旅の文化研究所研究員、一般社団法人日本旅行作家協会会員の黒田尚嗣(くろだなおつぐ)が「歴旅の演出家、旅する世界遺産の語り部」として旅について熱く語ります。
第2回は「アンコール遺跡」をめぐるストーリーをお届けします。

ダイヤモンド富士ならぬピラミッド富士を遥拝

私の新年は、前回このブログでご紹介させていただいた「ピラミッドを極めるエジプト古代遺跡5日間」のツアーに同行し、エジプトにおいてダイヤモンド富士ならぬピラミッド富士を遥拝して迎えました。
ピラミッドと言えば昭和の初期に「日本にも数多くのピラミッドが存在する」と主張した酒井勝軍(かつとき)氏の日本ピラミッド説が思い起こされますが、酒井氏は、広島県の山中にある葦嶽山を「日本のピラミッド」と呼び、古代文明を研究しつつ「ピラミッドには頂上付近に球形の太陽石とそれを取り巻く環状列石がある」といった独自の日本ピラミッド説を展開されました。

画像: ダイヤモンド富士ならぬピラミッド富士

ダイヤモンド富士ならぬピラミッド富士

「頂上に太陽と周囲に列石」=アンコール遺跡の日の出?

しかし、私はこの「頂上に太陽と周囲に列石」という言葉からは、カンボジアが誇る世界遺産アンコール遺跡の日の出を連想します。アンコール遺跡は、一般的にアンコール・ワット(寺院都市)の名前で知られていますが、これはカンボジア王国シェムリアップ州にあるアンコール・トムなど大小複数の遺跡の一部です。

アンコール・トムはクメール王朝最盛期の12世紀末から13世紀初めにかけてジャヤヴァルマン7世が築いた城郭都市で、その中心はヒンドゥー・仏教混交のバイヨン寺院です。

寺院の尖塔には王が最も崇拝した観世音菩薩の四面像が刻まれており、四方八方からこの「クメールの微笑」に囲まれると壮観で、気持ちも安らぎ、信心深い気持ちにさせられます。

既視感(デジャヴ)という言葉がありますが、初めてバイヨン寺院を訪ねた際、私はこの何となく懐かしいと感じるデジャヴに遭遇しました。

すなわち静かで不思議な感動を伝える信仰や土着の風習などが私の五感に新鮮な刺激を与えてくれたのだと思います。

画像: バイヨン寺院 クメールの微笑

バイヨン寺院 クメールの微笑

アンコール遺跡は東洋のピラミッド

そして有名なアンコール・ワットはスールヤヴァルマン2世の治下、12世紀初めに建立されたヒンドゥー教のヴィシュヌ神寺院で、王はこの寺院に王権の神格とクメール(カンボジア)文化独自の宇宙観を表現しました。

ヒンドゥー教はブラフマー(梵天=最高神)、シヴァ(破壊と創造の神)、ヴィシュヌ(世界救済神)の三神を中心とする多神教で、カースト(身分制)のような社会制度や風俗習慣、文化など一切を含み、霊魂の不滅と輪廻転生を思想とする社会的宗教です。

そのためアンコール・ワットの建物は細部まで宗教的な意味が込められ、神が降臨するとして造られた中央塔の周りに4基の塔を配した祠堂は世界の中心の須弥山(しゅみせん)、周壁は雄大なヒマラヤの霊峰、環濠は深く無限の大洋を象徴すると言われています。

さらに回廊には豪華絢爛で精緻なレリーフが施され、特に第2回廊に描かれたヒンドゥー神話の天地創造に関する「乳海攪拌」図は必見です。

また、この寺院は西を向いて建っているので、東から登る太陽の朝日を浴び、シルエットとなって浮かび上がる姿はまさしく東洋のピラミッドを連想させてくれます。

画像: アンコール遺跡

アンコール遺跡

アジア文明の回廊で最高の感動を

クラブツーリズムでは2月末に古街道研究家宮田太郎先生と行く「世界遺産アンコール遺跡ロリュオス遺跡群5日間」というGENEの旅を企画しました。

本ツアーには私も同行し、現地ではアプサラ・アンコール地域遺跡保護整備機構で発掘調査指導されている杉山洋氏にも解説していただく予定です。

GENEの旅とは「日本人はどこから来たのか?」をテーマに私たちが懐かしいと想うデジャヴの探求、日本人が忘れかけていた「遠い記憶」をよみがえらせる旅です。本ツアーではアンコール発祥の地プノムクーレンからクメール王朝最古の遺跡であるロリュオス遺跡も訪ね、さらに通常では入場できないバンテアイ・スレイ中央祠堂で有名な「東洋のモナリザ」と呼ばれるデヴァター像を目前で見学します。

朝日だけでなく夕日に染められていくアンコール遺跡を眺めていると、懐かしい古代の記憶を訪ねる大地の物語が聞こえてくるような気がします。

この機会にアンコールというアジア文明の回廊で「最高の感動」を味わってみてはいかがでしょうか。

                                クラブツーリズム株式会社
                               テーマ旅行部顧問 黒田尚嗣

画像: アンコールワットの朝日

アンコールワットの朝日

クラブツーリズム スタッフより

西洋を代表する建造物にギリシャのパルテノン神殿がありますが、アンコール・ワットは「東洋のパルテノン」と呼ばれ、アジアを代表する遺跡です。

ヒンドゥー教の宇宙を表現した浮き彫りや彫刻、荘厳な雰囲気をかもしだすこの遺跡にはどんな魅力が隠されているのでしょうか?

本ツアーには古街道研究家の宮田太郎氏と世界遺産の語り部であるクラブツーリズム顧問の黒田尚嗣が同行し、現地では発掘調査を指導されている杉山洋氏に通常入れないアンコール・トムの西トップ遺跡等を解説していただき、アンコール遺跡の魅力を探ります。

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