はじめに
その土地に根付き、昔から愛されてきた飲み物の代表格としてのワイン。ツアーで主に訪れて頂けるような地域を中心に、観光地とワインと地方料理のご案内をさせて頂きます。
各国の知識は歴史書や『観光地から、その国の文化を知る』場合が多いと思いますが、見方を変え『各州のワインからイタリアを知る』という違った角度からイタリアをご紹介致します。
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ブログ担当は、自然も大好き! 皆様に早くお会いしたいです、添乗員阿部りょうこ、宜しくお願い致します。
イタリアの気候と地形と土壌
イタリアは総面積約30㎢で日本の8割の土地に、人口は約6000万人です。北緯は35~47°の間に位置し、首都ローマは函館とほぼ同緯度の北緯41.5°で、イタリア最南端のランペドゥーサ島が東京と同じ北緯35.5°。他のヨーロッパ諸国と同じく、暖流の北大西洋海流の影響で緯度のわりに温暖な気候です。イタリア半島の北に屛風のようにそそり立つアルプス山脈は北からの冷たい風を防ぎ、アフリカからのシロッコと呼ばれる熱い風が南から吹くことも気候をより温暖なものにしています。
また、地形の最大の特徴であるアペニン山脈は、イタリア半島の真ん中を南北に背骨のように貫いており、東のアドリア海と西のティレニア海側の気候を異なるものにしています。最大でも東西に240kmという幅の狭いイタリア半島の地形は、海から平野、すぐに丘陵地帯、山岳地帯と変化し、標高傾斜なども異なり、土壌も多様で、栽培されているブドウ品種、栽培方法なども地方ごとに大きく異なります。
イタリアのブドウの産地は石灰質土壌がメインで、砂、粘土などの割合は地方により異なります。北イタリアの氷河湖の南には氷堆石土壌が広がり、ミラノのあるロンバルディア州のフランチャコルタ、ロンバルディア州とヴェネツィアのあるヴェネト州にまたがったルガーナ、ヴェネト州のバルドリーノなどがあります。火山性土壌が多いのも特徴でヴェネト州のソアーヴェ、ナポリのあるカンパーニア州のタウラージ、シチリア州のエトナなどはその代表となります。サルディーニャ島はイタリア半島より古い土地で島の最北にあるガッルーラは花崗岩土壌になります。
イタリアは国別ワイン生産量が世界一なんだ。No.2はフランス、No.3はスペイン、No.4はアメリカ、No.5はアルゼンチンと続くよ !
国別のワイン消費量はイタリアはNo.3 ! No.1はアメリカ、No.2はフランス、ちなみにNo.4はドイツ、No5は中国が続くの。
イタリアワインの歴史
1 古代ギリシア、エトルリア
イタリアでは原始的なワイン造りはすでに紀元前2000年以上前から行われていましたが、本格的なブドウ栽培を伝えたのは古代ギリシア人とエトルリア人です。
ギリシア人は、前700年頃からイタリア南部のシチリア、カラブリア、プーリア(現在の州名)などに集団移住し、今日でも栽培されている多くのブドウ品種 (グレーコ、グレカニコ、アリアニコなど) を持ち込むと同時に、優れた栽培法、醸造技術を持ち込んだとされています。
南イタリア、南フランス、スペイン、ポルトガルなどをバスで走らせると、畑にたくさんの切り株が並んでいるように見えるものがあります。暑く乾燥した土地で用いられるブドウ栽培方法の1つ『株仕立て』というもので、ギリシア人が普及させたものです。
その他に、世界的に広く用いられておりフランス、ドイツ、イタリアなどでも見られる『垣根仕立て』やドイツモーゼル地方、フランスローヌ地方の斜面でも見られる『棒仕立て』、降雨の多い日本や日差しの強いイタリア、ポルトガル、エジプトなどでも見られる『棚仕立て』などがあります。
