はじめに
オーストリアは、私のヨーロッパの好きな国ベスト3に入っているお気に入りの国。その時の気分によって好きな場所は多少変わるのですが、オーストリア、とりわけウィーンは、私にとって不動の地位を築いています♪ウィーンを訪れた回数は十数回・・・早くまた行きたいです!
華麗なるハプスブルク家が築いた美食遺産の秘密を、たっぷりお届けします。
ウィーンになくてはならないもの
ウィーンというと音楽の都だよね?コンサートやオペラ?
はい。もちろんウィーンっ子にとっても世界中の音楽を愛する人にとっても、ウィーンは紛れもない音楽の都で、毎年1月1日に行われるニューイヤーコンサートは世界90か国以上に放送されるほど。しかしながら、もっと日常的に「なくてはならない」と感じているもの、それがカフェです。
モーツァルトやベートーヴェンなどの音楽家、クリムトなどの芸術家、ペーター・アンデルベルクなどの作家、そしてハプスブルク家一族など、各時代を彩る様々な著名人たちには、ウィーン市内に、必ず行きつけのカフェがありました。
ヨーロッパのカフェに入り、コーヒーを頼むと、通常は頼んだものしか運ばれてきませんが、ウィーンのカフェでは、必ずお水と一緒に出してくれることもとても嬉しいポイントです。このお水は勿論無料で、オーストリアアルプスを起源とする豊富な水源をもつオーストリアならではのおもてなしですね。コーヒーの種類は多く、目移りしてしまいます。
あ!ウィーンに行ったら、ウィンナーコーヒーを飲まなくちゃ!
そうですよね。ただし、ウィンナーコーヒーは、オーストリアでは通じません。私たち日本人が思い浮かべるウィンナーコーヒーは、アインシュペナーと呼ばれています。アインシュペナーとは「一頭立ての馬車」の意味。アインとはドイツ語でイチ(1)ですよね。
諸説ありますが、馬車の御者が一方の手で手綱を握り、もう一方の手で飲んでいたのがはじまりとか。注文するとホイップクリームたっぷり、取っ手のついたカップで運ばれてきます。
私のお勧めは「メランジェ」というミルクコーヒー。コーヒーとミルクの量が1対1で、上には泡立てられたミルクがのせられており、ウィーンっ子の定番です。
そしてカフェと言えばスイーツ。ザッハトルテはあまりに有名ですね。ウィーンの空港でもお土産で購入出来ますし、日本でも販売されているザッハトルテもありますが、なんといっても本家ザッハホテルの高級感溢れるカフェでいただくザッハトルテは絶品です!
他には、アプフェルシュトゥルーデル(りんごケーキ)、アンナトルテ(チョコレートとオレンジピールやリキュールが配合されているケーキ)は、外せないスイーツです。
「会議は踊る。されど進まず」という言葉を聞いたことがあると思いますが、有名なウィーン会議がなかなか進まない様を表したもの。このウィーン会議で、各国から集まった招待客をもてなすため、ハプスブルク家お抱えのパティシエが、お菓子のレシピを数多く考案したことがきっかけで、ウィーンのお菓子は種類豊富で美味しいスイーツが今も受け継がれているそうです。
オーストリアにコーヒーが伝わったのは、1683年のトルコ軍のウィーン包囲がきっかけ。トルコ風コーヒーを飲ませる1軒のカフェが始まりとなり、338年の時を経て、今やカフェハウスは、ウィーンっ子にとって生活に不可欠なものとして愛され続けています。
ハプスブルク家の繁栄を支えた秘密の食事
ハプスブルク家って?有名な人は誰?
