートル近い高さになる姿は圧巻です。数年おきの満開時には、緑の風景が真っ白に染まるほど力強く、可憐に咲き誇ります。八幡平では黒谷地湿原や八幡沼の周辺などで大群生を見ることができます。
森吉山(1,454m)│入門~初級レベル│花の百名山
豪雪地帯ならではの豊かな湿潤環境に恵まれた森吉山は、なだらかな山容と広大な高層湿原を有する秋田県の名峰です。シラネアオイをはじめとする雪国特有の山野草やチングルマ、ハクサンチドリなど多種多様な高山植物を楽しめます。ゴンドラを利用して比較的気軽に高山帯へアクセスできるため、登山初心者にも人気のある山です。
ハクサンチドリ ※花の見頃:6月中旬~7月上旬
初夏の高原や湿原を彩るラン科の高山植物で、鮮やかな紫紅色の花を穂状に咲かせるのが特徴です。名前の由来は、花の姿が空を舞う千鳥に見えることから付けられています。森吉山では、阿仁ゴンドラ山頂駅周辺や森吉山山頂周辺などの湿原や登山道沿いで観察できます。
シラネアオイ ※花の見頃:6月上旬~中旬
名前に「アオイ」とありますが、アオイ科ではなく、1属1種の珍しい植物として知られています。特に阿仁ゴンドラ山頂駅周辺や石森周辺、森吉山登山道など雪解け後の登山道沿いや林間部で観察できます。
チングルマ ※花の見頃:6月中旬〜下旬
森吉山は豪雪地帯で雪解けが遅いため、短い夏に一気に高山植物が開花します。チングルマはその代表種で、雪解け直後の斜面や湿原を白く染める存在です。また、森吉山ではゴンドラを使って高度を上げていきますので、秋田駒ヶ岳と違い登山初心者でも手軽にチングルマをお楽しみいただけます。
早池峰山(1,914m)│中級レベル│花の百名山
北上山地の最高峰であり、古くから信仰の対象として崇められてきた早池峰山は、蛇紋岩(じゃもんがん)という特殊な地質によって守られてきた貴重な固有種の宝庫として知られています。厳しい岩場に可憐な白い花を咲かせるハヤチネウスユキソウなどの固有種をはじめ、ここでしかない草花に出会えるのが魅力です。
ハヤチネウスユキソウ ※花の見頃:7月上旬~中旬
早池峰山に自生する高山植物で、名前の由来は岩手県の早池峰山で多く見られることと、“初雪”を思わせる白い姿から付けられました。可憐ながらも高山の厳しい環境に適応した植物として知られています。初夏に咲き、可憐でやさしい姿から「高山の妖精」とも呼ばれます。五合目以降の岩場周辺や山頂周辺など特に岩場や風衝地に多く生息しています。
五葉山(1,351m)│初級レベル│花の百名山
三陸沿岸に近く、山頂からは三陸の海を一望できる五葉山は、海と山の色彩が溶け合う特別な景色を楽しめる名峰です。初夏になると、山肌を彩るヤマツツジや気品のあるハクサンシャクナゲに加え、アカヤシオやシロヤシオといったツツジ類が咲きそろいます。海を背景に鮮やかな花々が稜線を彩る姿は、五葉山ならではの贅沢な光景です。
ヤマツツジ ※花の見頃:5月中旬~下旬
レンゲツツジは鮮やかなオレンジ色で目立ち、湿原や草原に群生することが多い一方、ヤマツツジは山道に自然に溶け込むように咲くのが特徴です。五葉山では、深い緑の中に点在するヤマツツジの景観が初夏の風物詩となっています。登山道沿いに次々と咲き、花のトンネルのような景色を楽しめるのが魅力です。
ハクサンシャクナゲ ※花の見頃:6月下旬~7月上旬
