2027年は、ベートーヴェンの没後200年にあたるメモリアルイヤーです。
そんな特別な年だからこそ、ぜひ訪れたいのがドイツの「音楽都市」ドレスデン。
2027年、ドレスデン・シュターツカペレでは、音楽監督ダニエレ・ガッティの指揮による演奏会が4夜連続で開催され、ベートーヴェンの交響曲全9曲を一度の旅行で鑑賞することができます。
ベートーヴェンの9つの交響曲を、世界有数の歴史を誇るオーケストラ、そして長いオペラの伝統を持つドレスデンで聴く――。
これは単に「9曲を聴く旅行」ではありません。
ドレスデンが400年以上にわたって育んできた「音楽の歴史」と、その伝統を現在へ受け継ぐドレスデン・シュターツカペレの響きを体感する旅でもあります。
世界最古のオーケストラの一つ、ドレスデン・シュターツカペレ
ドレスデン・シュターツカペレの歴史は、1548年に創設された宮廷楽団にまでさかのぼります。
「世界最古のオーケストラ」としては、1448年創設のデンマーク王立管弦楽団の前身である宮廷楽団が知られています。ただし、こちらは歴史の中で何度か音楽活動が中断されています。
一方、ドレスデン・シュターツカペレの前身である宮廷楽団は、1548年の創設以来、音楽活動を途切れさせることなく現在まで続いてきました。
そのため、ドレスデン・シュターツカペレは「世界最古のオーケストラ」とも称されています。
約480年にわたる歴史。それは単なる数字ではありません。
幾世代もの音楽家たちによって受け継がれ、磨き上げられてきた独自の響きこそが、ドレスデン・シュターツカペレの大きな魅力なのです。
ドレスデンに根づくオペラの伝統
ドレスデンの音楽史を語るうえで、オーケストラと並んで欠かせないのがオペラです。
1627年、ドイツ最初のオペラ作品とされる「ダフネ」がドレスデンで初演されました。
そして1667年1月27日には、現在のゼンパー歌劇場へとつながる最初の歌劇場が誕生します。
その後、ドレスデンが大きな繁栄を遂げたフリードリヒ・アウグスト1世と、その息子フリードリヒ・アウグスト2世の治世(1694~1763年)には、宮廷楽団の音楽的水準も大きく向上しました。
1719年にはツヴィンガー宮殿内に本格的な歌劇場が完成。
ここではイタリア・オペラが盛んに上演され、ドレスデンはヨーロッパ有数の音楽都市として発展していきます。
イタリア・オペラからドイツ・オペラへ
ドレスデンのオペラ史に大きな転換をもたらした人物の一人が、1817年から1826年まで宮廷楽長を務めたカール・マリア・フォン・ウェーバーです。
ウェーバーは「魔弾の射手」をはじめとするドイツ語によるオペラを作曲・上演し、ドレスデンに根づいていたイタリア・オペラの伝統を、ドイツ・オペラへと大きく発展させました。
そして、このウェーバーの影響を受けたのがリヒャルト・ワーグナーです。
ワーグナーは1841年に完成した歌劇場で自作の「リエンツィ」を指揮して成功を収め、1843年には宮廷楽長としてドレスデンに迎えられました。
さらに「さまよえるオランダ人」(1843年)、「タンホイザー」(1845年)もドレスデンで自ら指揮して初演。
ドレスデンは、ドイツ・オペラの発展において極めて重要な舞台となったのです。

ワーグナーの住居跡銘板

ワーグナーの住居跡銘板
ドイツ・オペラの殿堂、ゼンパー歌劇場
ドレスデンの音楽を象徴する建築として忘れてはならないのが、ゼンパー歌劇場です。
1869年に一度焼失したものの、1878年に再建。
その後、100を超える作品の世界初演・ドイツ初演の舞台となりました。
なかでも特筆すべきなのが、作曲家リヒャルト・シュトラウスとの深い結びつきです。
1901年からは、「サロメ」「エレクトラ」「ばらの騎士」など、リヒャルト・シュトラウスの代表的なオペラ作品9作が初演されています。
まさにゼンパー歌劇場は、ドイツ・オペラの歴史を語るうえで欠かすことのできない「殿堂」といえるでしょう。