エトルリア人は、起源は未だにわからない神秘的な民族と言われていますが、建築、製鉄などの高度な技術を持ち、紀元前700年頃から紀元後100年頃まで、アルプスの水を集めイタリアで一番長いポー川以南からローマの北部に至るまでイタリア中部を支配していました。エトルリア人も本格的な栽培、醸造技術を持っていましたが、栽培方法はギリシア人とは異なり、他の樹木にブドウの蔦を絡ませるマリタータと呼ばれる1900年頭までウンブリア州で見ることができた方法を用いていました。また、エトルリア人は通商に優れた民族で地中海の広い範囲でワインの取引を行っていました。
2 古代ローマ
古代ローマ時代は、ウェルギリウス、ホラティウスなどの詩人がワインを讃え、大プリニウスの『博物誌』にもブドウやワインに関しての記述が残されています。ワインの通商も盛んで、ワインやオリーブオイルなどを運搬、保存する時に便利な、素焼きのアンフォラ(壺)なども盛んに使用されました。古代ローマ時代のポンペイの遺跡にも、船で運搬するための先の尖った形をした当時のアンフォラが展示されています。アンフォラの歴史は古く紀元前6000年頃のジョージアのあたりで生まれたとされ、紀元前1400年頃のレバノンからシリアの海岸に現れて古代世界に広まったとされています。
アンフォラのワインというと、容器が空気を通しやすいため (一般的に内側は蜜蝋でコーティングされている)、 酸化か還元していて味が落ちているイメージがあります。そのためであるのか古代ローマ時代当時は、甘口が多く、スパイス、ハーブ、蜂蜜、松脂、時には海水などを加えて味をかえて飲まれることが多かったようです。ところが現在ではアンフォラをワイン造りに使い始めている造り手も増えています。樽の中にワインを入れた時の酸化進行度が初期段階のみに対し、アンフォラの場合の酸化進行度はずっと一定を保っており、長期熟成には向かないものの、まろやかで優しい味わいになるということと、ステンレスタンク同様に容器由来の風味をワインに付けないという2点から、再び非常に注目されてきています。
アンフォラはジョージアで『クヴェブリ』と呼ばれているね ! 元祖壺作りの国ジョージアには、クヴェブリを作ることのできる国宝級の腕前の職人さんが8人くらいしか残っていないんだ。
伝統製法のクヴェブリを購入すると1個およそ100万円ほどするそうよ ! しかも購入は順番待ちだって聞いたわ。
3 中世
中世のワイン文化を支えたのは他のヨーロッパ同様修道院で、信仰のためと薬用が中心でした。当時の知識と技術の独占をしていた修道院では、高品質のワインが造られるようになりました。中世末期には経済も発展しワインが庶民レベルにも普及して行きました。品質はともかく農民にもワインを飲む習慣が根付き、食事の一部と考えられるようになって行きました。
4 近世
近世に入って登場した1500年代の歴史家、地理学者でありローマ教皇パウルス世のワイン担当でもあったサンテランチェリオは、ソムリエの先駆けのような人でした。モンテプルチアーノのワインを褒める言葉を残していたり、1500年末ワインについての興味深い言及が見られるようになってきます。
1716年トスカーナ大公コジモ世は、キャンティ、ポミーノ、カルミニャーノ、ヴァルダルノディソプラのワイン生産地の線引きを行い境界線を定め、これが原産地呼称制度の最初の例となりました。この時代からこの産地のワインがすでに高く評価されていたことが分かります。
5 イタリア統一後
いくつもの国家に分かれていたイタリアはサヴォイヤ王家のもと1861年にイタリア統一を遂げイタリアが誕生します。
1863年にフランスプロヴァンス地方でヨーロッパ初の害虫フィロキセラの被害を皮切りに、ワインの産地が壊滅的な大打撃を受けワイン不足に陥ったフランスなどは、フィロキセラ禍にまだ襲われていなかったイタリアに市場を求め、イタリアワイン界は好景気に沸くということもありました。ところが1900年代に入るとイタリアの畑をフィロキセラが襲います。世界大戦で景気も悪化し、イタリアのブドウ畑は見捨てられ荒廃しました。残念なことに、この時代に多くの固有品種が失われ、伝統栽培法も忘れられてしまいました。