五葉山は太平洋側の比較的温暖な気候と、風の強い稜線環境が組み合わさっており、ハクサンシャクナゲにとっては生育条件がやや厳しい一方で、風衝地に適応したコンパクトな群落が形成されます。初夏にはヤマツツジと入れ替わるように咲き始め、濃い緑の中に淡いピンクの花が浮かび上がるような美しい景観が楽しめるのが特徴です。主に標高の高い稜線や山頂周辺で観察できます。
栗駒山(1,626m)│初級レベル│花の百名山
火山活動によって形成された湿原や草原、そして火山礫地(かざんれきち)がモザイク状に広がる栗駒山は、地形ごとに異なる花が楽しめる珍しい山です。山頂付近のなだらかな草原ではチングルマやイワカガミなど、名残ヶ原・産沼周辺など湿原地帯ではワタスゲ、ヒナザクラ、ニッコウキスゲ、火山礫の厳しい環境ではエゾツツジなど、歩みを進めると景色が移り変わるのが最大の魅力です。
ヒナザクラ ※花の見頃:6月上旬~7月上旬
雪解け後の湿った草地や湿原に群生し、春から初夏にかけて山の湿原をやさしく彩ります。地面近くで低く咲くため、じゅうたん状に広がり、群生すると「星が散ったような景観」になります。栗駒山は火山活動によってできたなだらかな地形と、雪解け水が豊富な湿原環境が広がっているため、小型で繊細な湿原植物が非常に発達しています。名残ヶ原など主に湿原エリアで見ることができます。
ワタスゲ ※花の見頃:6月上旬~中旬
ワタスゲは、初夏の湿原を白くふわふわと染める特徴的な植物です。花そのものは小さく目立ちませんが、花後にできる白い綿毛状の果穂が「綿(わた)」のように見えることからこの名前がついています。栗駒山では、名残ヶ原など特に湿原エリアで広く見られます。また、ヒナザクラやチングルマと同時期に見られるため、白・ピンク・緑が織りなす繊細な湿原風景を楽しめるのも栗駒山の大きな魅力です。
鳥海山(2,236m)│初級~中級レベル│花の百名山
「出羽富士」と称される独立峰の鳥海山は、溶岩の重なる火山地形、日本海から届く湿った風と雪解け水が育む湿潤環境が特徴です。標高ごとに異なる花が帯状に現れ、夏には火口周辺の力強い岩場に固有種のチョウカイフスマ、雪解けの進む斜面にはニッコウキスゲが広がります。雪解けの遅い場所では、残雪と高山植物が織りなす「涼やかな花景色」が見られるのも魅力です。
ニッコウキスゲ ※花の見頃:7月中旬〜下旬
ニッコウキスゲは朝に開き夕方にはしぼむ「一日花」ですが、次々と開花するため群生地では長期間花が楽しめます。草丈は50~80cmほどあります。鳥海山では、鉾立登山口周辺や七五三掛(しめかけ)周辺など主に中腹~森林限界付近の草原帯や湿地で見られます。
チョウカイフスマ ※花の見頃:7月上旬~8月下旬
チョウカイフスマは、海山を代表する固有種のひとつです。鳥海山は風が強く火山礫の多い環境が広がっているため、地面を這うように成長する低矮な植物が多く見られます。チョウカイフスマもその代表例です。標高2,000m以上の新山周辺、外輪山(七高山付近)の岩場や、御田ヶ原周辺の砂礫地などに生息しています。
ハクサンイチゲ ※花の見頃:6月中旬~6月下旬
初夏の高山帯で雪解けとともに一斉に咲く代表的な高山植物で、純白の花が群れ咲く姿がとても印象的です。名前の「イチゲ(一華)」は「一つの茎に一つの花をつける」ことに由来しています。鳥海山では、七五三掛周辺や新山周辺、外輪山(七高山付近)など主に標高の高い草地や砂礫地で見られます。
月山(1,984m)│初級レベル│花の百名山