ドレスデン・シュターツカペレの拠点ゼンパー歌劇場

伝統的な雰囲気が漂う歌劇場内部
受け継がれる「音の響き」の伝統
宮廷楽団は1918年、「シュターツカペレ」へと改称されました。
その後もドイツ・オペラだけでなく、イタリア・オペラや映画音楽など、幅広いレパートリーを演奏し、世界を代表するオーケストラとして名声を高めていきます。
一方、ゼンパー歌劇場は第二次世界大戦中の1945年2月13日の空爆によって完全に破壊されました。その再建には実に40年の歳月を要し、現在の歌劇場が再びその姿を現したのは1985年のことでした。
現在、ドレスデン・シュターツカペレはゼンパー歌劇場でのオペラ公演を支えるだけでなく、コンサート・オーケストラとしても活躍しています。
ここで興味深いのが、ウィーン・フィルとの比較です。
ウィーン国立歌劇場を本拠地としてオペラ公演に携わりながら、コンサート・オーケストラとしても独自の伝統を築いてきたウィーン・フィル。
それと同じように、ドレスデン・シュターツカペレも長年にわたってオペラの現場で演奏を続けてきました。
オペラという特殊な環境の中で鍛えられてきたことが、両楽団の美しい「音の響き」につながっているのかもしれません。
歴代の巨匠たちと、現在の音楽監督ガッティ
約480年という長い歴史を持つドレスデン・シュターツカペレには、これまで数多くの偉大な音楽家が関わってきました。
ウェーバー、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウスをはじめ、カール・ベーム、ヘルベルト・ブロムシュテット、ジュゼッペ・シノーポリ、ベルナルト・ハイティンク、クリスティアン・ティーレマンなど、音楽史に名を残す指揮者たちです。
そして2024年、ダニエレ・ガッティが音楽監督に就任しました。
ガッティはこれまで、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団やローマ歌劇場などの音楽監督を歴任し、世界の主要オーケストラ、歌劇場で指揮をしてきた指揮者です。
長い歴史の中で育まれてきたドレスデン・シュターツカペレの伝統を受け継ぎながら、現在のドレスデンに新たな音楽的息吹をもたらしています。
そんなガッティが指揮するドレスデン・シュターツカペレで、ベートーヴェンの交響曲全9曲を聴く。
2027年だからこそ実現する、特別な音楽体験です。
バッハ、シューマンも愛した音楽都市
ドレスデンの魅力は、ベートーヴェンやワーグナーだけではありません。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハも、この街と深い縁を持っています。
バッハがオルガン奏者として初めてドレスデンを訪れたのは1717年。
さらに1736年には、ドレスデンのシンボルともいえる聖母教会に完成したジルバーマンの傑作オルガンを試奏するため招かれました。
その後もドレスデンを幾度となく訪れ、名演奏を披露した記録が残されています。
また、ワーグナーが宮廷楽長を務めていた時代、ドレスデンにはロベルト・シューマンも滞在していました。
シューマンがドレスデンに暮らしたのは1844年から1850年。
ワーグナーとは同じ時代に同じ街で活動していましたが、二人の関係は決して親密なものではありませんでした。
それでも、シューマンにとってドレスデンは重要な創作の地でした。
ドレスデンで作曲された代表作の一つであるピアノ協奏曲は、この街で初演されています。
一方、交響曲第2番や唯一のオペラ作品「ゲノフェーファ」は、ライプツィヒで初演されました。
こうして見ていくと、ドレスデンという街そのものが、ヨーロッパ音楽史の大きな舞台であったことが分かります。

ゼンパー歌劇場を臨む位置に立つウェーバー像

ドレスデンのシンボル聖母教会
バッハが試奏したオルガンのある聖母教会内部
シューマンのピアノ協奏曲が初演された場所銘板
2027年、ドレスデンでベートーヴェン全9曲を
ベートーヴェンの交響曲は、第1番から第9番まで、それぞれがまったく異なる魅力を持っています。
「英雄」「運命」「田園」「合唱」――。
誰もが一度は耳にしたことのある名曲から、作品そのものの魅力をじっくり味わいたい交響曲まで、全9曲をまとめて聴く機会は決して多くありません。
ましてや、それを演奏するのが約480年の歴史を持つドレスデン・シュターツカペレ。
そして指揮をするのが、現在の音楽監督ダニエレ・ガッティ。
さらに舞台は、ドイツ・オペラの歴史を刻んできたゼンパー歌劇場。
2027年のベートーヴェン没後200年という節目だからこそ、この組み合わせには特別な意味があります。
4夜の演奏会で、ベートーヴェンの交響曲全9曲を聴く。
音楽史をたどりながらドレスデンの街を歩き、ゼンパー歌劇場で歴史あるオーケストラの響きを聴く。それは、ベートーヴェンを聴く旅であると同時に、ドイツの音楽史そのものを体験する旅になるでしょう。
ベートーヴェン没後200年のメモリアルイヤーに、ぜひ一度、音楽都市ドレスデンを訪れてみませんか。
4月ツアーの詳細はこちら
同行講師のご紹介

講師:山本 直幸氏
ベルリン留学中6年間、オペラ・コンサート通いの日を送る。
特にヨーロッパの歴史や音楽・美術への造詣が深く、長年音楽旅行企画に携わり、ツアーにも同行し現地で案内役も務める。海外添乗・駐在日数は4,000日以上。音楽雑誌等に音楽旅行記事を多数寄稿。
<音楽鑑賞の旅>特集もご覧ください♪
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