1970年代に入ると、フランスの最先端の栽培法、外国種の導入など従来の伝統の殻を破った革新的ワイン造り『イタリアルネッサンス』と後に言われるようになる動きが見られるようになります。ところが現在ではその動きの反動から、固有品種、伝統的栽培と醸造の見直しが盛んに行われています。
各州の多様性と品種
1861年に全国統一されその後、現在では20州から成るイタリア。イタリアワインの最大の特徴は、『多様性』で、1861年まで統一国家でなかったために、それぞれに地方の文化、歴史が大きく異なっていることも、イタリアに特徴の異なるワインが多く生まれている所以となっています。他のヨーロッパと異なり、20州、すべての州で各州独特のワインが生産されています。
ヨーロッパのブドウは、中央アジアのコーカサス原産のヴィティスヴィニフェラがギリシアを経て、イタリア南部に伝わり、そこからイタリア半島を北上してヨーロッパ各地に広まったものです。
イタリアで一番多く栽培されている品種は、主にトスカーナ州で生産される黒ブドウのサンジョヴェーゼ (ジュピターの血の意味) で、キャンティやブルネッロモンタルチーノなどの主原料になっています。2番目に多く栽培されている品種は、アブルッツォ州を中心にイタリアで多く栽培されている黒ブドウのモンテプルチアーノです。3番目に多く栽培されている品種は、主にヴェネト州で栽培される白ブドウのグレーラで、イタリアのスパークリングワイン、プロセッコの主原料になっています。
生産されるワインからみて、ピエモンテ州はイタリアのブルゴーニュ、トスカーナ州はボルドー、ロンバルディア州はシャンパーニュと言われているんだ。
ワイン法と品質分類
前述させていただきましたが、1716年トスカーナ大公コジモ世が、キャンティ、ポミーノ、カルミニャーノ、ヴァルダルノディソプラのワイン生産地の線引きを行い、その範囲外でこれらのワインの名の使用を禁止したことが原産地呼称制度の最初の例となっています。その後、国全体としての統一的な規則の制定は、フランスのワイン法であるAOCの制定よりも28年遅れて (フランスは1935年)、1963年のことになります。
その時にDOCG(統制保証原産地呼称)、DOC(統制原産地呼称)、IGT(保護地理表示ワイン)が定められました。2008年にはEUで統一させようという動きのもと、DOP、IGP、VINOの3つのカテゴリーが制定されたものの、イタリアでは従来のDOCG、DOC、IGTを使用しています。EU既定のDOPはDOCGとDOC、IGPはIGTに相当します。2021年現在DOCGの数は74、DOCは332銘柄あります。
イタリアのスパークリング (発泡性) ワインの種類
スプマンテ・・・イタリア語でスパークリングワイン全般を指し、フランス語の「ヴァンムスー」、スペイン語の「エスプモーソ」と同様。製法としては、高品質な一部を除いてタンク内で熟成を行う「シャルマー方式」で作られ、価格は手の届きやすいものが多くなります。
フリッツァンテ・・・スプマンテのうち微発泡のもの。
フランチャコルタ・・・ロンバルディア州でつくられる高級スプマンテの名称。フランスのシャンパンと同様に瓶内二次発酵で造られ、主にシャルドネ、ピノビアンコ、ピノネーロという3種のブドウを使用します。その高い品質から「シャンパンに次ぐワイン」とも言われています。
アスティ・・・ピエモンテ州アスティの周辺でつくられるスパークリングワイン。モスカートビアンコ種を原料としたものが多く、微発泡のフリッツァンテと、発泡度の高いアスティスプマンテがあります。ブドウの性質上、品の良い甘口に仕上がっているものが多く、モスカートビアンコを使ったモスカートダスティ、バルベーラを使ったバルベーラダスティ、ドルチェット種を使ったドルチェットダスティなどがあり、デザートワインとして広く楽しまれています。2017年の改定により従来の規定よりも残糖度が低い辛口のものも認定され、アスティセッコと呼ばれています。