出羽三山の主峰であり、古くから山岳信仰の対象として尊ばれてきた月山は、日本海側特有の豪雪が育む広大な湿潤環境と、夏まで残る豊かな雪解け水が特徴です。雪解けとともにチングルマやハクサンイチゲ、ミヤマキンバイなどの多種多様な高山植物が咲き誇り、さらにクロユリのような希少な花に出会えるのも大きな魅力です。
クロユリ ※花の見頃:6月下旬~7月中旬
月山のクロユリは、雪解け後の高山帯にひっそりと咲く黒紫色の希少な花です。うつむくように咲く控えめな姿と独特の色合いが特徴で、月山の初夏を代表する高山植物のひとつとして知られています。姥ヶ岳周辺や弥陀ヶ原、月山八合目周辺など主に雪田周辺や高山草原で観察できます。
ミヤマキンバイ ※花の見頃:6月中旬~7月上旬
名前の「キンバイ(金梅)」は、梅の花に似た黄色い花姿に由来しており、雪解け直後に高山の草地や雪田周辺を明るく彩ります。月山山頂へ続く稜線や姥ヶ岳周辺などの登山道や高山草原で広く見られます。
安達太良山(1,728m)│入門~初級レベル│花の百名山
噴煙をあげるダイナミックな火口周辺のダイナミックな火山景観と高山植物が同時に楽しめる安達太良山は、植生の変化が非常に豊かな名峰です。火山活動による酸性土壌や噴気地帯が特徴で、短い登山距離の中でもサラサドウダンの可愛らしい花が咲く森林帯から、イワカガミが彩る湿原、そして火山荒原へと移り変わる多彩な花々を観察できます。まさに「変化に富んだ花の山」として親しまれています。
サラサドウダン ※花の見頃:5月中旬〜6月中旬
釣鐘状の可憐な花を枝いっぱいに咲かせる山地性の花木で、白地に紅色の縦縞模様が入るのが大きな特徴です。名前の「更紗(さらさ)」は、花模様が更紗染めのように見えることに由来しています。ロープウェイ山頂駅周辺の薬師岳から安達太良山頂、勢至平にかけてのエリアで見ることもできます。
イワカガミ ※花の見頃:5月下旬~7月上旬
艶のある葉が「鏡」のように見えることから「イワカガミ」と名付けられました。安達太良山は火山活動による岩場や礫地が発達しており、イワカガミが好む水はけの良い斜面環境が多くあります。そのため、稜線や登山道沿いで比較的広く観察できます。
田代山(1,971m)│初級レベル│花の百名山
山頂一帯が広大な高層湿原になっている田代山は、平坦な湿原ならではの多種多様な植物に出会える山です。初夏から夏にかけて、ワタスゲやチングルマが一面に咲き広がり、ヒメサユリの可憐な姿も大きな見どころです。起伏の少ない木道を歩きながら山頂一帯にある「天空のお花畑」を間近に楽しめるため、のんびりと花を愛でたい方には最高の場所です。
ヒメサユリ ※花の見頃:6月中旬〜下旬
淡いピンク色の大きな花を咲かせる美しいユリで、「オトメユリ」の別名でも知られています。田代山の山頂湿原は湿地性植物が中心ですが、山麓〜登山口周辺にはブナ林や草原環境が広がっており、ヒメサユリのような草原性の花も見られます。
タテヤマリンドウ ※花の見頃:6月中旬〜下旬
名前は立山で多く見られることに由来しますが、東北の高層湿原でも広く見られます。タテヤマリンドウは田代山の代表的な存在で、広い湿原の中に点々と青紫の花を散らすように咲きます。
ヒメシャクナゲ ※花の見頃:6月中旬〜下旬
湿原に生える小さなツツジの仲間で、釣鐘状の可憐な花を咲かせる高山植物です。シャクナゲと名前がつきますが、一般的な大型のシャクナゲよりもはるかに小型で、地面を這うように広がる姿が特徴です。田代山では、主に山頂の湿原エリアで観察できます。
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