ご存じの方も多いかと思いますが、ハプスブルク家は、5つの宗教、12の民族を約650年に渡って統治した偉大なファミリーです。とりわけ、有名な方と言えば、フランス王家に嫁いだマリー・アントワネットでしょうか。マリー・アントワネットの母マリア・テレジアや、皇帝フランツ・ヨーゼフに見初められた絶世の美女エリザベートは、現在のウィーンの食文化にも大きく影響を与えています。
①女帝マリア・テレジアが愛した「食べるスープ」オリオスープ
マリア・テレジアの父親がスペインで育ったことが影響し、オーストリアにもたらされましたが、もとはスペイン料理だったオリオスープ。
バターで焼いた子牛肉・ウサギや鴨などの野生動物肉・カブや根菜・薬草などの野菜を煮込み、1日おいて漉すという手間のかかるスープです。この栄養たっぷりのスープを、マリア・テレジアは、1日5~7回飲んでいたそうです。16度のお産と国母と慕われる政治力をあわせもつマリア・テレジアを支えた秘密のスープと言えますね。
②皇帝がこよなく愛したターフェルシュピッツ
現在もオーストリア料理の名物として食されているターフェルシュピッツ。ターフェルシュピッツとは牛のお尻と太ももの一番上の間のお肉のことを言います。日本では「らんいち」や「いちぼ」と呼ばれる部位。
このお肉の塊を、長時間、香味野菜と共にブイヨンで煮込みます。お食事は、まずは煮込んだスープから。お店によっては、ダンプリングを入れてくれます。その後、煮込まれたお肉を、ポテトなどの付け合わせとソースと共にいただきます。お食事の際は、センメルと呼ばれる丸い形に星模様のパンと一緒に。センメルはかつては皇帝の食卓にふさわしいパンと言われ、カイザーセンメルと呼ばれていました。皇妃エリザベートもお気に入りだったとか。今では、横半分に切ってハムやピクルスなど、お好きな食材を挟み、オープンサンド形式で、ウィーンっ子たちに気軽に食べられています。
首都でありながらワインの生産地ウィーン
ワインと言えば、イタリアやフランスが有名では。ウィーンのワインの特徴って?
世界には、都市部に観光目的等の為、ワイン畑を有する街はありますが、ウィーンは700ヘクタール(7,000,000平方メートル)ものぶどう畑が広がるワインの一大産地。ワインを楽しむことも、カフェ文化と同様に、ウィーンではとても大切にされている文化です。
そんなウィーンで是非訪れたいのがホイリゲ。ホイリゲとは、今年できた新酒を飲ませてくれる居酒屋です。新酒といえば、日本では、11月の第3木曜日のボジョレーヌーヴォーの解禁日について、毎年話題になりますね。そしてボジョレーヌーヴォーは基本的には赤ワインかロゼワインのみですね。
ウィーンでは、新酒のワインの解禁日は毎年11月11日と決まっており、ホイリゲで出されるワインは主に白ワインとなります。ホイリゲでは、お店の軒先に松などの小枝の束をぶら下げるのが習わし。これもハプスブルク統治時代からの風習で、当時、小枝の束は「この店は自家製ワインのみを提供していることを保証している」ことを表していたのだそう。現在は「ただいま営業中」の標識代わりとなっています。
2019年には、ウィーンのホイリゲはユネスコ無形文化遺産に登録をされています。ウィーンを訪れた際には、是非ホイリゲで楽しいひと時をお過ごしください。シュランメルと呼ばれるウィーンの大衆音楽も一緒に楽しめることが多いですよ♪有名な世界遺産シェーンブルン宮殿の一角オランジェリー庭園にも小さなぶどう畑があります。2021年秋にはシェーンブルン宮殿内にホイリゲがオープンするというニュースも!楽しみですね。
【全部徒歩圏内】一度は訪れてほしいウィーンの名店5選
さて、今回の<海外の「味」物語>は、いかがでしたでしょうか。最後に、ウィーン旧市街で訪れてほしい、お勧めの名店を5つご紹介して、おしまいとさせていただきます
①【カフェ】Demel
デメル
ハプスブルク御用達のカフェ。
②【カフェ】Gerstner
ゲルストナー
皇妃エリザベートが好んだ「スミレの砂糖漬け」が購入できます。2018年にケルントナー通りからオペラ座横にリニューアルオープンしています。
③【お菓子屋】Altmann&Kuhne
アルトマンアンドキューネ
宝石箱のような箱に入ったお菓子がとても可愛い!お土産におすすめ。
④【レストラン】Plachutta
プラフッタ
ターフェルシュピッツの名店。
⑤【ホイリゲレストラン】Augustinerkeller
アウグスティーナケラー
旧市街にあってホイリゲの雰囲気を楽しめる。
ウィーンはツアーで訪れる場合でも、必ずと言ってよいほど自由時間を設定しています。冒頭で私がウィーン大好きと申し上げた理由のひとつに、「見どころが徒歩圏内に集まっていること」が挙げられます。今回ご紹介した5店も、全て徒歩で巡ることができます。ウィーンを訪れた際には、是非ご自分の足で、美しき旧市街を歩いてみてくださいね。
おわりに
オーストリアを訪れるツアーの販売が再開したら、カフェで優雅な時間を過ごしていただくツアーや、オリオスープやターフェルシュピッツをお召し上がりいただくツアー、ホイリゲで新酒のワインを楽しんで頂くツアーなどをお届けいたしますので、楽しみにお待ちいただければ幸いです。
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