プロセッコ・・・ヴェネト州で生産される、グレーラ(プロセッコ)種を使用したスパークリングワインのことで、水の都・ヴェネチアの北部で生産されたグレーラ種を用いて、やや苦みのあるドライなスプマンテ、またフリッツァンテに仕上げています。
ランブルスコ・・・「美食の都」エミリア=ロマーニャ州で造られる、ランブルスコ種を使ったスパークリングワインで、赤・白・ロゼが存在し、特に赤のスパークリングワインが有名です。
ピエモンテ州 (イタリアのブルゴーニュ)
ピエモンテとは『山の麓』を意味しその名の通りアルプス山脈の南側に広がっています。州都はトリノで2006年に開催された冬季オリンピックをきっかけに観光業も伸びてきている街です。名所としては、イタリア初代国王ヴィットリオエマヌエーレ2世を始めとするサヴォイア王家の当主が代々暮らしていたユネスコ文化遺産にも登録された壮麗な王宮、エジプトのカイロ博物館の次に大規模なエジプト美術コレクションを貯蔵している古代エジプト博物館、167.5mあり内部に国立映画博物館 (トリノはイタリア映画発祥の地でもあります) の入ったモーレアントネリアーナなどがあります。
2014年に『ピエモンテの葡萄畑の景観、ランゲ、エローエ、モンフェラート』がイタリアでは50番目の世界遺産として登録されました。ピエモンテ州南部のポー川とタナロ川流域は、美味しいワインの産地。ワインの王といわれるバローロやワインの女王バルバレスコなどのイタリアを代表するワインが生産されています。またピエモンテ州はDOCGワインの数が17で一番多い州でもあります。
フランスに隣接する地理的位置からも長年この地を支配したサヴォイア王家がフランス出身ということもあり、ピエモンテ州の習慣、文化にはフランスの影響が色濃く見られます。その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動またはその食品自体をスローフードと呼びますがこの運動もピエモンテが発祥です。スローフード協会創設者のカルロペトリーニの案で創設された世界に1つの食科学大学もピエモンテ州ポレンツォにあります。
1 ピエモンテ州の品種からワインをみる
白ブドウ
コルテーゼ種・・・主にピエモンテ南部で栽培されており、若飲みのシンプルなワインができますが、ガヴィだけは例外で優美で複雑なワインになります。
→ガヴィ、コルテーゼディガヴィ タイプは白、スプマンテ、フリッツァンテ アレッサンドリア県ガヴィなどで造られる切れの良い酸味をもつ辛口白ワイン。
アルネイス種・・・ロエーロで主に使用されています。食用ブドウとしても人気があり、昔はネッビオーロにブレンドされてタンニンを和らげたり甘口ワインに使われたりしました。
→ロエーロ タイプは赤、白、スプマンテ 白とスプマンテの場合はアルネイス種を95%以上使用しなければならない。
モスカートビアンコ種・・・別名モスカートディカネッリ。アスティなど甘口白ワインに適しています。
→アスティ タイプは白、スプマンテ、ヴェンデンミアタルデイーヴァ(遅摘みブドウより生産) アスティ、アレッサンドリア、クーネオの3県で造られる上記イタリアのスパークリングワインにもありますが、基本甘口白ワイン。シャンパーニュと同製法の瓶内二次発酵で造られる場合は『メトドクラシコ』の表示が可能。
黒ブドウ
ネッビオーロ種・・・別名、ピエモンテ州北部ではスパンナ、北ロンバルディア州ではキアヴェンナスカ。収穫が遅い品種でブドウに霧 (ネッビア) がかかることからこの名がつけられました。栽培される場所の影響を強く受ける品種で、クーネオ県のタナロ川沿い、バローロ、バルバレスコ、ロエーロや、ヴェルチェッリ県ガッティナーラ、ノヴァーラ県のゲンメ、ロンバルディア州のヴァルテリーナ渓谷で主に生産されています。
→バローロ タイプは赤ワイン クーネオ県のバローロなど11のコムーネで造られる、イタリアを代表し『ワインの王であり王のワインである』と讃えられる偉大なワイン。
