みなさん、こんにちは。
クラブツーリズムナビゲーターの飯川です。
突然ですが、「お城」と聞くと、どんな姿を思い浮かべますか？
多くの方が想像するのは、空高くそびえ立つ立派な天守ではないでしょうか。
もちろん天守はお城の象徴として素晴らしいですが、お城の魅力はそれだけではありません。
建物が残っていなくても、史跡に残る遺構や立地・歴史的背景を踏まえて訪れるとぐっと楽しめます。
今回はそんな「建物が残っていないお城」の楽しみ方を、山梨県韮崎市の「新府城」を例にご紹介します。
新府城とは
新府城は天正9（1581）に武田信玄の子・勝頼によって甲府の躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)に代わる武田家の本拠地として築かれました。
武田家当主となった武田勝頼は東の北条氏、南の徳川氏、西の織田氏と強大な敵に囲まれているなか、信玄の時代を越える領国拡大していました。
新府城はそうした領国拡大への対策として築城されたと考えられています。
築城に際しては甲斐本国だけでなく、信濃など武田領の各地から大量の人足を徴発したといわれており、大規模な工事であったことが想像されます。
しかし、翌天正10年（1582）、織田・徳川軍の侵攻を前に勝頼は自らの手で新府城を焼き払い、家臣の小山田信茂が待つ岩殿城（山梨県大月市）へ向かうも、途中で信茂に裏切られ自害。甲斐武田家は滅亡します。
新府城は勝頼が入城してからわずか数か月後で灰燼に帰してしまいました。
新府城跡 / 飯川ナビゲーター撮影
立地を考える
お城を知るうえで、その立地というのは欠かせません。
新府城は七里岩(しちりいわ)台地上の130ｍの断崖に築かれており、さらに東側には塩川、西側には釜無川(かまなしがわ)が流れ、まさに天然の要害といえる場所にあります。
立地の意味は防御だけではありません。新府城のあたりは、古くから佐久・諏訪・駿河方面を結ぶ水陸交通の要衝。人や物資が行き交う重要な場所でした。
また、甲斐国内のなかでも勝頼の母の実家である諏訪、若き日に城主を務めた高遠城にも近い距離にあります。
さらには韮崎には武田家の祖・信義ゆかりの武田八幡宮もあり、武田家ゆかりの土地です。
こうした背景を踏まえると、なぜ武田勝頼がこの地を選んだのかが自然と理解できるでしょう。
桝形虎口
ここからは新府城の遺構をご紹介します。
まずご紹介するのは桝形虎口(ますがたこぐち)です。
桝形虎口は多くの城に見られる守りの工夫のひとつです。
桝形とは、城の入口に土塁や石垣、櫓などで作る方形の空間のことで、中に入った敵を多方面から攻撃するための工夫です。
形が桝に似ていることから「桝形」といいます。
虎口とは、お城の出入り口のことです。
つまり、「袋のネズミとなった敵を迎え撃つための桝のような形をしている出入り口」というわけです。
新府城では桝形虎口が土塁によってしっかりと形成されており、現在もその形を確認することができます。
石垣や櫓で構築されている桝形虎口と比較すると面白いかもしれません。
新府城 大手桝形虎口 / 飯川ナビゲーター撮影
丸馬出と三日月堀
新府城には武田氏の築城術（甲州流築城術）の遺構が残されています。
中でも代表的なものが丸馬出(まるうまだし)と三日月堀です。
馬出とは虎口の前方に設けられた空間のことで、「敵の迎撃」や「虎口を守る」役割を持っており、武田家は半円形の丸馬出を多用していました。
丸馬出に付随する三日月堀も良好に残ります。
自分だったらどう守るか、どう攻めるかを想像しながら歩くとより理解ができて楽しいです。
丸馬出と三日月堀 / 飯川ナビゲーター撮影
出構
中央の盛り土されている場所は出構(でがまえ)といい、新府城独特の遺構です。
城の北側に東出構と西出構の2つが築かれており、発掘調査によりこの間には深い堀跡が見つかっています。
敵を迎え撃つ陣地とも堀の水を調整するダムのような施設ともいわれていますが、はっきりとはわかりません。
自分の目で見て考察するのもまた楽しいです。
出構 / 飯川ナビゲーター撮影
歴史のロマンを感じる
ここまで立地や遺構などをご紹介しましたが、実際にその地に立って、景色を見て武将たちに思いをはせることも城めぐりの醍醐味です。
皆さんに楽しんで城めぐりしてもらえるよう我々ナビゲーターも精一杯努めます。
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