→バルバレスコ タイプは赤ワイン クーネオ県のバルバレスコ、ネイヴェ、トレイゾを中心に造られる。エレガントで優しい個性から『バローロの弟』『ピエモンテの女王』と称される。
→ロエーロ タイプは赤、白、スプマンテ 赤の場合はネッビオーロ種を95%以上使用しなければならない。
バルベーラ種・・・イタリア語ではブドウ品種はほとんど男性名詞のところ、珍しく女性系で『ラ・バルベーラ』と地元で愛されている品種。ニッツァが有名です。
→ニッツァ タイプは赤ワイン バルベーラダスティのサブゾーンから独立した銘柄でアスティ県の18コムーネで生産される。
ドルチェット種・・・ドリアーニ、ドルチェットディアーノダルバが有名です。
→ドリアーニ タイプは赤ワイン ドルチェット種の起源の地と言われ、比較的色合いも濃く構成のしっかりした長期熟成タイプのワインとなる。
→ドルチェットディアーノダルバ タイプは赤ワイン バローロとバルバレスコの間に位置しエリアは狭いが質の高いワインを生産する。
2 ピエモンテ州の主な郷土料理と食材
バーニャカウダ
ピエモンテ州を代表する冬の鍋料理。ピエモンテ語で「バーニャ」は「ソース」、「カウダ」は「熱い」を意味し、たっぷりのにんにくとアンチョビ、オリーブオイルを使ったソースのこと。主に野菜を浸して食べるフォンデュに類似した料理です。ソースが残り少なくなると、最後に卵を割りいれてスクランブルエッグにして食べる場合があります。
相性の良いワイン・・・バーニャカウダには、ロエロ・アルネイス モスコーネも合いますが、糖分と酸のバランスがとれたニュートラルな味わいの白ワイン「ガヴィ」と良く合うと言われます。
ゴルゴンゾーラチーズ
ゴルゴンゾーラは村の名前で、フランスのロックフォール、イギリスのスティルトンとともに世界三大ブルーチーズに挙げられているDOPチーズです。薄黄色のやわらかなチーズに青カビが筋状に入っていて、なめらかでほどよい青カビの刺激があり、ドルチェ(甘口)とピカンテ(辛口)の2種類あります。ピザやパスタにも使用されます。
相性の良いワイン・・・ゴルゴンゾーラの辛口のピカンテは、塩味もしっかりしているので、シルキーな口当たりのタンニンが豊富なバローロやバルバレスコと合わせて楽しむのもおすすめです。甘口のドルチェは、ピカンテに比べ辛さが控えめで、塩味も幾分控えめなので、白ワインとの相性もいいです。食前に甘口のアスティスプマンテと一緒に頂くのもおすすめです。
アルバ名産の白トリュフ、タルトゥーフォビアンコダルバも有名な食材です。
タイアリン・・・卵入り手打ち細麺で卵黄の量が多く、お肉のラグーソースをかけたり、バターとチーズを絡めて頂きます。
リグーリア州
イタリアではヴァッレアオスタ州、モリーゼ州に次いで小さな州、州都はイタリア最大の港町ジェノヴァ。リグーリアは古代からフランスとイタリアを結ぶ重要な交通路として栄え、有名なアウレリア街道は、ローマからトスカーナ海岸部を通りその先はリグーリア、フランス、スペインへと延びていました。中世後期にはジェノヴァ共和国がヴェネツィア共和国と地中海貿易の覇権を争うほどに繁栄しました。多くの冒険家を輩出した中で最も有名なのはクリストフォロコロンボ (コロンブス) です。
海岸沿いは温暖な地中海性気候に恵まれていて、フランス国境を越えて東に続いているコートダジュールと同じく避暑地としても人気があります。美しい海と背後にそびえる山という自然に恵まれたリグーリアではイタリアでも屈指の観光地で、音楽祭で有名なサンレモ、漁村でありながらの高級リゾート地ポルトフィーノ、世界遺産に登録されているチンクエテッレ、ポルトヴェーネレなどの名勝地があります。
チンクエテッレ 『5つの土地』の意味で、リグーリア海岸にある5つの村を指し、東からリオマッジョーレ、マナローラ、コルネリア、ヴェルナッツァ、モンテロッソアルマーレとなります。村々は、11世紀に要塞都市として建設され、以後1000年にわたって、隣の村との往来は船で行われていました。陸路で孤立したこれらの村々には、今も往時の面影が色濃く残っています。
この痩せた土地に根付いた作物がブドウで、人々はこのブドウからワインを醸造して生活を成り立たせていました。この辺りはイタリアのリビエラと呼ばれる海岸になりますが、山側はチンクエテッレ国立公園となっており、ハイキングコースもあります。レヴァントやラスペッツィアなどの街発着の列車を利用しての移動はトンネルは多いですが非常に風情があります。
1 リグーリア州のワイン
リグーリア州には平野はほぼ無く州の65%が山岳地帯、残りが丘陵地帯で耕作可能な土地は非常に少ないため、海のすぐそばに絶壁がそそり立つところも多く、急な斜面の狭い段々畑でブドウが栽培されている風景が見られるのも印象的です。
中世のジェノヴァ共和国時代、リグーリア州は海上貿易で栄え物品や人の流れに刺激され、ブドウやオリーブの栽培技術が向上し、急斜面のブドウ畑も海からの暴風雨を避けるための石垣の壁によって守られ果樹園が整備されていきました。20世紀イタリアが貧しかった時代にリグーリア州からも多くのイタリア人が移民として渡米しましたが、この地でブドウ栽培を続けた人々は苦しく貧しい時代をワインの生産を続けることで乗り切りました。1973年にチンクエテッレにも農業協同組合が設立されワインの生産も飛躍的に向上しました。
リグーリア州にはDOCGはまだ存在しませんが主なDOCワインをご紹介させて頂きます。
東部リグーリア州
チンクエテッレ
手作りの昔ながらの農夫的なワイン造りをする生産者が多いところ。白ワインではありますが、果皮とともに発酵するのが伝統で、ややオレンジがかった濃い黄色をしているのが特徴です。チンクエテッレの陰干し甘口ワインがシャケトラで、やや酸化熟成の色合いもあります。
チンクエテッレの品種は、
コッリディルーニ トスカーナ州にまたがる呼称で、ヴェルメンティーノ種の白ワインと、サンジョヴェーゼ種の赤ワインが造られています。
古代ローマ時代に博物学者の大プリニウスが『ルーニ のワインはエトルリア産のワインの中では最高品質』と書いていて、当時このあたりのワインは美味しいと評判だったことがわかりますね ! ※ルーニ・・・チンクエテッレの海岸から2kmほどの小さな村で、古代ローマ時代は港町として栄えました。
西部リグーリア州
ロッセーゼディドルチェアックア リグーリア州で最も重要な赤ワイン。
オルメアスコディポルナッシオ 地元ではオルメアスコと呼ばれるドルチェット種で造られる赤ワイン。
リヴィエラリグレディポンネ ピガート、ヴェルメンティーノ種で造られる白ワインと、ロッセーゼ種などの赤ワイン。
2 リグーリア州の主な郷土料理と食材
バジリコジェノヴェーゼ
DOPのジェノヴァ産バジリコ
スパゲッティジェノヴェーゼ
ペストジェノヴェーゼとは、バジルと松の実、ニンニク、パルミジャーノレッジャーノ、オリーブオイルなどを材料として作るジェノヴァ発祥のソースで、スパゲッティにペストジェノヴェーゼを絡めたスパゲッティです。
相性の良いワイン・・・同地域のチンクエテッレのワイン。土壌と海風の両方から受けたミネラルがたっぷりで魚介にジェノヴェーゼソースをかけたカルパッチョ風の料理とも抜群に合います。
リヴィエラリグレのオリーブオイル・・・トスカーナ州産のものとは異なり非常に繊細でエレガントの味わいのDOPのオリーブオイル。
おわりに
今回の第3回 “イタリアのブルゴーニュ” ピエモンテ州とリグーリア州をご覧頂きありがとうございました。次回の好奇心で旅する海外『世界のワインで旅行気分 在宅でも出来るグルメ旅』第4回は10月にお届け予定です。ご自宅でゆったりワインを楽しまれながら、クラブツーリズムが贈る旅ブログを楽しみにお待ちください。
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